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第1章・異世界転移と異世界転生

防御結界、箱庭(ミニチュア・ガーデン)②

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「あ……」

 森の中にある、シルヴィーク村へと続く道に、私はユーリとジャンくんの姿を見つけた。
 二人は、ギリギリ魔結晶で繋ぐ結界範囲内の内側に居て、シルヴィーク村へと続く道の先を見つめていた。
 道の先に、何があるのだろう?
 私の疑問はアルバトスさんに伝わったらしく、映像はユーリが見つめていた方向へと移動する。
 そこには、大勢の兵士たちを引き連れた、ジュニアスとノートンが迫ってきていた。

「アルバトスさんっ! ジュニアスたちがっ!」

「えぇ、思ったよりも、早かったですね」

 アルバトスさんにとっても、これは予想外の事だったらしい。

「急がなきゃ、このままだとユーリが、またジュニアスと戦う事になっちゃうっ!」

 私がそう言うと、そうですね、とアルバトスさんは頷いた。

「オリエちゃん、急がなきゃ!」

「うん、そうだね!」

「ねぇ、オリエちゃん、箱庭の呪文、こう唱えて! きっと効果があるから!」

「え? う、うんっ」

 私の手の中でひっくり返ってお腹……スマホを見せてくれたサーチートが、ドヤ顔で笑った。
 お腹のスマホには、私が唱えるべき呪文が表示されている。

「オリエちゃん、頑張って!」

 うん、と頷いて――私はサーチートのお腹に表示されている呪文を唱えた。

「真聖女、糸井織絵が祈る。聖なる防御結界で、このシルヴィーク村に害するものを拒み、穏やかな時間を与えたまえ……ミニチュア・ガーデン!」

 呪文を唱え、私はアルバトスさんが見せてくれている映像の中の、白い点を繋いでいく。
 この白い点に見えるものは、私が大量に作った魔結晶だ。
 そこから感じる自分の魔力を頼りに、私は頭の中で白い点を繋いでいく。
 そして白い点を繋ぎ終わった時、魔結晶は光り輝き、シルヴィーク村を囲うように白い光の壁を出現させた。
 そしてその光の壁が、ユーリを狙い、ジュニアスが投げた槍を弾いたのが見える。

「あの、アルバトスさん……成功、しましたよね?」

「えぇ」

「もう、大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。オリエさん、ありがとうございました」

 アルバトスさんはそう言うと、私に頭を下げた。
 周りで見守っていてくれた村の人たちも、歓声を上げて喜んでくれている。
 きっとみんな、ジュニアスの報復を恐れていたんだろう。

「私の方こそ、いろいろとありがとうございます! あの、ちょっと行ってきます!」

 私はそう言うと、サーチートを抱えたまま、今ジュニアスを前にしているはずのユーリの元へと走り出した。

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