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第1章・異世界転移と異世界転生

素敵な呪文①

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「オリエさん、まず、おさらいがてら、今の状況から説明を行います。先程、私とユーリは、オブルリヒト王宮からあなたを連れ戻しました。その際、大変王宮で暴れてしまいまして……あなたを連れ戻した事も含め、ジュニアス王子やノートンは、とても腹立たしく思っているでしょう。だから、おそらくジュニアス王子はこの村を滅ぼしにくるだろう……と、私は考えています」

「それは……そうでしょうね……」

 私が頷くと、アルバトスさんも頷いた。

「ですが、オルブリヒト王国の王宮から、このシルヴィーク村までは、距離があります。また、ユーリが派手に暴れてきましたから、ジュニアス王子たちは隊を編成するのに、時間がかかるはずです。だから、私たちは作戦を立てました。ジュニアス王子たちが来る前に、この村に、どんな攻撃を受けても消える事のない、最強の防御結界を張ってしまおうという作戦です。オリエさん、どうか力を貸してください」

 アルバトスさんが言った事があまりにも大がかりな事で、私は驚いた。
 もちろん力は貸すつもりだけど、私にそんなすごい防御結界を張る事ができるのだろうかと、不安になる。
 そんな私の気持ちに気付いたのだろう、アルバトスさんは優しく笑うと、

「大丈夫ですよ」

 と言ってくれた。

「あなたは、私を生き返らせてくれたじゃないですか。どうか、ご自分の力を、信じてください」

 自分の力を信じる、か……。確かにそうかもしれない。
 あの時――アルバトスさんを生き返らせるために、蘇生呪文を使った時のように。

「というか、自分の力を信じてやり遂げてもらわなければ、こちらが困ります。プレッシャーをかけるつもりはありませんが、この防御結界は、あなたでないとできないでしょうし、この作戦はあなたの力を前提とした作戦なのですから」

「え?」

 どういう意味なのだろう?
 私が首を傾げると、苦笑したアルバトスさんは、淡々と続けた。

「これは、あなたの力頼りの作戦なのですよ。この防御呪文――箱庭(ミニチュア・ガーデン)を成功させるためには、多くの魔力を必要とします。私では、命をかけたとしても、持続効果はホンの数日でしょう」

 多くの魔力……普通の人の魔力量がどのくらいなのかはわからないけれど、私の魔力は∞らしいから、私頼りの作戦になるのはわかるんだけど……。

「でも、私が失敗したら、どうなっちゃうんですか?」

「そうですね……その時は、私がホンの数日であろうが、時間を稼ぎ、ユーリがオブルリヒト兵相手に死闘を繰り広げる事になるでしょうね……」

「そんな……」

 何でもない事のようにアルバトスさんは言ったけど、それはみんなが死んでしまうという事ではないだろうか。
 もちろん、そうならないために、アルバトスさんとユーリは動くつもりなのだろうけど、この二人は自分の命を大切に思っていないのでは、と思う時がある。
 もちろん、このシルヴィーク村の人たちを想っての事なのだと思うけれど。
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