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第1章・異世界転移と異世界転生
思い出の写真①
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ジュニアスが立ち去った後、私は受け取ったリュックサックを持って、王様と話をした中庭に向かった。
この中庭、可愛いお花がたくさん咲いていて、心が安らぐんだよねぇ。
私は中庭に設置されているベンチに座って、リュックサックの中から財布を取り出し、中に入れていた写真を取り出した。
この写真は、小学生の頃に近所の公園で撮ったものだった。
写真には、三人全員がふっくらとしている、仲の良さそうな家族が写っている。
あんまり裕福な家庭じゃなかったから、旅行に行った事はなかったんだけど、ちょうど桜が満開だったから、みんなで散歩がてら見に行って、家族三人並んで撮ったものだった。
みんなで一緒に写っている写真って、実はこれだけだったんだよね。
三人家族だったから、後の写真は一人のものか、二人のものかが多いのだ。
これはとても貴重な写真だ。だから、絶対に無くさないように、財布の中に入れて持ち歩いていた。
これ、私が何歳の時の写真だろう? 確か、写真の裏にみんなの年齢を書いてたはずだ。
「え?」
私は写真の裏を見て、首を傾げる。
家族みんなの年齢と、どこで撮った写真かという記載の他に、かなり不恰好な文字で、元から書いてあった文字よりも小さく、私が見た事もない文章が書き込まれていたのだ。
「これ、何? 誰が書いたの?」
私は再び写真を見つめた。
もしかして、この写真の裏に書かれた文章は、いつか、このリュックが私の手に戻って、この写真を見た時のために書かれたもの?
日本語で書かれているから、この世界の人々は見てわからないかもしれないけど、持ち主である私でさえも気づかないかもしれないこのメッセージに、私はこれを書き込んだ人の想いを考えると、涙が零れそうになった。
きっと縋るような気持ちで、一生懸命知らない文字を書き込んでくれたのだ。
私を、ここから助け出すために。
写真の裏に書かれた言葉を言おうとした時、
「これは何?」
誰かが、私から写真を取り上げた。
「あら、大豚が二匹に、子豚が一匹。あなた、昔からこんなだったのね。豚一家じゃない。ある意味、可愛らしいけど」
ジュンは私の大事な写真を見ながら、そう言ってくすくすと笑った。
私だけが馬鹿にされるのは、まだ我慢できる。
だけど、家族の事まで馬鹿にされると、限界だった。
「返して!」
「うふふ、嫌よ! ファイヤー!」
ジュンはそう言うと、写真を持った方の手に、炎を灯す。
「あっ」
炎を纏ったジュンの手に持たれた写真は、一瞬のうちに燃え上がり、灰も残らなかった。
あの写真は、私にとってとても大切なものだったというのに。
この中庭、可愛いお花がたくさん咲いていて、心が安らぐんだよねぇ。
私は中庭に設置されているベンチに座って、リュックサックの中から財布を取り出し、中に入れていた写真を取り出した。
この写真は、小学生の頃に近所の公園で撮ったものだった。
写真には、三人全員がふっくらとしている、仲の良さそうな家族が写っている。
あんまり裕福な家庭じゃなかったから、旅行に行った事はなかったんだけど、ちょうど桜が満開だったから、みんなで散歩がてら見に行って、家族三人並んで撮ったものだった。
みんなで一緒に写っている写真って、実はこれだけだったんだよね。
三人家族だったから、後の写真は一人のものか、二人のものかが多いのだ。
これはとても貴重な写真だ。だから、絶対に無くさないように、財布の中に入れて持ち歩いていた。
これ、私が何歳の時の写真だろう? 確か、写真の裏にみんなの年齢を書いてたはずだ。
「え?」
私は写真の裏を見て、首を傾げる。
家族みんなの年齢と、どこで撮った写真かという記載の他に、かなり不恰好な文字で、元から書いてあった文字よりも小さく、私が見た事もない文章が書き込まれていたのだ。
「これ、何? 誰が書いたの?」
私は再び写真を見つめた。
もしかして、この写真の裏に書かれた文章は、いつか、このリュックが私の手に戻って、この写真を見た時のために書かれたもの?
日本語で書かれているから、この世界の人々は見てわからないかもしれないけど、持ち主である私でさえも気づかないかもしれないこのメッセージに、私はこれを書き込んだ人の想いを考えると、涙が零れそうになった。
きっと縋るような気持ちで、一生懸命知らない文字を書き込んでくれたのだ。
私を、ここから助け出すために。
写真の裏に書かれた言葉を言おうとした時、
「これは何?」
誰かが、私から写真を取り上げた。
「あら、大豚が二匹に、子豚が一匹。あなた、昔からこんなだったのね。豚一家じゃない。ある意味、可愛らしいけど」
ジュンは私の大事な写真を見ながら、そう言ってくすくすと笑った。
私だけが馬鹿にされるのは、まだ我慢できる。
だけど、家族の事まで馬鹿にされると、限界だった。
「返して!」
「うふふ、嫌よ! ファイヤー!」
ジュンはそう言うと、写真を持った方の手に、炎を灯す。
「あっ」
炎を纏ったジュンの手に持たれた写真は、一瞬のうちに燃え上がり、灰も残らなかった。
あの写真は、私にとってとても大切なものだったというのに。
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