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第1章・異世界転移と異世界転生

偽物と本物③

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「じゃ、じゃあ、あの女の子は一体何なの? それに、聖女じゃないからって放り出したくせに、殺そうとしたくせに、私を連れていくって、そんな勝手なっ」

「あいつらは、勝手な人間なんだよ。自分が君に対して行った事や、君の都合なんて考えない、自分勝手な人間なんだ。少なくともあの愚兄は……ジュニアスはそういう男だ。もう一人の女性の事も、上手く収めるだろね」

 深いため息をつき、ユーリが吐き捨てるように言った。
 彼女は本当に自分の兄であるジュニアス王子の事が嫌いなようだった。

「あの、連れて行かれたら、私、どうなっちゃうの?」

「多分、オリエは聖女として祀り上げられるだろう。そして……多分聖女としての役目を果たせと詰め寄られるだろうね。今回の聖女召喚の儀は、他国や魔物たちからこの国を守るために行われたから、その役目を果たさせるために、全ての自由を奪って、どこかに閉じ込められるかもしれない」

「そんなの、嫌だよっ!」

 私は首を横に振った。そんなの、絶対に嫌だ。
 でも、あの女の子も、そういう事をさせられているっていう事なのかな?
 それを聞くと、ユーリは苦虫を嚙み潰したような表情になった。

「もう一人の方は、そういう目には遭ってはいないと思うよ」

「どうして?」

「あちらの方は、君よりもずいぶん世渡りが上手そうだからさ」

「え?」

 どういう意味だろう?
 確かに私は、世渡りが上手い方ではないんだけど……。

「あちらの方は、愚兄にしっかり媚びてらっしゃったからね……。例え聖女ではない事が発覚したとしても、そちらの方で上手く立ち回るのではないかな」

 ジュニアス王子に、媚びる? 上手く立ち回る?
 もしかして、あの女の子はジュニアス王子と、そういう関係になっちゃったという事だろうか。
 もしもそうなら、多分私には無理だ。絶対にできない。
 まぁ、あちらの方も無理でしょうが。

「オリエさん……もしもあなたが聖女としてあの国に尽くしても良いとお考えなら構いませんが、そうでないのなら、元の世界に戻られる方が良いかと思います。あなたは、どうしたいですか?」

 改めてアルバトスさんに今の気持ちを聞かれ、

「元の世界に、戻りたいです」

 私は、はっきりとそう言った。

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