異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央

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第1章・異世界転移と異世界転生

呪いの毒②

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「できたっ」

 頭の中に広がっていた、もつれた糸を解き切った私は、そう叫ぶと目を開けた。

「できた! ユーリ、解いた! だから、今ならいけると思う! 今度は、解毒する!」

 ユーリの手をしっかりと握って、異常回復呪文のリカバーを再び唱える。
 すると、私が握ったユーリの手の部分から彼女の体全体に淡く白い光が広がって、青紫色の醜い痣が消えていった。

「オリエ……」

「やった、やったよ、ユーリ……。できたよっ……」

 私はユーリの手を離すと、アルバトスさんを見た。

「アルバトスさん、次はあなたです。手を、貸してください。この感覚を忘れないうちに、やります」

「はい、ありがとうございます」

 差し出されたアルバトスさんの手を握り、私は目を閉じ、リカバーを唱えた。
 ユーリの時と同じように、頭の中にもつれた糸のイメージが広がる。
 まずは、この糸を解いて、呪いを解く。

「できたっ」

 コツを掴んだのか、アルバトスさんの糸は、ユーリの時よりもずいぶん早く解く事ができた。
 だけど、これで終わりじゃない。
 今度はアルバトスさんに、解毒のためのリカバーをかける。

「やった!」

 ユーリの時と同じように、アルバトスさんの青紫色へと変色していた肌が、本来の色を取り戻していく。
 そして、呪いの毒の青紫色はアルバトスさんの体からも、完全に消えていった。
 やったぁ、とバンザイして喜ぶと、立ち上がったユーリが私の体をぎゅっと抱きしめてきた。

「オリエ、君って人は!」

 顔から青紫色の痣が消えたユーリは、やはりすごく美人だった。
 健康的な褐色の肌に、銀色の髪、金色の瞳。
 うん、やっぱりすごく綺麗。痣を消してあげられて良かった。
 アルバトスさんの方も、健康的な肌色に戻っていた。
 彼は私を見ると、「オリエさん、ありがとうございます」と言った後、水色の髪をかき上げ、明るい緑の瞳を細め、困ったように笑った。

「あの、どうかしましたか? 私、何かやっちゃいました?」

 私、二人を助けてあげられたって思っていたんだけど、何か困った事をしてしまったのだろうか?
 不安になって聞いてみると、アルバトスさんは首を横に振った。

「いえ、呪いの毒を取り除いていただいて、ありがとうございます。とても嬉しいです。ただ……」

「ただ?」

「あの呪いの毒を取り除けるとは、やはりあなたが、聖女だったのだな、と……」

「あぁ、そうだね……」

 呪いの毒を取り除けるという事は、聖女、なのだろうか。
 それって、何かまずかったのだろうか?
 私の体から腕を解いたユーリを見上げると、彼女も少し困った表情をしていた。

「アルバトス先生」

 テーブルの上で、今まで黙っていたサーチートが、ちょこちょことアルバトスさんの前まで進み出て、テーブルの上に置かれた彼の手に、小さな自分の手を重ねる。

「あのねぇ、アルバトス先生。オリエちゃんはね、聖女じゃないんだよ」

 と言ったサーチートに、ユーリもアルバトスさんも、「え?」と驚いた。
 そんなはずない、と呟く二人に、サーチートは、

「あのねぇ、オリエちゃんは聖女じゃなくって、大聖女なんだよ」

 と、まるでとっておきの秘密を教えてあげる、みたいな上から目線のドヤ顔で言ったのだ。

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