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第1章・異世界転移と異世界転生

二人のオリエ②

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「あの、オリエさん、サーチートくん。あなたたちを元の世界に戻す方法なら、私がお役に立てるかもしれません」

「え?」

 そう言い出したのは、アルバトスさんだった。
 どういう事かと尋ねると、アルバトスさんは明るい緑の瞳を優しく細め、言った。

「私は学者の家系の者ですし、以前召喚の儀の事で、ノートンから相談を受けていました」

「え?」

 驚く私とサーチートに、アルバトスさんは丁寧に説明をしてくれる。

「まず、ノートン・ホーネックというのは、ジュニアス王子の側近の男で、今回の召喚の儀の責任者であり、術者でした。オリエさん、赤茶の髪に薄い水色の瞳の男に、見覚えはないですか?」

「あります!」

 私は頷いた。赤茶の髪に薄い水色の瞳の男……そうか、あの男はノートンっていうのか。

「召喚の儀を行うにあたり、ノートンはいろんな書物を読んだようですが、自分が出した結論の答え合わせなのか、私の元を訪れました。私は、この方法で聖女召喚が行えるかという相談を受けたのです。だから私は、あの日行われた召喚の呪文も、あなたが召喚された時に足元で輝いていた魔法陣も、どのような状況で行われたかという事も、全て知っています」

「すごい! じゃあ、今すぐにでも元の世界に戻れるって事ですよね?」

 やったね、とサーチートと笑い合った時だった。
 アルバトスさんは、ただ、と続ける。

「ただ、召喚の呪文も魔法陣も知ってはいますが、今の私にはそれを行い成功させるだけの魔力がありません。あの日、ノートンは召喚の儀を行うにあたり、満月の力を利用して、己の魔力へと変換しました。だから、私がオリエさんを元の世界に戻すための魔力を得るには、召喚時と同じ状況下で行うか、他の方法で魔力を得なければ駄目なのです」

「同じ状況下っていうと、満月って事ですよね……」

 そういえば、この世界に来た時、夜だったような気がする。
 空には、大きなお月様があって……うん、確かに満月だった。

「確か、召喚の儀が行われてから、今日で三日目だっけ? 月の周期は、二十九日。という事は、単純計算で、オリエを元の世界に戻すための儀式は、二十六日後にしかできない事になる」

 ユリアナ王女が教えてくれた。
 そうかぁ、二十六日後かぁ。長いなぁ。
 この異世界での時間の流れと、元の世界の時間の流れが同じだとしても、そんなに時間がかかれば、元の世界の私は死んでしまう可能性が高そうだ。
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