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第1章・異世界転移と異世界転生

仮面の下の素顔①

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「彼女の身柄は、私が預かる。これは、父上と兄上にも了承済の話だ。だから、お前たちは彼女から取り上げた物を速やかに返却し、帰れ」

 ユリアナ王女が兵士たちにそう言うと、兵士たちはもう何も言う事が出来なかったのだろう、大人しく頷いて私から取り上げた革袋を返してくれた。
 それから、馬車を置いていけと言われた彼らは、森の中をとぼとぼと歩いて帰っていく。
 兵士たちの姿が見えなくなるまで見送った後、

「さぁて」

 と言い、ユリアナ王女は私とサーチートを見つめた。

「間に合って良かったよ。王宮に行ったら君の事を聞いて、伯父上と急いで追いかけてきたんだ」

「私を? どうしてですか?」

「どうしてって……君に、興味があったからかな」

「え?」

 私は驚いた。だって、醜い豚女とか散々な事を言われ、どうでもいい存在、むしろ迷惑な存在として殺されそうになった私だ。
 こんな私に、どうしてユリアナ王女は興味があるなんて言うんだろう。

「一体、何が不思議なんだい? 君は異世界から来た、客人じゃないか。元居た世界の話を聞いてみたいと思ったし、それに、君はオルブリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれた被害者でもある。出来るだけの事をしてあげたいって思ったんだ」

 私はさらに驚いた。
 これが本当ならとてもありがたい話ではあるけれど、今までの事から、私はユリアナ王女の言葉を素直に受け取る事が出来なかった。
 何か裏があるのではないかと、疑ってしまう。

「若く美しい女が聖女……そんな噂を耳にしてから、聖女と言われている女性と共に召喚された、もう一人はどうなったのだろうと心配したんだ。話を聞くと、王宮から放り出したと兄は言った。お金と住む場所は用意したと言っていたけれど、それもどこまで信じられる事か。実際、兄は君を……」

 多分ユリアナ王女は、始末しようとした、という言葉を飲み込んだのだと思う。
 それが、私を慮ったのか、彼女の真意を隠すためのものか、どちらなのかはわからない。
 ユリアナ王女は私を心配していたと言ってくれたけれど、私はやっぱり彼女たちを信じ切る事ができなかった。

「私の言葉、信じてもらえないかな」

 なんて答えようか。暫し考えた後、私はユリアナ王女に頷いた。

「ごめんなさい……。でも、私はこの国の王子に騙されちゃったから……素直に信じる事はできません。それに……いくら王女様って言っても、仮面とかしてるの、怪しいし……」

 こんな事を言ったら、怒っちゃうかもしれないと思ったけど、ユリアナ王女は特に怒るわけでもなく、納得したと頷いた。
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