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第6章:不和
10・教えてください
しおりを挟む「大樹くん、小花に会いたかったのはわかるが、今はまだわしを通すようにと言ったはずなんじゃがな」
おじいちゃんは泣いている昌央をあやしながら、呆れたように大樹さんを見つめた。
大樹さんは姿勢を正し、素直に「申し訳ありません」と頭を下げる。
「大樹、その様子だと、自分で小花に言っちゃったの?」
「はい……」
亘先生の話に頷く大樹さん……おじいちゃんは深いため息をついていた。
一体何の話だろうと考えて、プロポーズの事だと気が付く。
え? おじいちゃんも亘先生も、どうして知っているの?
「小花を大樹の伴侶に迎えたいって、東宮司家から周央家に報告があったからね。東宮司家から西園寺家と真中家にも話は行っているし、西園寺家ではそれを了承したと聞いている。まぁ、今の小花は西園寺家よりも真中家寄りだから、決めるのは真中家というか、小花自身なんだけど」
「え? どういう事?」
私はおじいちゃんを見つめた。
おじいちゃんは昌央をあやしながら、本日何度目かの深いため息をつく。
「わしは……小花の目が覚めた時に、小花に決めさせると言ったんじゃ。その事は、周央にも西園寺にも東宮司にも伝えてある。小花は西園寺家の娘じゃが、真中の治癒の力に目覚めた今は、真中の娘として扱われている……西園寺家扱いだと、西園寺のジジイの好きにされるからな」
西園寺のおじいさんに好きにされるというのは、勝手に結婚を決められてしまうという事だろうか。
だけど相手が大樹さんなら、私的には全く問題は無い……ただ、さっきはケンカしたみたいに言い争いをしちゃったけどね。
「で、小花はなんて答えたんだい?」
「それはっ……」
悪戯っぽい目で私を見つめる亘先生。
あぁ、この人、絶対に面白がっているよね。
じろりと睨みつけると、
「あぁ、おめでとう」
と亘先生は言った。
睨んだだけなのに、私が大樹さんのプロポーズに頷いた事が分かったみたいだ。
とりあえず、ありがとうございます、と亘先生に返し、私は大樹さんを見つめた。
「大樹さん、さっきはごめんなさい」
「いや、俺も、すまなかった……しかし……」
大樹さんは、賢さんや真紀ちゃんの事を許す気にはならないらしい。
確かに真紀ちゃんや渚ちゃんは私に辛くあたったし、賢さんは二人の事を大樹さんに言わなかったかもしれないけれど、大樹さんのこの怒り方は異常じゃないかな。
もしかすると、大樹さんがこれだけ怒る何かが、あの日、私が意識を失った後にあったっていう事?
「小花?」
私は、おじいちゃん、それから大樹さんを見つめた。
あの日私が意識を失った後、何があったかを教えてほしいけれど、おじいちゃんと大樹さんは教えてくれないような気がする。
じゃあ、亘先生はどうだろう?
「先生、あの日、何があったのか、教えてください!」
亘先生を見ると、先生は少し困ったような表情をして、
「どうしようかな~」
なんて言ったけれど、駄目だと拒絶しなかった。
「こんな怪我までしたんです。私には、知る権利があります!」
「うん、そうだね。確かに、小花の言う通りだ……」
亘先生は頷くと、おじいちゃんを見つめた。
いいですか? と、おじいちゃんに聞いてくれる。
「昌幸様、俺は小花が望むようにしてやりたいです……いろいろと納得できない事もあるみたいだし」
「亘くん……」
「亘さん……」
おじいちゃんや大樹さんは渋っていたけれど、亘先生は私の意志を尊重すべきだと、二人を説得してくれた。
その結果、私があの日の事を聞く時はおじいちゃんがそばに居る事、体調が
悪くなったらすぐに止める事、という制限があったけれど、何があったのかしりたいという私の望みは、やっと叶えられる事になったのだ。
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