西園寺家の末娘

第4章：不協和音

17・普段通りを貫いて

　七海さんと亜紀さんは、渚ちゃんと真紀ちゃんに言って聞かせるって言っていたけれど、渚ちゃんと真紀ちゃんの態度は変わらず、私と茉莉花ちゃんを無視するようになっていた。
　なんとか距離をつめようと、朝練の時も教室でも積極的に話しかけているんだけど、二人の態度は変わる事がなかった。
　クラスの他のみんなも、私と茉莉花ちゃんを遠巻きに見ているだけで、話しかけてくる事はない。
　唯一の救いは厚くんと武くんで、彼らは今まで通り私たちに接してくれていた。

「ほら、茉莉花姫、教室だぞ。しゃきっとしろよ」

　茉莉花ちゃんは、あの翌日から朝練に来なくなった。
　それだけでなく、妖滅の授業も、蘭華さんの許可が出るまで、妖気浄化の訓練をさせてもらえないらしい。
　これは蘭華さんが茉莉花ちゃんを気遣っての事なのだけど、茉莉花ちゃんはかなりショックだったようで、また元気がなくなってしまった。
　だから授業が始まる前に、朝練を終えた厚くんが茉莉花ちゃんを迎えに行って、連れてくるのだ。

「茉莉花ちゃん、おはよう！」

　そんな茉莉花ちゃんがもう一度元気になれるように、私はできるだけ大きな声で声をかける事にしている。
　周りのみんなは、うるさいな、何やってんの、という表情をする事もあるけれど、私は茉莉花ちゃんを待っていたよっていう気持ちを伝えたかったし、みんなに対しても堂々としていたかった。

「小花っ……おはようございます」

　私の声を聞いて、顔を見て、茉莉花ちゃんはほっとしたような表情をして、少しずつ笑顔になっていく。
　茉莉花ちゃんが笑ってくれないと、私も凹むから、笑ってほしい。

　こんな感じをルーティンとして一週間ほど経った頃、厚くんと武くん以外のクラスのみんなが、少しずつ今まで通りに話しかけてくれるようになった。
　中には、今までごめんなさい、と謝ってくる子も居て、私と茉莉花ちゃんの事が気にはなっていたものの、なんとなく声をかけづらかったのだと、教えてくれた。
　そうしてさらに一週間経つと、私と茉莉花ちゃんは、渚ちゃんと真紀ちゃん以外のクラスのみんなと、今まで通り話せるようになっていた。
　だけど渚ちゃんと真紀ちゃんは態度を変える事なく、私と茉莉花ちゃんを無視し続けていた。
　せめて二人が仲良くしているのならいいなと思ったんだけど、二人もケンカしているようで、渚ちゃんと真紀ちゃんは、クラスではそれぞれ一人きりだった。