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第3章:四家と妖滅
18・力の使い方
しおりを挟む「将成、蘭華、小花に四家の使い方を教えたい。お前たちの妖気浄化を見せてやってくれ」
大樹さんの言葉に、将成さんと蘭華さんは苦笑した。
「西の手伝いか? お前は、物好きだな」
「本当ですわ。ただでさえ、西のおかげで、わたくしたちの負担が増えておりますのに」
西って、西園寺家の事だよね。一体どういう事なんだろう?
ふと視線を感じて振り返ると、ちい兄が渋い表情をしていた。
ちい兄の後ろでは、渚ちゃんと渚ちゃんのお姉さんが、将成さんや蘭華さんを睨みつけるように見ていて、驚いてしまう。
「西は、分家の躾けもなっていませんわね」
「全くだ。他の四家にその態度とは、な」
呆れたように、将成さんと蘭華さんが言った。二人の後ろでは、北と南の分家は片膝をついて控えている。
将成さんと蘭華さんの言う躾けというのは、こういうのなのかもしれない。
「東の分家も、大概ですけども」
「まぁ、奴は別格だからな」
将成さんと蘭華さんはため息をつくと、同じ方向へと目を向けていた。その方向へと目を向けると、賢さんが居た。
「よお、北御門の大将と、南の蘭華姫、おはようさん。なぁ、大ちゃん、急がないと、小花ちゃんに何も教えられないまま、朝練終わっちまうぜ」
賢さん……四家の次期当主たちに、なんて言葉遣い……だけど、将成さんと蘭華さんは渋い表情をしたものの、賢さんの態度を許しているようだった。
奴は別格だからな、と言った将成さんの声が、頭の中に蘇る。
どうして賢さんは別格なんだろう?
私の知らない事は、たくさんある。
いろいろと知りたい。早く覚えなくっちゃ。
「将成、蘭華、さっさと手本を見せてやってくれ」
「あぁ、わかった」
「はいはい、わかりました。では、ご覧下さいな」
大樹さんの言葉に頷き、将成さんと蘭華さんは、それぞれ別の妖滅室へと足を向ける。
六つある部屋のうちの、端の二つ。どうやら端にある四つの妖滅屋は、四家で一つずつ使っているらしかった。
「将成さん、蘭華さん、レベルはどうしますか?」
貴美さんの声に、将成さんも蘭華さんも、「いつもと同じで」と答える。
いつもと同じってどれくらいだろうと考えていると、
「小花、レベル10だ」
と、大樹さんが教えてくれた。
「え? 十倍?」
「違う、百倍だ」
「え?」
私は耳を疑った。レベルって、確か妖気の放出量って言ってたはずだ。
百倍って、どのくらいの量なのか、全く想像できない。
「小花、レベルは、1から3までは、その数字の通りだ。だが4が五倍、5が十倍、6が二十倍、というように増えていき、レベル9が五十倍、レベル10は百倍の妖気放出量になる」
「へ、へぇ~」
「いいか、小花。お前がこれから力の使い方を覚えるにあたり、参考にするのは、四家の者だ。四家と分家では、力の使い方が違う。得物なんて後からでいい。先に力の使い方を理解しろ」
「はいっ!」
もちろん疑問に思う事はたくさんあったけれど、一度にいくつも理解する事はできないし、私は大樹さんを信じて頷いた。
「大樹さん、では、わたくしから始めますわよ」
蘭華さんから声がかかり、私は声がした方へと目を向けて、驚いた。
蘭華さんは、弓だけを持って、妖滅室に一人で立っていた。
レベル10は、百倍の妖気放出量だと言っていた。それなのに一人で浄化を行うのかと疑問に思うばかりだ。
「では、蘭華さん、妖気レベル10の妖気放出を行います」
「はい、お願いいたしますわ」
貴美さんの声に蘭華さんが頷くと、蘭華さんが居る妖滅室に、黒いモヤモヤとした妖気が放出される。
あのモヤモヤ、一体どこから放出されているんだろう?
妖滅室は透明なガラスで覆われた部屋なのに、あのモヤモヤはどこからともなくあの妖滅室の中に現れる。
そういう術式が使われているって事なんだろうけど、レベル10……百倍の妖気は、あっという間に妖滅室を暗闇にしてしまった。
「蘭華さんっ」
蘭華さんは大丈夫なのかと心配すると、
「小花! お姉様は、大丈夫ですわ!」
という、茉莉花ちゃんの声。
そして次の瞬間、黒い妖気で満たされた妖滅室の真ん中あたり――蘭華さんが一人立っていたあたりで、弓の形に炎が上がった。
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