西園寺家の末娘

明衣令央

文字の大きさ
上 下
29 / 108
第3章:四家と妖滅

11・妖気浄化

しおりを挟む

「A班、これより、妖気浄化の訓練を行う! 」

 そう言った亘先生が私たちを連れて行ったのは、転送先の廊下の突き当りにある階段を二階分降りた、広いフロアだった。
 そこにはガラス張りの正方形の部屋が六つ、三つずつくっついて二列に並んでいて、その間にたくさんの機械類が設置されていた。
 このフロアの名前は妖滅フロア、部屋の名前は妖滅室って言って、ガラスには特殊な術式がかけられているらしい。そして、一つの部屋の大きさは、一辺が三十メートルなのだそうだ。かなり広い。

「俺たちA班は、ここでひたすら妖気浄化の訓練だ。このガラスの部屋――妖滅室の中に集めた妖気を放出して、ひたすら浄化していく。三つ並んだ真ん中の部屋がフリーだから、訓練にはそこを使う。とりあえず妖気レベル1からやってみようか」

「妖気レベル? そんなのがあるの?」

「あぁ。妖気の放出量って考えたらわかりやすいんじゃないかな。レベル1からレベル10まである。体力測定の時は、危険でないように、レベル1の量のさらに20パーセントの放出量でやってもらってたよ」

 なるほど。体力測定の時はすごく簡単で楽しいと思ったけど、レベル1の五分の一の放出量だったのか。だから簡単で楽しかったのかもしれない。

「妖気は、毎日溜まってる。日本全国に仕掛けた術式で集められて、ここに転送されてくる仕組みになっているんだ。それを浄化し続けるのが、A班の役目だから、頑張ろうな」

 日本全国から集められて、転送……亘先生はすごく簡単そう説明してくれたけど、きっとすごい仕組みなんだろうなぁ。
 そんな事をぼんやり考えていると、
 
「じゃあ、今日のところは、お前ら一年は、コレでひたすら妖気浄化な」

 と言ったちい兄が、体力測定の時に使った水鉄砲を渡してくれた。

「これ、体力測定の時は、すごく楽しかったんだよね。でも、なんでこの水鉄砲で、あの妖気っていうのが消えるの?」

「その水は、簡単に言うと、聖水、いや、霊水って言う方がわかりやすいか。他の班が頑張って作ってくれてるぞ。それを俺たちが吹き掛ける事によって、妖気を浄化する事ができるんだ」

「それって、他の子たちでもできるの?」

 そう尋ねると、ちい兄は少し考え込んで、言った。

「できない事もないと思が、俺たちほどの効果はないはずだ。俺らには他の班の奴にない、妖気浄化の霊力があるらしいからな」

「なるほど」

「とにかく、A班の役目は、さっきわたるんも言ってたけど、妖気を浄化しまくる事だから、やってみな。でも、今回は前にやった時の五倍だから、なめてかかるんじゃじゃないぞ。まぁ、危なくなったら、助けに行ってやるけどさ」

「うん、わかった」

 私は頷くと、周りの仲間たちへと目を向けた。
 渚ちゃん、真紀ちゃん、茉莉花ちゃん、厚くん、武くん――。
 みんな私と同じように、水鉄砲を握っている。

「では、一年A組、レベル1妖気浄化開始!」

「はい!」

 亘先生の声に返事をした私たち一年A組A班は、黒いモヤモヤ――妖気に満たされていくフリーの妖滅室に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら使用人の扱いでした~冷たい家族に背を向け、魔法で未来を切り拓く~

沙羅杏樹
恋愛
前世の記憶がある16歳のエリーナ・レイヴンは、貴族の家に生まれながら、家族から冷遇され使用人同然の扱いを受けて育った。しかし、彼女の中には誰も知らない秘密が眠っていた。 ある日、森で迷い、穴に落ちてしまったエリーナは、王国騎士団所属のリュシアンに救われる。彼の助けを得て、エリーナは持って生まれた魔法の才能を開花させていく。 魔法学院への入学を果たしたエリーナだが、そこで待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい視線だった。しかし、エリーナは決して諦めない。友人たちとの絆を深め、自らの力を信じ、着実に成長していく。 そんな中、エリーナの出生の秘密が明らかになる。その事実を知った時、エリーナの中に眠っていた真の力が目覚める。 果たしてエリーナは、リュシアンや仲間たちと共に、迫り来る脅威から王国を守り抜くことができるのか。そして、自らの出生の謎を解き明かし、本当の幸せを掴むことができるのか。 転生要素は薄いかもしれません。 最後まで執筆済み。完結は保障します。 前に書いた小説を加筆修正しながらアップしています。見落としがないようにしていますが、修正されてない箇所があるかもしれません。 長編+戦闘描写を書いたのが初めてだったため、修正がおいつきません⋯⋯拙すぎてやばいところが多々あります⋯⋯。 カクヨム様にも投稿しています。

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

虐げられた無能の姉は、あやかし統領に溺愛されています

木村 真理
キャラ文芸
【書籍化、決定しました!発売中です。ありがとうございます! 】←new 【「第6回キャラ文芸大賞」大賞と読者賞をw受賞いたしました。読んでくださった方、応援してくださった方のおかげです。ありがとうございます】 【本編完結しました!ありがとうございます】 初音は、あやかし使いの名門・西園寺家の長女。西園寺家はあやかしを従える術を操ることで、大統国でも有数の名家として名を馳せている。 けれど初音はあやかしを見ることはできるものの、彼らを従えるための術がなにも使えないため「無能」の娘として虐げられていた。優秀な妹・華代とは同じ名門女学校に通うものの、そこでも家での待遇の差が明白であるため、遠巻きにされている。 けれどある日、あやかしたちの統領である高雄が初音の前にあらわれ、彼女に愛をささやくが……。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

【完結】転生した悪役令嬢の断罪

神宮寺 あおい
恋愛
公爵令嬢エレナ・ウェルズは思い出した。 前世で楽しんでいたゲームの中の悪役令嬢に転生していることを。 このままいけば断罪後に修道院行きか国外追放かはたまた死刑か。 なぜ、婚約者がいる身でありながら浮気をした皇太子はお咎めなしなのか。 なぜ、多くの貴族子弟に言い寄り人の婚約者を奪った男爵令嬢は無罪なのか。 冤罪で罪に問われるなんて納得いかない。 悪いことをした人がその報いを受けないなんて許さない。 ならば私が断罪して差し上げましょう。

え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。

ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。 ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」 ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」 ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」 聞こえてくる声は今日もあの方のお話。 「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16) 自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...