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第3話-報道

報道-3

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 それから薫はアナウンス部の人間に田沢の様子を聞き込みする傍ら京助はというと、田沢の机を調査していた。
 田沢の机の上は、適当に重ねられた新聞紙と原稿がとっ散らかっていた。
「来たねぇ~机だな」京助は悪態をつきながら、今度は引き出しの中を調べ始める。
 一番上段の引き出しは鍵がかかっており、二段目の引き出しには大量のお菓子(スナック菓子)が入っていた。三段目には、領収書を纏めたファイルが五冊入っていた。
「ふーん」
 京助はパラパラとファイルの中で、最近の日付であるファイルを読んでいた。
「どうかされたんですか?」
「薫ちゃん。悪いけど、これ、預かってくれない?」
「分かりました」
 事件に繋がっている物であると察した薫は素直に指示に従う。
「あの、そのファイルが田沢さんが死んだ事と関係あるのでしょうか?」
 そう質問してきたのは、ミミであった。
「えーっと、それはですね・・・・・・」
 ミミの質問の回答に困って薫は京助に助けての視線を送るのだが、かく言う京助は二段目の引き出しの中身に夢中であった。
「ちょっと、金智さん」小声で呼びかけられた京助は「何? 薫ちゃん」と用件を聞く。
「三邉さんがこのファイルが事件と関係あるのかと」
「ああ、無いですよ。多分。それより、田沢さんはここのお菓子は日常的に食べられていたんですか?」
「そうでした。特に好きだったのは、その袋詰めで売られている最中です」
「へぇー最中ですか。確かに美味しそう」
 京助はそう言いながら、最中を一つ取り出して封を開けて食べ始める。
「ちょっと、金智さん!!」薫の注意も聞かずに「あ、ホントだ。美味しい」と賛辞の言葉を述べる京助。
「良かったです。あ、これとかも美味しいですよ」
 ミミはミニどら焼きを京助に渡した。
「そうなんですか。頂きます」京助は渡されたミニどら焼きを口にした。
「金智さん!!!」
「悪かった、悪かったよ。薫ちゃん」
 軽い感じで謝罪した京助は、「ありがとうございました。美味しいかったです」とミミに礼を言う。
「良かったです」ミミがここで初めて笑顔を見せた。
「そう言えば、飲み物は無いですねぇ~」
 京助は机の上に飲み物がない事に気づいた。
「あ、そうですね」
「何か知りませんか?」ミミに問いかけると「知りません。すいません。これから、番組の打ち合わせがあるので失礼します」と答えて足早にその場から立ち去っていった。
「しまったぁ~」京助は悔しそうに額を叩く。
「どうしたんですか?」
「サインをもらい忘れた」
 その一言に、薫はガクっと肩を落とすのだった。
 それから、京助と薫は田沢が倒れた事件現場へと戻った。
「戻ってきましたけど、どうするんですか?」薫が切り出した。
「ま、取り敢えず、中に入ろうぜ」
 京助は空室の会議室へと入ったので、薫も続いて入る。
「急に何ですか?」
「さっき、渡したファイルを貸して」
「はい、どうぞ」薫は手の中にあるファイルを渡した。
 受け取った京助は、あるページを開くと「これ見て」と薫に見るように促した。
「この領収書が何ですか?」
 京助が見せたページの領収書はホテルのものであった。
「変なんだよ」
「変?」
 まじまじと領収書を見る薫に「違う、違う。別のページとか見て」とレクチャーを受けた薫は別のページを見る。
「確かに、ホテルの領収書が多いですね。名目は取材」
「何の取材なんだろうね?」
「金智さんは、これが取材ではないと?」
「うん。違うと思う。多分、浮気系じゃないかな。被害者の左手薬指に指輪はめていたから」
「じゃあ、今回の事件は他殺で動機は浮気による痴情の縺れという事ですか? その浮気相手は分かっているんですか?」
「分かってないからこそ、調べるんでしょ」
 薫を見ながら、とんだ、困ったちゃんだな。という表情を見せるのだった。
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