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第1話-出会
出会-13
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後日、京助は薫に呼び出され会社近くの喫茶店Aに来ていた。
「ふ、ふ、ふ、ふ~ん」
京助は鼻歌を歌いながら薫の到着を待っていると、薫は慌てた様子で店に入ってくる。
「あ、居た!」
事件現場で見せた表情とは、また違った表情を見せながら京助が着席するテーブルの元へ駆け寄る。
「どうも、お待たせしました」
「ホント、待たされた」
京助はそう答えながら、テーブルの上に置いてあった紅茶を飲む。
「すいません。今日、お呼びしたのは」
「この前、捕まった人がどうなったかでしょ」
「そうです」
「別に報告しなくても良いのに」
「そういう訳にもいきません。北澤さんからきっちり、報告するよう仰せつかって来たんですから」
「北澤って誰だっけ?」
「金智さんの同級生じゃないんですか?」
「はてさて、どうだったかな。俺、学生時代は影のような存在だったし。ま、そんなことはさておき、事後報告聞いてあげるから何か頼みな」
京助は薫にメニュー表を手渡した。
「ありがとうございます」薫は注文する品を決め、呼び鈴を鳴らし店員を呼ぶ。
注文を取りに来た店員に「カフェモカ」と注文した薫。店員の姿が見えなくなったことを確認してから事件について話し始めた。
「それでですね。私頭は素直に自供しています」
「そ」素っ気ない返事をする京助だが、薫はめげずに続ける。
「金智さんが推理通りでしたよ。私頭が使った手口は」
「推理って。あんなもの推理とは言わないよ」
「それでも、私頭の供述は金智さんの推理通りだったんですから」
「推理通りとは言うけど、どういう手口だった訳?」
「説明しなきゃダメですか?」
「ダメ」
「分かりました」
薫はやれやれといった顔をしながら、私頭の自供内容を語り始めた。
私頭は自分が行っていた不正を飯田に擦り付けようと画策し、その為に奄美大島まで出向きその下準備を行っていた。
そんなある日、飯田から事件当日に話があるので出社して欲しいと依頼され、それを快く引き受けた。
私頭は飯田が自分の不正について気づいたのだと察し、私頭が来る前にぐうの音もでない資料を用意しようと先回りして入る事を計画し前日、一度退社し忘れ物をした体を装い会社に戻り残業していた同僚の仕事を少し手伝いながら鍵を掛けるチャンスを待ち、その時が訪れ鍵を持ち帰ることに成功した私頭。翌日、呼び出された時間の二時間前に守衛に会わないよう裏口から会社へと入った。何故、守衛と会わないようにしたのか。薫が尋ねたところ、守衛に鍵を受け取ると用件を聞かれるので鍵を返しては面倒なことになると思っての事だったそうだ。
「それで、後から来た飯田さんを殺したって訳か」
ここまで話を聞いた京助が口を開いた。
「そう簡単に終わらせないでください」
薫は京助を諌めると話を戻した。
それから一時間後、飯田が事務所を訪れた。
私頭は用件を尋ねると、やはり私頭の不正についてであった。飯田の目的としては私頭自身から証言を取ることだったのだが、私頭は事前に用意した捏造証拠を見せつけた。
しかし、飯田はこれを一蹴した。
それどころか、飯田を陥れる為への工作すら飯田に露見していたのだ。その事実が、月曜日にこの事が明るみになる事を知らされる事になっていた。
その事を聞かされた私頭は咄嗟に近くに置いてあったオブジェを手に取り、飯田を殴りつけた。
「おー怖っ」
薫から飯田が殺された経緯を聞いた京助の感想はその一言だけであった。
「ふ、ふ、ふ、ふ~ん」
京助は鼻歌を歌いながら薫の到着を待っていると、薫は慌てた様子で店に入ってくる。
「あ、居た!」
事件現場で見せた表情とは、また違った表情を見せながら京助が着席するテーブルの元へ駆け寄る。
「どうも、お待たせしました」
「ホント、待たされた」
京助はそう答えながら、テーブルの上に置いてあった紅茶を飲む。
「すいません。今日、お呼びしたのは」
「この前、捕まった人がどうなったかでしょ」
「そうです」
「別に報告しなくても良いのに」
「そういう訳にもいきません。北澤さんからきっちり、報告するよう仰せつかって来たんですから」
「北澤って誰だっけ?」
「金智さんの同級生じゃないんですか?」
「はてさて、どうだったかな。俺、学生時代は影のような存在だったし。ま、そんなことはさておき、事後報告聞いてあげるから何か頼みな」
京助は薫にメニュー表を手渡した。
「ありがとうございます」薫は注文する品を決め、呼び鈴を鳴らし店員を呼ぶ。
注文を取りに来た店員に「カフェモカ」と注文した薫。店員の姿が見えなくなったことを確認してから事件について話し始めた。
「それでですね。私頭は素直に自供しています」
「そ」素っ気ない返事をする京助だが、薫はめげずに続ける。
「金智さんが推理通りでしたよ。私頭が使った手口は」
「推理って。あんなもの推理とは言わないよ」
「それでも、私頭の供述は金智さんの推理通りだったんですから」
「推理通りとは言うけど、どういう手口だった訳?」
「説明しなきゃダメですか?」
「ダメ」
「分かりました」
薫はやれやれといった顔をしながら、私頭の自供内容を語り始めた。
私頭は自分が行っていた不正を飯田に擦り付けようと画策し、その為に奄美大島まで出向きその下準備を行っていた。
そんなある日、飯田から事件当日に話があるので出社して欲しいと依頼され、それを快く引き受けた。
私頭は飯田が自分の不正について気づいたのだと察し、私頭が来る前にぐうの音もでない資料を用意しようと先回りして入る事を計画し前日、一度退社し忘れ物をした体を装い会社に戻り残業していた同僚の仕事を少し手伝いながら鍵を掛けるチャンスを待ち、その時が訪れ鍵を持ち帰ることに成功した私頭。翌日、呼び出された時間の二時間前に守衛に会わないよう裏口から会社へと入った。何故、守衛と会わないようにしたのか。薫が尋ねたところ、守衛に鍵を受け取ると用件を聞かれるので鍵を返しては面倒なことになると思っての事だったそうだ。
「それで、後から来た飯田さんを殺したって訳か」
ここまで話を聞いた京助が口を開いた。
「そう簡単に終わらせないでください」
薫は京助を諌めると話を戻した。
それから一時間後、飯田が事務所を訪れた。
私頭は用件を尋ねると、やはり私頭の不正についてであった。飯田の目的としては私頭自身から証言を取ることだったのだが、私頭は事前に用意した捏造証拠を見せつけた。
しかし、飯田はこれを一蹴した。
それどころか、飯田を陥れる為への工作すら飯田に露見していたのだ。その事実が、月曜日にこの事が明るみになる事を知らされる事になっていた。
その事を聞かされた私頭は咄嗟に近くに置いてあったオブジェを手に取り、飯田を殴りつけた。
「おー怖っ」
薫から飯田が殺された経緯を聞いた京助の感想はその一言だけであった。
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