上 下
12 / 45
第1話-出会

出会-12

しおりを挟む
「この鍵は、何ですか?」
 薫は私頭のポケットから取り出した鍵を私頭に見せながら尋ねる。
「それは家の鍵です」
「薫ちゃん」
 薫の問いに答えた私頭の回答を無視するかのように、京助は確認するよう促す。
 京助に言われるがまま、薫は入口の鍵穴に鍵を通し入れると鍵は綺麗に鍵穴に入りガチャガチャと音を立てて開け閉めすることが出来た。
「これが家の鍵ですか。言いたい事はありますか?」
「そうでした! 昨日は、私が最後に退社したんだった!! それで急いでいたものだから守衛に鍵を返しそびれていたんです!!!」私頭は白々しい言い訳を二人に聞かせた。
「そうですか。そうですか」
 京助がやれやれといった表情を見せていると、薫のスマホにメッセージが入った。
 防犯カメラの映像を確認していた刑事からであった。内容は、二時間前に私頭の姿が映っていたというものであった。
「私頭さん、これはどういう事ですか?」
 薫は送られてきた私頭が映った防犯カメラの映像の静止画を見せつけながら質問する。
「それは、買い物ついでに忘れ物を取りに来たんですよ」
「忘れ物。それは、どれになりますか?」
 机に並べられた私頭の所持品を見ながら京助は質問する。
「こ、これです」
 私頭が指さしたのは、財布であった。
「財布を忘れたんですか! 致命的じゃないですか!!」驚いて見せる京助を私頭は苦々しい顔で見る。
「私頭さん。貴方が犯人ですね」
 薫の問いかけに、膝から崩れ落ちてしまう私頭。
「落ちぃ~た。落ちた」京助が嬉しそうに言うと、「金智さん!」と薫に諌められる。
「すんません」
「どうして、飯田さんを殺したんですか?」
「私は、飯田に役員の前で正直に言うように説得したところ、激昂したあいつが襲い掛かってきたんです」
「それで、咄嗟的に殺してしまったと?」薫の問いに黙って頷いて認める私頭。
「噓だな」
 京助は、私頭の発言を一蹴する。
「どうしてですか?」
「今さ、北川君から連絡来て、どうも不正を働いてのは飯田さんではなくこの人だったようだよ。薫ちゃん」
「え?」
 ? マークを頭の上に浮かべる薫に自身のスマホに、飯田の上司から聞き込みをしていた北澤から送られてきたメッセージを見せ、その内容は飯田は不正を暴こうとしていたという証言が取れたというメッセージが、京助のスマホに送られていた。
「え、今まで聞いていた話とは全然違うじゃないですか!」
「そうなるよね。という事はだ。不正を暴こうとしていたのは飯田さんだから、激昂するのはおかしな話だよな」
 項垂れている私頭は京助の発言を聞いても尚、微動だにせず黙って二人の会話を聞いていた。
「因みに、この証言をなさっていたのはあなたの上司らしいですよ」
「そうか・・・・・・」
 観念したのか、私頭は薫に手錠をかけるよう差し出す。
「私頭賢人。飯田善さん、殺害容疑で緊急逮捕」
 薫はそう宣言し、私頭の手に手錠をかけた。
「ご協力ありがとうございました」薫はそう言いながら、私頭を立たせる。
「どういたしまして。つーことは帰っても良い?」
「はい」
「じゃ、お疲れぇ~」
 京助は薫よりも先にその場を後にするのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑された女子少年死刑囚はガイノイドとして冤罪をはらすように命じられた

ジャン・幸田
ミステリー
 身に覚えのない大量殺人によって女子少年死刑囚になった少女・・・  彼女は裁判確定後、強硬な世論の圧力に屈した法務官僚によって死刑が執行された。はずだった・・・  あの世に逝ったと思い目を覚ました彼女は自分の姿に絶句した! ロボットに改造されていた!?  この物語は、謎の組織によって嵌められた少女の冒険談である。

探偵は女子高生と共にやって来る・シン

飛鳥 進
ミステリー
私立探偵の熱海 長四郎(あたみ ちょうしろう)と高校生二年生の女子高生羅猛 燐(らもう りん)が直面する事件を解決していく物語である。 (月・水・金の隔日、18時更新)

マイグレーション ~現実世界に入れ替え現象を設定してみた~

気の言
ミステリー
いたって平凡な男子高校生の玉宮香六(たまみや かむい)はひょんなことから、中学からの腐れ縁である姫石華(ひめいし はな)と入れ替わってしまった。このまま元に戻らずにラブコメみたいな生活を送っていくのかと不安をいだきはじめた時に、二人を元に戻すための解決の糸口が見つかる。だが、このことがきっかけで事態は急展開を迎えてしまう。 現実に入れ替わりが起きたことを想定した、恋愛要素あり、謎ありの空想科学小説です。 この作品はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話

フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談! 隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。 30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。 そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。 刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!? 子供ならば許してくれるとでも思ったのか。 「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」 大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。 余りに情けない親子の末路を描く実話。 ※一部、演出を含んでいます。

「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話

赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。 「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」 そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

意味がわかると下ネタにしかならない話

黒猫
ホラー
意味がわかると怖い話に影響されて作成した作品意味がわかると下ネタにしかならない話(ちなみに作者ががんばって考えているの更新遅れるっす)

SNSの使い方

花柳 都子
ミステリー
 ある日、無実の罪でアルバイトをクビになった綿貫千春は、ひょんなことから小さな編集社の旅雑誌公式SNSプロジェクトを手伝うことに。  旅雑誌といえばキラキラしてワクワクして、見ているだけで幸せな気持ちになれる、はずなのに。  不運続きの千春にとって、他人のSNSなど微塵も興味がなく、いっそ消えてなくなればいいとさえ思っていた為、実際のところ全くもって熱が入らなかった。  それでも相棒となった記者の風月七緒は、千春の仕事ぶりを認め、取材で関わる全ての人に敬意を払い、どんなに小さな仕事に対しても真っ直ぐ、懸命に向き合う。そんな姿に千春は徐々に心を動かされていく。  彼らは行く先々で必ずトラブルに巻き込まれるが、千春はその度にその土地の人々の葛藤や迷いが、そしてその人たちにしか分からない愛や幸せがあることを知る。  自分にとっての幸せとは、SNSを見る人たちの日常の喜びとは、全ての人にとってのこの世界とは、一体何なのか。  人生一度目の壁にぶつかる若き青年と、人類全ての幸福を願う文系ヒーローの熱くもあたたかい物語。  SNSを通して本当の幸せを見つけたいあなたへ、心からの愛を込めて。

処理中です...