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第1話-出会

彼氏-11

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「私頭さんが犯人って言いますけど。その根拠は?」
 薫は突然、私頭が犯人だと言い出した京助に質問した。
「根拠は、ここに来た時に付いていたタグ付きの服かな」
「それだけの理由で、ですか? 私頭さんが言っていたじゃないですか上司から連絡受けて慌てて駆けつけたって」
「いや、そこまでは良いんだよ。でも、着替えたはずの服を持っていなかったでしょ。それに、家もこの近所じゃないそう言ってじゃん。わざわざ会社近くの服屋まで来る? まぁ、そこの服屋がお気に入りだって言うなら仕方ないけど。なんにせよ。着替えた服は今どこですか?」
「それは・・・・・・」
「私頭さん。ここで服の所在を明確にすれば疑いが晴れるんですよ」
「・・・・・・」私頭は、薫に明快な返答をしない。
 何かを考えている様子が薫にも分かった。
「それに、どうも都合よく飯田さんの悪事がとんとん拍子で暴かれるじゃん。まるで、警察が来る事を前提に用意されていたとしか思えないけど」
「それは邪推じゃないですか?」
「邪推だと良いんだけどねぇ~」
 だんまりを続ける私頭を見る京助は話を続ける。
「それに、突然だったじゃない? 西口杏さんの名前が出てきたのは」
「だって、金智さんが内部犯の犯行だって言うからこそ、私頭さんは心当たりのある人物を言ってくれたんじゃないですか」
「内部犯っていうのは、過去に居た人の事なの? 普通は、今現在勤めている社員とかの名前を挙げるんじゃなくて。半年以上前に退社した人物だし、西口杏に似たという女性の目撃情報もないわけだからね」
「そうですけど・・・・・・」
 ここまでの話で、一切を語らなくなった私頭を少し疑い始める薫であった。
「で、鍵はさ被害者の飯田さんが持っていても不思議はないんだけど、薫ちゃん、どう? 持ってた?」
 薫はそう尋ねられ、情報交換した際に記載された手帳を見る。
「確かに所持品の中に鍵はありませんでした」
「そうかぁ~事件前の被害者の目撃情報は?」
「はい。守衛さんは見ていないとの事です」
「それもそれで、変だが」
「ですので、防犯カメラの映像を確認したところ、金智さんが死体を発見する一時間半前にビルの裏口から入るところが映っていました」
「じゃあ、その一時間半の間にここで殺人が行われたのか」
「そうなりますね」
「それよりもっと前の映像で、この会社の従業員は映っていないの?」
「確認してみます」
 薫はすぐ様、防犯カメラの映像を確認している刑事に連絡した。
「ここまでの話を聞いて、何か反論はないですか? 私頭さん」
 京助が尋ねると、私頭はやっと口を開いた。
「大ありですよ。着替える前の服を持っていなかっただけで、私を犯人だというのですから」
「では、聞きますけど。その着替える前の服はどうされたんですか?」
「着替えた服屋に置いてきました」
「じゃあ、その服屋を教えてください。薫ちゃんに確認させますから」
「分かりました」
 渋々、薫に服屋のレシートを渡す私頭。
「確認させます」
「では、次に所持品検査を」
「良いでしょう。その前に、トイレに行かせてください」
「構いませんけど。所持品は置いて行ってくださいね」
 京助のその一言に、私頭の顔が曇る。
「どうしました? 鍵をトイレに流そうとでも考えてました?」
「そ、そんな訳では」
「そうですか。でしたら、お願いします」
「私からもお願いします。私頭さんの無実を証明する為にも」
 薫にもそう言われ、苦い顔をしながらズボンのポケットから所持品を取り出す。
「では、失礼します」私頭がトイレに向かおうとすると「薫ちゃん。身体検査」と京助が言うとすかさず薫が身体検査をする。
 そして、何かに気付いた薫は私頭にズボンのポケットから鍵を取り出した。
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