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第1話-出会
出会-6
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「持ってきました」
私頭は三冊の業務日誌を持って戻ってきた。
「ありがとうございます。では、拝見させて頂きます」京助は業務日誌を読み始める。
飯田の業務日誌は、雑の一言で片付く代物であった。
例を挙げるなら、2022/12/15の日誌の内容は次のようなものだった。
午前9時 出社
午前9時30分 メールチェックを終え、外回りに出る。
午後17時45分 帰社
午後18時 退社
普通は外回りで行った企業、商談内容を記載するのがマストなものなのだが、そういった記載は一切無かった。
「随分、適当な業務日誌ですね」
「お恥ずかしい限りです」
「これ、上司の方に怒られたんじゃないんですか?」
「そうですね。最初は上司も怒っていたんですけど、いくら言っても直さないのでここ最近は何も言わず。って感じでした」
「そうでしたか。これじゃあ、どの様な商談をしていたとか分かりませんね」
「ええ。ですが、それでも契約を結んで来るので驚きなんです」
「御社は、海洋ごみを回収する装置の販売、メンテナンスされているんですよね?」
「そうです」
「中々、契約を取ってくるのは難しいと思うのですが、どういう所が主な営業先なんですか?」
「環境保護をするNGO法人とかですね。メンテナンスもやっておりますので、そちらの受注も営業が引き受ける事になっているんです」
「成程。では、飯田さんは多くのNGO団体から依頼を受けていたってことですか」
「違います。飯田は地方の漁港とかをメインの顧客ターゲットにしていましたから」
「漁港ですか」
「そうです。主な取引先は関東近郊なんですが、飯田は関東近郊以外で受注を取ってきまして会社としては地域範囲を広げていないのでメンテナンスの方が追い付いていないんですけど」
「そんなに壊れやすい製品なんですか?」
「定期的にメンテナンスをしないと壊れやすい製品でして、メンテナンス出来る人間も多くはないので困ってたんです」
「確かに、遠方の地方だと出張費もバカになりませんから、大変ですよね」
「そうなんです」
「頼んできました。それで、今は何を?」戻ってきた薫が現状について尋ねる。
「今、被害者の飯田さんが書いていた業務日誌を見させてもらっていたところ」
「それで、何か分かりましたか?」
「何にも分からない」
「またそれですか?」
私頭が居る手前、「自分が犯人である事を逸らす為に、でたらめを言って捜査妨害をしているのではないか」と問い詰められない薫を他所に京助は何食わぬ顔で業務日誌を読み続ける。
「あ、そうだ。私頭さんの業務日誌も見せて頂けませんか?」
「私のですか?」
「はい」
「分かりました。すぐに持ってきます」
「お願いします」
私頭は薫に一瞥すると、自分の業務日誌を取りに行った。
「金智さん、今やっている事って事件解決に関係あるんですか?」
「あるよ」
「じゃあ、聞きますけど。金智さんは犯人の目星は立っているんですか?」
「立っているからこそ、調べているんだから」
ここですんなりと犯人の名前を教えない京助に、苛立ちを覚える薫。
「犯人が誰なのか、教えてください」
「あ、来た」
戻ってきた私頭を見て、京助は答えをごまかす。
「これが私の書いている業務日誌です」
「拝見します」
京助は私頭の業務日誌を受け取り、目を通し始めた。
私頭は三冊の業務日誌を持って戻ってきた。
「ありがとうございます。では、拝見させて頂きます」京助は業務日誌を読み始める。
飯田の業務日誌は、雑の一言で片付く代物であった。
例を挙げるなら、2022/12/15の日誌の内容は次のようなものだった。
午前9時 出社
午前9時30分 メールチェックを終え、外回りに出る。
午後17時45分 帰社
午後18時 退社
普通は外回りで行った企業、商談内容を記載するのがマストなものなのだが、そういった記載は一切無かった。
「随分、適当な業務日誌ですね」
「お恥ずかしい限りです」
「これ、上司の方に怒られたんじゃないんですか?」
「そうですね。最初は上司も怒っていたんですけど、いくら言っても直さないのでここ最近は何も言わず。って感じでした」
「そうでしたか。これじゃあ、どの様な商談をしていたとか分かりませんね」
「ええ。ですが、それでも契約を結んで来るので驚きなんです」
「御社は、海洋ごみを回収する装置の販売、メンテナンスされているんですよね?」
「そうです」
「中々、契約を取ってくるのは難しいと思うのですが、どういう所が主な営業先なんですか?」
「環境保護をするNGO法人とかですね。メンテナンスもやっておりますので、そちらの受注も営業が引き受ける事になっているんです」
「成程。では、飯田さんは多くのNGO団体から依頼を受けていたってことですか」
「違います。飯田は地方の漁港とかをメインの顧客ターゲットにしていましたから」
「漁港ですか」
「そうです。主な取引先は関東近郊なんですが、飯田は関東近郊以外で受注を取ってきまして会社としては地域範囲を広げていないのでメンテナンスの方が追い付いていないんですけど」
「そんなに壊れやすい製品なんですか?」
「定期的にメンテナンスをしないと壊れやすい製品でして、メンテナンス出来る人間も多くはないので困ってたんです」
「確かに、遠方の地方だと出張費もバカになりませんから、大変ですよね」
「そうなんです」
「頼んできました。それで、今は何を?」戻ってきた薫が現状について尋ねる。
「今、被害者の飯田さんが書いていた業務日誌を見させてもらっていたところ」
「それで、何か分かりましたか?」
「何にも分からない」
「またそれですか?」
私頭が居る手前、「自分が犯人である事を逸らす為に、でたらめを言って捜査妨害をしているのではないか」と問い詰められない薫を他所に京助は何食わぬ顔で業務日誌を読み続ける。
「あ、そうだ。私頭さんの業務日誌も見せて頂けませんか?」
「私のですか?」
「はい」
「分かりました。すぐに持ってきます」
「お願いします」
私頭は薫に一瞥すると、自分の業務日誌を取りに行った。
「金智さん、今やっている事って事件解決に関係あるんですか?」
「あるよ」
「じゃあ、聞きますけど。金智さんは犯人の目星は立っているんですか?」
「立っているからこそ、調べているんだから」
ここですんなりと犯人の名前を教えない京助に、苛立ちを覚える薫。
「犯人が誰なのか、教えてください」
「あ、来た」
戻ってきた私頭を見て、京助は答えをごまかす。
「これが私の書いている業務日誌です」
「拝見します」
京助は私頭の業務日誌を受け取り、目を通し始めた。
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