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第弐拾漆話-大物
大物-2
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「起きなさいよ」
燐は長四郎を揺り起こそうとするが、長四郎は「う~ん」と唸るだけで起きない。
「ったく、仕方ない。あれを使うか」
燐は得物を取りに行った、その時に、長四郎は目をカ゚ッと開き音を立てないようにベッドの代わりにしていたソファーから立ち上がり部屋を出て行こうとする。
「あら、起きたの」
背後から優しい声が聞こえたので、長四郎はゆっくりと振り返る。
「お、おはようございますぅ~」
「おはよう」
燐は笑顔で手に持つフライパンで長四郎を思いっきり殴打する。
「グゲボっ!!」
長四郎は白眼を向いて、その場に卒倒した。
「ファっ!!」
長四郎が目を覚ますと、優雅に珈琲を飲む富澤 富有子の姿があった。
「ようやく起きたみたいね」
「あ、おそようございます。って、なんで珈琲を飲んでるんすか」
「燐ちゃんが出してくれたの」
「ラモちゃんが?」
そこで、長四郎は燐からフライパンで殴られたのを思い出し、沸々と怒りが湧いてきた。
「あのガキはどこですか!」
「学校」
「え? 学校? ですか? あの不登校高校生が? 有り得ない」
「燐ちゃんって、不登校なの?」
富澤婦人は興味津々といった感じで、身を乗り出して長四郎に質問する。
「知らないんですか? ラモちゃんは不登校高校生ですよ」
「そうなの! 私、知らなかったぁ~ 確かに制服着ているところあまり見ないはずだ」
一人、納得する富澤婦人に長四郎はこのまま上手く乗せて帰ってもらおう。そう考え始めていた。
「そうでしょ。そうでしょ。是非とも富有子さんからも学校に行くように言っといてください」
「そうね。言っておくわ」
「じゃ、そういう事で」
「そういう事でじゃないわよ。依頼しに来たのよ」
「依頼ですか?」嫌そうな顔をする長四郎。
「何で、嫌そうな顔をする訳?」
「え! 僕、そんな嫌そうな顔してますか」
「してる。してる」
富澤婦人はそう言いながら、手鏡で長四郎の顔を写す。
そこには、笑顔ながら顔を引きつらせている自分の顔が写っていた。
「いや、アハハ!」
「笑って誤魔化すんじゃないの。燐ちゃんから聞いたわよ。成功報酬を払わなかった事を根に持っているって」
「滅相もないと言いたいとこですが、その通り。確かに前回、手付金は払って頂きましたが成功報酬が支払われていない! ということは、金払いが悪い。よって、今回の依頼は受けない!!」長四郎は固い意志を見せたつもりだった。
「それはそうでしょ。騙し取られたお金は取り返せていないんだから」
「でも、犯人グループは捕まったでしょ?」
「私は、お金が返ってきたら払うつもりだったの」
「いやね、富澤さん。僕は取り返そうと思ったんですけど。日本警察は優秀だから、持ってかれちゃったんですよ」
「そう。でも、払わないわよ」
ガクッと肩を落とす長四郎。
「じゃ、これ手付金ね」
富澤婦人は、渋沢栄一を百枚束ねた紙を机に置いた。
「手付金にしては、額が大きいですね」
長四郎の目つきが真剣な眼差しへと変わる。
「探して欲しいのは、紅 音々。26歳。森下 衆男邸に勤める家政婦よ」
「森下衆男ですか。厄介な相手ですね」
森下衆男とは、日本政治の裏で暗躍する大物フィクサーと呼ばれる人物である。
「そうなの」
「ま、良いでしょう。で、その紅さんという人はご親戚か何かですか?」
「いいえ、ただの友達よ。一週間後に韓国旅行に行くの。それで、打ち合わせがあって連絡を取ったんだけど」
「既読が付かない状態だと?」
富澤婦人はコクリと頷く。
「OK. 分かりました。取り敢えず、その森下衆男邸から当たってみます」
そう言う長四郎だったが、頭の中は百万円の使い道でいっぱいだった。
「宜しくね」
富澤婦人は、しれっと百万円の束を鞄にしまい事務所を後にした。
「邪魔者は居なくなった。ふっふっふ。さぁ、百人の栄一さん、私の手元へ。あれ?」
机の上にあった百万円の束がなくなった事に今頃になって気づいた長四郎。
「おのれ、ババァ!!」
長四郎の怒りの雄叫びが事務所に響き渡る。
燐は長四郎を揺り起こそうとするが、長四郎は「う~ん」と唸るだけで起きない。
「ったく、仕方ない。あれを使うか」
燐は得物を取りに行った、その時に、長四郎は目をカ゚ッと開き音を立てないようにベッドの代わりにしていたソファーから立ち上がり部屋を出て行こうとする。
「あら、起きたの」
背後から優しい声が聞こえたので、長四郎はゆっくりと振り返る。
「お、おはようございますぅ~」
「おはよう」
燐は笑顔で手に持つフライパンで長四郎を思いっきり殴打する。
「グゲボっ!!」
長四郎は白眼を向いて、その場に卒倒した。
「ファっ!!」
長四郎が目を覚ますと、優雅に珈琲を飲む富澤 富有子の姿があった。
「ようやく起きたみたいね」
「あ、おそようございます。って、なんで珈琲を飲んでるんすか」
「燐ちゃんが出してくれたの」
「ラモちゃんが?」
そこで、長四郎は燐からフライパンで殴られたのを思い出し、沸々と怒りが湧いてきた。
「あのガキはどこですか!」
「学校」
「え? 学校? ですか? あの不登校高校生が? 有り得ない」
「燐ちゃんって、不登校なの?」
富澤婦人は興味津々といった感じで、身を乗り出して長四郎に質問する。
「知らないんですか? ラモちゃんは不登校高校生ですよ」
「そうなの! 私、知らなかったぁ~ 確かに制服着ているところあまり見ないはずだ」
一人、納得する富澤婦人に長四郎はこのまま上手く乗せて帰ってもらおう。そう考え始めていた。
「そうでしょ。そうでしょ。是非とも富有子さんからも学校に行くように言っといてください」
「そうね。言っておくわ」
「じゃ、そういう事で」
「そういう事でじゃないわよ。依頼しに来たのよ」
「依頼ですか?」嫌そうな顔をする長四郎。
「何で、嫌そうな顔をする訳?」
「え! 僕、そんな嫌そうな顔してますか」
「してる。してる」
富澤婦人はそう言いながら、手鏡で長四郎の顔を写す。
そこには、笑顔ながら顔を引きつらせている自分の顔が写っていた。
「いや、アハハ!」
「笑って誤魔化すんじゃないの。燐ちゃんから聞いたわよ。成功報酬を払わなかった事を根に持っているって」
「滅相もないと言いたいとこですが、その通り。確かに前回、手付金は払って頂きましたが成功報酬が支払われていない! ということは、金払いが悪い。よって、今回の依頼は受けない!!」長四郎は固い意志を見せたつもりだった。
「それはそうでしょ。騙し取られたお金は取り返せていないんだから」
「でも、犯人グループは捕まったでしょ?」
「私は、お金が返ってきたら払うつもりだったの」
「いやね、富澤さん。僕は取り返そうと思ったんですけど。日本警察は優秀だから、持ってかれちゃったんですよ」
「そう。でも、払わないわよ」
ガクッと肩を落とす長四郎。
「じゃ、これ手付金ね」
富澤婦人は、渋沢栄一を百枚束ねた紙を机に置いた。
「手付金にしては、額が大きいですね」
長四郎の目つきが真剣な眼差しへと変わる。
「探して欲しいのは、紅 音々。26歳。森下 衆男邸に勤める家政婦よ」
「森下衆男ですか。厄介な相手ですね」
森下衆男とは、日本政治の裏で暗躍する大物フィクサーと呼ばれる人物である。
「そうなの」
「ま、良いでしょう。で、その紅さんという人はご親戚か何かですか?」
「いいえ、ただの友達よ。一週間後に韓国旅行に行くの。それで、打ち合わせがあって連絡を取ったんだけど」
「既読が付かない状態だと?」
富澤婦人はコクリと頷く。
「OK. 分かりました。取り敢えず、その森下衆男邸から当たってみます」
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「宜しくね」
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「邪魔者は居なくなった。ふっふっふ。さぁ、百人の栄一さん、私の手元へ。あれ?」
机の上にあった百万円の束がなくなった事に今頃になって気づいた長四郎。
「おのれ、ババァ!!」
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