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第弐拾参話-会長

会長-16

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「ふっふ~ん」
 鼻歌を歌いながら、校門から出て来る栗手に「くりぃ~てぇ~君!」と呼び止める長四郎。
「探偵さんじゃないですか! 僕に用ですか?」
「そう、大事な用があるの」
 長四郎の背後から、ひょっこり顔を出しながら答える燐。
「あ、この前の変蛇内高校の子」
「取り敢えず、付いて来てくれる? これから塾とかでなければ」
「分かりました。じゃあ、行きましょう」
 栗手は二人を連れて最寄り駅近くのスタバへと来た。
「僕に聞きたい事って、何ですか?」栗手が用件を尋ねると「まどろっこしいから、はっきり言うけど。野古君を殺して兄貴の仇を討って、どんな気分?」長四郎はストレートな質問をぶつける。
「はっきりしてますね」平然を装ってはいるが、顔を引きつらせている栗手。
「で? どうなの」長四郎は身を乗り出して、目の前に座る栗手に詰め寄って感想を求める。
「僕が殺したって言う証拠はあるんですか?」
「ううん。ないよ」自信満々に答える長四郎に「おいっ」とツッコミを入れる燐。
「それで、良くも僕が野古さんを殺したって言えますね」
「そうでしょ。そうでしょ。でも、動機は充分だよ」
「動機ですか?」
「君のお兄さん、一年前に事故死してるよね」
「ええ、そうです」
「しかも、生徒会主催の合宿でね」
「探偵さん。回りくどい言い方はやめてください。僕の兄は、野古さんに殺されたからその復讐の為に殺害した。それが動機って事ですか?」
「うん、そうだよ。でも、君のお兄さんを殺したのが野古君かどうかまでは、分からないままかなぁ~」
「ダメじゃないですか」
「そうなんだよ。ダメなんだよ。だからさ、ここは手を組まない?」
「はぁ~ あんた、何言ってんのよ!!」
 長四郎の思わぬ提案にすぐ反応したのは、燐であった。
「どうよ?」
「僕が犯人である前提で話されるのは尺ですが、兄の事件には家族全員、納得していないんですよ。良いでしょう。手を組みましょう」
「交渉成立。で、その協力者にもう一人、加えたい」
「誰です」
「付都先生」
「付都先生?」
 長四郎の提案に眉をひそめる栗手と燐。
「あの人だったら、最高の協力者になるんじゃないかな」
 長四郎のその言葉に燐は例の写真の事を思い出し、付都を仲間に加えることに否定はしなかった。
「協力者になってくれるか。明日、聞いてみますね」
「宜しく」長四郎は栗手に一礼する。
「こちらこそ宜しくお願い致します」栗手もまた長四郎に一礼する。
 そんな男二人を見て、奇妙な関係になったなと燐は思った。
 一方、一川警部と絢巡査長の二人は付都の身辺調査をしていた。
 学校の勤務が終わると、近くのスーパーで総菜品を購入し最寄り駅に向かいそのまま電車に乗り、自宅へと帰宅する。このルーティーンを繰り返していた。
「特に代わり映えのない感じですね」
 絢巡査長は、付都が住むマンションを見上げながら一川警部に話し掛ける。
「うん」とだけ答える一川警部。
 一川警部は頭をペチペチと叩きながら、マンションを眺める。
「何か、気になる事でも?」普段の一川警部と違うと思い、質問した。
「いやぁ~ 先生が協力するって事は、一年前の事件の真相を知っとうやないかなと思ったけん」
「そうですね。でも、どう切り出して良いか」
「そうやねぇ~」
 すると、一川警部と絢巡査長のスマホにメッセージが入る。
「これで、先生とお近づきになれるばい」
「でも、危険な賭けでもあるんで監視は強化しましょう」
「そうやね。じゃあ、そっちは絢ちゃんに任せるばい」
 こうして、命捜班の二人も長四郎の提案に乗ることにした。
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