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第弐拾参話-会長
会長-9
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長四郎達三人は、埼玉県の山中にあるキャンプ場に来ていた。
「う~ん。空気が東京とは段違いだな」
長四郎は身体を伸ばしながらそう言うと、「同意見です」とこれまた絢巡査長も答えながら身体を伸ばす。
「ほら、二人共。行くばい」
一川警部にそう言われた二人は「はーい」と返事をし、一川警部に続いてキャンプ場に入っていく。
死体が発見された川に着いた三人。
「結構、歩きましたね」
絢巡査長は、自身のすらりと伸びる長い脚をマッサージしながら言う。
死体が発見された川までキャンプ場から、徒歩30分の距離の所であった。
しかも、山道を歩くのでかなりしんどい思いをしてここまで来た。
「そうだなぁ~」
「若い子らについていけん。あたしはここで座って休憩しとうから、長さんと絢ちゃんで捜査してきて」一川警部は近くの石の上に座る。
「うっす。じゃあ、絢ちゃん。行こうか」
「はい」
二人は死体があった場所まで移動し、捜査を始める。
「流石に一年も前の事件ですから、何か見つかりそうもありませんよね」
「そうだな。と言いたいところだが、沢口靖子なら「そんな事ない」とか言いながら本職の人達でも使わない機械使い始めて、何かしだすんだよ」
「はぁ」
長四郎の言っている意味が分からない絢巡査長は適当に相槌して誤魔化すのだった。
「ま、とは言っても俺は沢口靖子じゃないし、何か見つけられれば良いんだけどな」
周辺をきょろきょろと見回しながら、事件に繋がりそうなものを探す。
一時間経過しても何も見つからないので、ちょっと不貞腐れ始める長四郎。
絢巡査長ももう帰りたいそう思っていた時、「あの、何か落とされましたか?」と声を掛けられ振り向くと、川釣りをしていたであろう中年男性が声を掛けてきた。
「いえ、そういうわけではないので。地元の方ですか?」
「ええ、まぁ」
「私、警視庁捜査一課の刑事なんですけど」と警察手帳を提示し「一年前にここで死亡事故あったんですけど、覚えていらっしゃいますか?」と質問する。
「それならよく覚えている。だって、俺が第一発見者だから。でも、あれは事故で片が付いたんじゃなかったけ?」
「捜査上の事なので、あまり言えませんが別の事件と関係があるかもしれないので再捜査という形で調べているんです」
「ああ、そう言う事。正直言うけど、あれが事故だと俺は思っていないんだよね」
「というのは?」
「俺がここで死体を発見した時さ、死体が浮いていたとかじゃないんだよ。今、あのお兄さんが立っているあの辺りに倒れて居てさ」と長四郎の方を指差しながら、絢巡査長に説明する中年男性は話を続ける。
「それで、見つけた時すぐに呼吸があるか確認するじゃない」
「そうですね」
「俯けで倒れてたから仰向けにしてさ確認したんだけど、そん時の服の濡れ具合が酷かったんだよ」
「濡れ具合ですか?」
「そう。川辺に倒れていたとはいえ、あそこまで濡れるかねって思ったんだよ。上半身は川辺に乗っかっていたからね。雨でもなかったから、余計、気になっちゃって」
「それは当時、警察に言われましたか?」
「うん、言ったよ」
「分かりました。ありがとうございました」
「いいえ」
中年男性に礼を言い、絢巡査長は長四郎の元に駆け寄る。
「長さん。面白い話聞けましたよ」
「え、どんな?」
「帰りの車の中で話しますから、帰りましょう」と絢巡査長は踵を返し、帰路に着こうとする。
長四郎もそれに続くのだが、勿体ぶらず教えてくれれば良いのにと思いながら歩を進めるのだった。
「う~ん。空気が東京とは段違いだな」
長四郎は身体を伸ばしながらそう言うと、「同意見です」とこれまた絢巡査長も答えながら身体を伸ばす。
「ほら、二人共。行くばい」
一川警部にそう言われた二人は「はーい」と返事をし、一川警部に続いてキャンプ場に入っていく。
死体が発見された川に着いた三人。
「結構、歩きましたね」
絢巡査長は、自身のすらりと伸びる長い脚をマッサージしながら言う。
死体が発見された川までキャンプ場から、徒歩30分の距離の所であった。
しかも、山道を歩くのでかなりしんどい思いをしてここまで来た。
「そうだなぁ~」
「若い子らについていけん。あたしはここで座って休憩しとうから、長さんと絢ちゃんで捜査してきて」一川警部は近くの石の上に座る。
「うっす。じゃあ、絢ちゃん。行こうか」
「はい」
二人は死体があった場所まで移動し、捜査を始める。
「流石に一年も前の事件ですから、何か見つかりそうもありませんよね」
「そうだな。と言いたいところだが、沢口靖子なら「そんな事ない」とか言いながら本職の人達でも使わない機械使い始めて、何かしだすんだよ」
「はぁ」
長四郎の言っている意味が分からない絢巡査長は適当に相槌して誤魔化すのだった。
「ま、とは言っても俺は沢口靖子じゃないし、何か見つけられれば良いんだけどな」
周辺をきょろきょろと見回しながら、事件に繋がりそうなものを探す。
一時間経過しても何も見つからないので、ちょっと不貞腐れ始める長四郎。
絢巡査長ももう帰りたいそう思っていた時、「あの、何か落とされましたか?」と声を掛けられ振り向くと、川釣りをしていたであろう中年男性が声を掛けてきた。
「いえ、そういうわけではないので。地元の方ですか?」
「ええ、まぁ」
「私、警視庁捜査一課の刑事なんですけど」と警察手帳を提示し「一年前にここで死亡事故あったんですけど、覚えていらっしゃいますか?」と質問する。
「それならよく覚えている。だって、俺が第一発見者だから。でも、あれは事故で片が付いたんじゃなかったけ?」
「捜査上の事なので、あまり言えませんが別の事件と関係があるかもしれないので再捜査という形で調べているんです」
「ああ、そう言う事。正直言うけど、あれが事故だと俺は思っていないんだよね」
「というのは?」
「俺がここで死体を発見した時さ、死体が浮いていたとかじゃないんだよ。今、あのお兄さんが立っているあの辺りに倒れて居てさ」と長四郎の方を指差しながら、絢巡査長に説明する中年男性は話を続ける。
「それで、見つけた時すぐに呼吸があるか確認するじゃない」
「そうですね」
「俯けで倒れてたから仰向けにしてさ確認したんだけど、そん時の服の濡れ具合が酷かったんだよ」
「濡れ具合ですか?」
「そう。川辺に倒れていたとはいえ、あそこまで濡れるかねって思ったんだよ。上半身は川辺に乗っかっていたからね。雨でもなかったから、余計、気になっちゃって」
「それは当時、警察に言われましたか?」
「うん、言ったよ」
「分かりました。ありがとうございました」
「いいえ」
中年男性に礼を言い、絢巡査長は長四郎の元に駆け寄る。
「長さん。面白い話聞けましたよ」
「え、どんな?」
「帰りの車の中で話しますから、帰りましょう」と絢巡査長は踵を返し、帰路に着こうとする。
長四郎もそれに続くのだが、勿体ぶらず教えてくれれば良いのにと思いながら歩を進めるのだった。
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