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第拾玖話-有名

有名-20

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 夢川苺は逮捕され、世間は嬉々としてそのニュースに食いついた。
 そして、狙われていた澤村美雪の仕事は事件の取材と言う本人にとってはちっとも嬉しくない仕事が増えて困っているようであった。
 また、この事件を解決した警察の評価も上がったのだが、その恩恵を受けない人間が1人居た。
「あー久々の肉体労働したから疲れたぁ~」
 長四郎は天井を見ながらそうぼやく。
「あんた、少し格闘しただけじゃん」と燐が嫌味を言う。
「失礼しちゃうわ。俺は頭脳派なの」
「何が頭脳派よ。ちっとも、頭脳働かせてないじゃん」
「何も知らないくせに失礼しちゃうよ」
 長四郎はやれやれ感を出しながら、珈琲に口をつける。
「にしても、あの夢川苺って結構、策士だよね。数々の男を手玉に取って、顎で使うんだもん」
「そうでもないんじゃね。連携が取れていないのが原因で関係のない栗栖さんが殺されたんだから。それをもって策士と言うのかは分からんけど」
「そうね。でも、気に食わないからって人まで殺させる? 普通」
「それが夢川苺っていう人間なんでしょっ」長四郎は椅子から立ち上がるとテレビをつける。
 午後のワイドショーが映り、夢川苺のニュースが流れていた。
「ちっ!」
 舌打ちをしてすぐにドラマがやっているチャンネルへと変える。
「このニュース、いつまで続くんだろう?」
 燐は不服そうに言った。
 澤村美雪の隣で見えない追跡者に怯えていたのを見ていたので、面白おかしく騒ぎ立てるニュースが不快なのだ。
「人の噂も七十五日。いずれは、消えるよ」
「そうだと良いけど・・・・・・」
 燐はそう言いながら、窓から見える青空を眺め澤村美雪の心が癒えるのを心の中で祈るのであった。

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