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第拾玖話-有名

有名-18

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 事務所へと移動した長四郎と燐は、裏切者の調査へと乗り出した。
「ラモちゃんはどこに裏切者が居ると思う?」
 長四郎は隣を歩く燐にそう話し掛ける。
「何で私にそういう事聞くわけ? 自分で考えなさいよ」
「冷たいねぇ~」
「名探偵が売りなくせによく言うわ」
「俺、名探偵です! っていうのを謳い文句していないもん」
「あーそうですか」
 そんな会話をしている2人の前から電話中の男が歩いてきた。
「えっ! もう一度、GPSを仕掛けるんですか!!」
 すれ違いざまに、そんな間抜けな会話が聞こえてきた。
「ラモちゃん」
「うん」
 2人は踵を返して、電話を続ける男の肩をポンポンっと叩く。
「あ、すいません。またかけ直します」男は電話相手にそう伝え通話を終了して、長四郎達の方を向いて応対する。
「何でしょうか?」
「失礼ですが、誰のスマホにGPSを仕掛けるんですか?」
「え? ああ、弊社所属のお笑い芸人のドッキリ企画に・・・・・・」
 男は目を右往左往しながら答える。
「そうですか。それでどの芸人さんですか?」
 燐は嬉しそうな顔をしながら、廊下に飾っている所属タレント達の顔写真を見ながら質問する。
「それは・・・・・・ですねぇ~」少し考えたの後、語りだした。
「ここに飾っていないタレントです」
「そうですか。てっきり、澤村美雪のマネージャー松坂さんのスマホに仕掛けるのかと思いましたよ」長四郎はしたり顔でそう言うと男は愛想笑いで誤魔化す。
「あまりにもタイミングよくGPSがなんちゃらかんちゃらという話が聞こえてきたのでラッキーだなと思っていたんですよ」
「そ、そうですか。では、失礼します」
 男が立ち去ろうとした時、「待っていてください!」と言いながら長四郎は足早に男の前に立ちはだかる。
「どうしてですか?」
「疑いを晴らすと思って。ご協力お願い致します」
 長四郎は男に頭を下げて願い出る。
「私からもお願いします」燐もまた頭を下げて願い出る。
「それは・・・・・・困ります」
「そうですか。では、仕方ないですね。警察に頼んで令状取ってもらうとしますか? 名前、教えてください」
 長四郎がそう言った瞬間、男は長四郎を思いっきり突き飛ばして血相を変えた顔で走って逃げ出した。
「ちょっと! 逃げられちゃったじゃん!!」
「追えよ!!」
 燐の文句をはじき返すように、指示を出す。
「分かった!!!」
 燐はすぐさま男を追いかけ、あっさりと捕まえ長四郎の元へと引き出した。
「何で逃げ出したんすか?」
 痛めた腰を擦りながら男に問いかける。
「こ、殺されるんだ。ゲルダムの奴らに」
『ゲルダム?』2人は聞きなれない名前に首を傾げると「栗栖さんを殺した犯人グループの名前ばい」一川警部が答えながら姿を現した。
「一川さん、来たんすか?」
「おう、絢ちゃんはまだ来とらんようやね? で、そん人が松坂さんのスマホにGPSを仕掛けた人?」
「えらい、察しが良いですね」関心する長四郎に「まぁねぇ~」と答える一川警部。
「じゃあ、あんたには署の方で詳しい話を聞かせてもらおうかね」
 一川警部はそう言って男を立たせると、乗ってきた覆面パトカーに放り込む。
「それで、長さん。これからどうすると?」
「そうすね。ここまで来たら本丸に仕掛けますか」
「了解。じゃあ、こいつを連行してくるけん。戻ってきたら絢ちゃんと会議しようか」
「はい」
 長四郎の返事を聞くと同時に車に乗り込み、覆面パトカーを走らせるのだった。
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