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第拾漆話-彼氏
彼氏-1
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熱海 長四郎はその日、不倫調査結果の報告書を作成していた。
思い出せば、今回の依頼は簡単なもののはずであった。
依頼人は、専業主婦の30歳女性。
旦那の浮気調査を依頼しにきた。話を聞く限りでは、旦那の帰りが以前より遅くなり家を出る時には無い匂いを服につけて帰って来ると言うのだ。
ここまで聞くと、9割近く旦那が浮気しているように思えた長四郎は依頼を引き受けることにした。
そして、調査を開始しようと動き出した矢先、今度は旦那が依頼を申し込んできた。
土日になると、自分と距離を離すように何かに付けては用があると言って家を出て行くのだというのだ。この話を聞いた長四郎は嫁もまた浮気をしている可能性が高いなと感じた。
2件も依頼が舞い込み嬉しさ半分、大変半分といった感じで調査を開始した。
双方、顔見知りなので今まで以上に神経を使いなが調査した。結果は、夫婦の勘違いであった。
旦那は妻のプレゼントの為にフラワーアレンジメントの教室へ仕事終わりに通い、嫁は嫁で旦那の誕生日ケーキの為にケーキ教室へと通っていたのだ。
この夫婦の誕生日は1日違いらしく、今年は気合を入れて祝おうとした結果の事だったらしい。
長四郎はこの夫婦にどの様にして調査結果を報告すれば良いのか、そればかりを思案していた。
「あーダメだ。良い案が思いつかねぇ~」
埒が明かないと思った長四郎は、コーヒーブレイクすることにした。
鼻歌を唄いながらお湯を沸かしていると、事務所のドアがノックされる。
「はーい」宅急便だと思い、ドアを開けるとトラブルメーカー羅猛 燐の友人の海部 リリが立っていた。
「あ、ラモちゃんは来てないよ」燐が不在であることを告げドアを閉めようとすると、「あ、違います!」リリはドアを引っ張って閉めるのを阻止する。
「もしかして・・・・・・」
「依頼ですっ! お願いします!!」
あまりにも切迫した感じで言ってくるものだから、長四郎も「ど、どうぞ」と言って中に招き入れた。
「で、依頼って何?」
長四郎はカップにお湯を注ぎコーヒー豆をドリップさせながら、用件を尋ねた。
「実は、この人について調べてもらいたいんです」
リリはそう言って、机の上にスマホを置いた。
「どれどれ」
コーヒーが入った2つのマグカップを机に置きながら、スマホの写真を確認した。
そこには、今風の塩顔イケメンとリリが顔を寄せ合いながら写っている写真であった。
「ああ、彼氏の浮気調査ね」
「違います」リリに即座に否定され肩をガクッと落とす長四郎。
「違うのね。じゃあ、何なの?」
「素行調査って言うんですか? それをお願いしたいんです」
「素行調査とは珍しいね。そんなに怪しい人なの?」
「私はそうじゃないと思っているんですけど、燐が・・・・・・」
結局の原因は燐だという事で、長四郎は心の中で深い溜息をつく。
「ラモちゃんがね。何て言われたの?」
「彼氏って、詐欺師なんじゃないのって」
それを聞いて、「要らぬ事を言いやがって」と小声で長四郎は呟いた。
「それで、彼の無実を証明できるのは探偵さんしかないと思って来たんです」
「そういう事ね。でもさ、依頼を出すって事は少なからず君自身も彼の疑っているんじゃないの?」
長四郎のその問いかけに少しムッとしながら、「違います。少なくとも私は彼を信用しているからこそ、探偵さんに依頼を出せるんです!」と鼻の穴を大きくしながら答えた。
「さ、左様ですか。じゃ、彼の情報を教えてもらえる?」
そこから、事細かにリリの彼氏の個人情報を聞き出すのであった。
思い出せば、今回の依頼は簡単なもののはずであった。
依頼人は、専業主婦の30歳女性。
旦那の浮気調査を依頼しにきた。話を聞く限りでは、旦那の帰りが以前より遅くなり家を出る時には無い匂いを服につけて帰って来ると言うのだ。
ここまで聞くと、9割近く旦那が浮気しているように思えた長四郎は依頼を引き受けることにした。
そして、調査を開始しようと動き出した矢先、今度は旦那が依頼を申し込んできた。
土日になると、自分と距離を離すように何かに付けては用があると言って家を出て行くのだというのだ。この話を聞いた長四郎は嫁もまた浮気をしている可能性が高いなと感じた。
2件も依頼が舞い込み嬉しさ半分、大変半分といった感じで調査を開始した。
双方、顔見知りなので今まで以上に神経を使いなが調査した。結果は、夫婦の勘違いであった。
旦那は妻のプレゼントの為にフラワーアレンジメントの教室へ仕事終わりに通い、嫁は嫁で旦那の誕生日ケーキの為にケーキ教室へと通っていたのだ。
この夫婦の誕生日は1日違いらしく、今年は気合を入れて祝おうとした結果の事だったらしい。
長四郎はこの夫婦にどの様にして調査結果を報告すれば良いのか、そればかりを思案していた。
「あーダメだ。良い案が思いつかねぇ~」
埒が明かないと思った長四郎は、コーヒーブレイクすることにした。
鼻歌を唄いながらお湯を沸かしていると、事務所のドアがノックされる。
「はーい」宅急便だと思い、ドアを開けるとトラブルメーカー羅猛 燐の友人の海部 リリが立っていた。
「あ、ラモちゃんは来てないよ」燐が不在であることを告げドアを閉めようとすると、「あ、違います!」リリはドアを引っ張って閉めるのを阻止する。
「もしかして・・・・・・」
「依頼ですっ! お願いします!!」
あまりにも切迫した感じで言ってくるものだから、長四郎も「ど、どうぞ」と言って中に招き入れた。
「で、依頼って何?」
長四郎はカップにお湯を注ぎコーヒー豆をドリップさせながら、用件を尋ねた。
「実は、この人について調べてもらいたいんです」
リリはそう言って、机の上にスマホを置いた。
「どれどれ」
コーヒーが入った2つのマグカップを机に置きながら、スマホの写真を確認した。
そこには、今風の塩顔イケメンとリリが顔を寄せ合いながら写っている写真であった。
「ああ、彼氏の浮気調査ね」
「違います」リリに即座に否定され肩をガクッと落とす長四郎。
「違うのね。じゃあ、何なの?」
「素行調査って言うんですか? それをお願いしたいんです」
「素行調査とは珍しいね。そんなに怪しい人なの?」
「私はそうじゃないと思っているんですけど、燐が・・・・・・」
結局の原因は燐だという事で、長四郎は心の中で深い溜息をつく。
「ラモちゃんがね。何て言われたの?」
「彼氏って、詐欺師なんじゃないのって」
それを聞いて、「要らぬ事を言いやがって」と小声で長四郎は呟いた。
「それで、彼の無実を証明できるのは探偵さんしかないと思って来たんです」
「そういう事ね。でもさ、依頼を出すって事は少なからず君自身も彼の疑っているんじゃないの?」
長四郎のその問いかけに少しムッとしながら、「違います。少なくとも私は彼を信用しているからこそ、探偵さんに依頼を出せるんです!」と鼻の穴を大きくしながら答えた。
「さ、左様ですか。じゃ、彼の情報を教えてもらえる?」
そこから、事細かにリリの彼氏の個人情報を聞き出すのであった。
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