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第拾肆話-希望

希望-9

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「お待たせ」
 絢巡査長が2人に声を掛けると、『あ、来た』と二重唱で答える。
「あの店にSUITOがあるの?」
「SUITO?」燐が首を傾げる。
「円柱の事だろ。絢ちゃんに送った物はあの店の中にある」
 長四郎はそう言って、店を指差す。
 店は相変わらず、ひっきりなしに客が入り続ける。
「あの店内で、変な動くことは出来ないですよね」
「そうね」長四郎は絢巡査長の言葉に、退屈そうに返答した。
「一番は、SUITOを他の客に触らせない事じゃない?」
「ラモちゃんの言う通り。私がSUITOを回収して来ます」
「いってらっしゃーい」
 長四郎は手を振って、絢巡査長を見送る。
「私達は捜索を続ける?」
「いや、犯人の仲間が見張っているかもしれないから。そいつを見つける」
「見張っている奴って」
 燐は周囲を見渡すが、特に怪しそうな人物は見られない。
「どこにも居なさそうだけど」
「そう思うんだったら、それで良いんじゃない?」
 長四郎が言うや否や、燐の踵が長四郎の足の甲を思いっきり踏みつけられる。
「痛っ!」
「ざまぁないわ」
 涙目の長四郎は足の甲を抑えて、ケンケン飛びをする。
「ラモちゃん、何かあったの?」
 SUITOが入った紙袋を携えた絢巡査長が燐に話しかける。
「いや、実はかくかくしかじかで」
「かくかくしかじかで、こうなったって訳ね」
「そうなんです」
「かくかくしかじかで会話を成立させるなよな」
 長四郎は痛みに堪え、ひねり出すように女性陣に話しかける。
「そんな事はどうでも良いの。それより、それ持ち出して良かったんですか?」
「うん。起爆しない方法を教えてもらったから」
「へぇ~」
 燐が感心していると、「おい、あまりそういう話はしないでくれ。どこかで聞かれているかもしれないからな」と釘を刺す長四郎。
「ご、ごめん」
「長さん、監視人が居るってどういう事ですか?」
「良い質問だ。絢ちゃん。今まで発見されたSUITOは全て人混みが多い場所に置かれていたろ。そんで、あそこは店だ。親切心を働かせた客がそれを店員に渡したらどうする?」
「あ、そうか。あそこにわざと置いていたって事は、そこが、一番効き目があるって事か!」
 燐は閃いたと言わんばかりの顔で、自分の推理を披露する。
「That’s Right.もし、あそこから離れたりでもしたら意味がないし、それに勝手に誤作動でもしてみろよ。計画がおじゃんだ」
「だから、そうならないように監視人が居るってことですか?」
「そぉ、言う事」
「で、見つけたの? 監視人」
「モチの論。あそこ」
 長四郎が指を差した先には、ハンバーガーショップで電話をしながらこちらを見つめている男であった。
「見つかったみたいだね」
「見つかったみたいだね。じゃないでしょ! 捕まえるよ」
 燐が歩き出した途端、店の中に居た男が慌てた様子で退店しようとするので、燐は入り口に向かって走り出そうとするのだが、大勢の外国人観光客の団体が燐の目の前を横切り先に進めない。
「ああ、もうっ」
 通り過ぎ去った後に店を見ると男の姿は無かった。
「逃げられた!!」
 燐は頭を抱えて悔しがるのだった。
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