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第拾弐話-監禁

監禁-13

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 齋藤刑事は絢巡査長の指示のもと、表裏が勤務する病院から少し離れた所で張り込みを開始していた。
 現時刻は午前9時。
 病院の開院時間も午前9時からなのだが、張り込みを開始して1時間、表裏の姿は見ていない。
「ホントに絢巡査長の言う通り犯人なのか?」
 買ってきたあんパンを口にしながら、病院を観察する。

「長さん、この五芒星の意味は分かったんですか?」絢巡査長は地図を見ながら質問する。
「分からない。でも、こんな綺麗な五芒星が配置されているって凄くない?」
「絢さん、無視してください。昨晩からずっと同じ事言っているので」燐の忠告を受け「分かった」とだけ返事をする絢巡査長は話を続ける。
「あの一川さんの現状はどうなんですか?」
「どうなんだろ?」
「もしかして、確認してないんですか?」
「いやぁ~はっはははっ。確認していないよね、ラモちゃん」
「すいません。こっちに集中していて気を配っていませんでした」
 燐は苦しい顔をしながら、弁解する。
「気にしないで。今から確認しましょう」
「早くしなさいよ!」
 燐は長四郎の頭を叩いて、映像のセッティングをするよう促す。
「はい。一川さんが映るまで3・2・1」長四郎はカウントダウンをして、接続ボタンをクリックする。
 モニターには、椅子に縛り付けられた一川警部の姿が映る。
「あれ? 映像使いまわされている?」
 燐が項垂れた一川警部を見て、率直な感想を述べる。
「いや、違うな。一川警部の姿勢が最後に見た時とは違う」
「そうなんですか?」
「ああ。多分、一度逃げ出しそうとして再び捕まったんだろうな」
「なんで、そう言い切れるの?」燐の問いに「ただの勘です」と長四郎は鼻の穴を膨らませて自信満々に答える。
「聞いた私がバカだった」
 肩を落とす燐に、絢巡査長はそっと肩に手を置き同情する。
「にしても、場所の手掛かりになるものはないなぁ~」
「絢さん。二度目に表裏と会った時って、どういう状況だったんですか?」
「それは、二重の勤務先の近くに廃倉庫が無いかなと思って、捜索していたの。そんで気づいたら表裏の病院の前に着いて、そこで表裏から声を掛けられたの」
「そうなんですか」と返答する燐。
「そんで、表裏はどこに行っていたのか、聞いたの?」
「はい。往診に行っていたと」
「往診。往診時間って何時から何時まで?」
「えっとぉ~ごめんなさい。把握してないので、今すぐ確認します」
 絢巡査長は齋藤刑事に連絡を取る。
「もしもし、斉藤君。表裏に何か動きあった?」
「いえ、特には。ですが、姿が見えないんです」
「姿が見えない? 病院兼自宅じゃないから、逃げられたってこと?」
「そうではないと思います。患者は来ていますから」
「そう。患者は来ているんだ」絢巡査長の言葉を聞き長四郎は「別の医者が診察しているんじゃない?」そう提言する。
「もしかしたら、別の医者が診察しているのかも」
「え! ホントなんですか!!」
 電話の向こう側に居る斉藤刑事の驚いた顔が目に浮かぶくらいの驚いた反応をする。
「憶測よ。それより、午前の診察時間って、何時に終わるんだっけ?」
 絢巡査長の質問に答える為、看板に書かれていることを確かめる。
「午前の診察は12時に終了です」
「12時ね。午後の診察時間は、16時30分だから」
「あの診察時間がどうかしたんですか?」
「いいや、こっちの話だから、気にしないで。表裏が病院にいるか、確認宜しく」
 絢巡査長はそう言って、通話を終了した。
「12時から16時30分か、まぁまぁ時間あるな」
「ええ」絢巡査長は、長四郎の意見に同意する。
「ラモちゃん。地図アプリ使って、この4時間半以内で往復できるか調べてくれない?」
「分かった。任せなさい」
 燐は地図アプリを使い病院から監禁場所とされる場所までの経路そして、所要時間を調べる。
「出来た!!」
 燐は地図にアプリで調べた結果を書き記し終え、長四郎達に見せる。
「どの場所も往復して、ギリギリの距離にあるな」
「これだと、二重も難しいですよ」
「二重の勤務先って、病院からどのくらいの距離だっけ?」
「歩いて、30分ぐらいの距離です。ここです」
 長四郎の質問に答えながら、絢巡査長は地図にある二重の勤務先に印をつける。
「おい、待てよ。これ、五芒星の中心じゃないか!」
 長四郎の言葉に、その場に居た全員の視線が地図に集まる。
「ホントだ。すごぉ~い」燐は感嘆の声を上げる。
「でも、これが分かっただけで一川さんの居場所は・・・・・・・」
「絢ちゃん、そんな事はないぜ。居場所の結論はついた」
「それで、一川さんがどこに居るの?」
 燐の質問に長四郎はニヤッと笑いこう答えた。
「この5ヶ所に、一川さんは監禁されていない」
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