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第拾話-詐欺

詐欺-2

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「何なのよ! あいつ。デレデレしちゃってさ!!」
 燐は不満を漏らしながら、廊下を歩いていると一人キョロキョロと辺りを見回しながらまるで何かに怯えているような男が燐の目の前を通り過ぎて行った。
「何、あのおっさん」燐は不思議そうにその男を見送ると、再びビラ配りの為、校庭へと出て行く。
「二年B組、メイドカフェやってまぁーす」気だるそうにビラを配る燐。
 だが、それに反して燐の可愛さからなのか、男どもが次々とビラを貰いに来る。
 中には、埼玉県春日部市から来たという35歳男性から声をかけられる始末。
 色々と根掘り葉掘り聞いて来るので、うっとおしく思っていると赤ちゃんを抱えた推定29歳の女性が助けてくれた。
 どうやらこの二人は夫婦らしく、奥さんにしっ責されながら35歳男性は連行されていった。
 その束の間、坊主頭の赤い服を着た5歳児に声をかけられるだけでなくナンパされ困っていると先程、旦那を連行した奥さんが戻って来て子供をしかりつけ、その子もまた父親同様に連行された。
 あの台風一家は、一体何だったのか。燐は気疲れしていると来客用の駐車場から、女性の悲鳴が聞こえてきた。
 燐はビラを放り投げ、来客用駐車場へ走り出す。
 現場へものの25秒程で駆けつける燐が見た物は、車横で倒れている男性と3歳児ぐらいの子供を抱きかかえている母親であった。
「どうしたんですか?」燐が母親に尋ねると「し、死体ですっ」声を震わせながら必死になって伝える。
「ホントですか!?」燐は驚きつつ母親に「お子さんを連れてこの男性が見えない所まで離れて警察が来るまで待っておいてください。私が、警察とか呼びますから」と冷静に指示を出す。
「はい。お願いします」母親は燐に軽く頭を下げてその場を後にした。
 燐は脈がないか確認し、絢巡査長に電話する。
「はい、こちら警視庁命捜班カスタマーセンターです」
 絢巡査長はオペレーター風に電話に出た。
「絢さん、事件発生です」
「場所はどこ?」
「私が通う変蛇内高校の来客用駐車場です。それと、今文化祭をやっているので警察車両が入りにくい可能性はあります」
「分かった。ありがとう。学校の先生にも警察車両が来ること伝えて。客の整理をお願いしといて」
「はい。分かりました。後、長四郎も来ているんですけど、現場を荒らさないようにしますんで、先に捜査して良いですか?」
「もう、長さん居るの?」
「偶々、来ていたんです。良いですよね?」
「うん、一川さんもOKサイン出しているから良いけど。第一発見者はラモちゃんで良いの?」
「いや、来客の親子ですね。その親子から先に話聞いときます」
「じゃあ、お願い。なるべく人は近づけないようにしてね」
「ラジャー」燐は敬礼ポーズを取りながら返事する。
「私達、今から出るから何か分かったらまたかけて」
「はい」
 そこで通話が切られた。
 ふぅーっと燐は息を吐き捜査に取り掛かる為、気合いを入れて第一発見者の元へと向かおうとする。
 すると、背後から「羅猛っ!!また、お前か!!」っと言う天敵の熱血教師の声が聞こえてきた。
 燐はどうしたものかと考えていると、天敵の横から「ラモちゃん、また事件引き寄せたの?」と吞気な長四郎の声が聞こえてきた。
「あ、来た」
「あ、来た。じゃねえよ。殺人?」長四郎がそう尋ねる横で、熱血教師は金切り声を出しながら終始、燐を怒鳴り続ける。
「そうみたい。第一発見者は親子。そんで、絢さん達にはもう連絡した」
「手際が良いね。じゃあ、バカ教師。ここに人が入らないように他の先生方と協力してね。後、客にも事件が発生したとは言わずになるべくいてもらうようにして。警察車両も来るだろうからそれの交通整理もね」
 長四郎がそう指示を出すと熱血教師は顔を真っ赤にして「何だ。貴様!! 俺に命令するな! 羅猛っ、お前がこの人を殺したんだな。今すぐ、職員室へ来い!!」と叫び散らしながら燐の腕を引っ張りながら職員室へと連行しようとする。
「助けなさいよ!!」
 ジタバタと暴れまわりながら、助けを求める燐に長四郎はボイスレコーダーを投げ渡し「頑張れよぉ~」と言い見送るのだった。
「さてと」長四郎は後から来た別の教師に事情を説明して、協力を取り付ける事に成功し第一発見者から話を聞く為、その親子を探すと現場から数十メートル離れた所の石段の上で子供抱えたまま座り身体を震わせている母親が居たので、長四郎はその母親が第一発見者と踏んで話を聞くことにした。
「あの、すいません」そう声を掛けると弱々しく「はい」そう答える母親。
 よく見たらこの母親、先程、長四郎の足を踏んずけてどこかへ去って行った子供の母親で抱きかかえられている子供も同じ子供だったが、長四郎は敢えてそこに触れは触れず死体発見時の状況について聞く。
「辛いところ申し訳ありませんが、発見時の状況について教えて頂けませんか?」
「はい。この子が駆けずり回っていたのでそれを追いかけていたら、この子があの男の人が倒れているのを見つけて。倒れていたので声を掛けても反応がなかったんです。それで揺さぶってみたら、首元に絞められたような痕があって・・・・・・・」
「もう大丈夫です」母親が言葉に詰まったタイミングで話を中断させた。
「あの私は殺していません!!」母親は長四郎に強く否定すると「分かっています。一応、確認なのですがあの男性と面識はないんですよね?」と質問すると「ありません」と即答した。
「分かりました。最後にもう一つだけ」と前置きし「不審人物とか見ませんでした? お子さんも含めて」と質問した。
「私もこの子も見てません」と返答した。
「分かりました。ありがとうございました。後、警察が来るまで待っていて頂けますか?」
「構いませんけど。あなた、警察じゃないんですか?」
「違いますよ。女子高生と共にやって来る探偵です」
 長四郎はそう答え、事件現場に戻り、カラーコーンを立てている教師に怯えている母親を保健室に通すよう指示を出して死体の状態を確認するのだった。
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