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第陸話-復讐
復讐-9
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長四郎は調査を切り上げてホテルに戻った。
1階ロビーに入ると、燐が慌てた様子で駆け寄って来た。
「どこ行っていたのよ?」
「それは秘密。そんな事より状況は?」
「うん、逃げ出したのは赤髪の垂水 被布で行方不明な状態」
「そうか。肥後さんと絢ちゃんは?」
「今、捜索しに行っている。私達はどうする?」
「そうだな。例の被害者遺族は見つかった?」
「ううん」燐は首を横に振って否定する。
「ちょっと、ここでマッテローヨ!」
「は?」
長四郎はフロントへと行きこう尋ねた。「森井さんはいらっしゃいますか?」と。
「森井なら居ると思いますけど。何か御用でしょうか?」と聞かれ「とにかく、至急会いたいんです!!」長四郎のその熱意に押され受付担当の従業員は内線で森井を呼んだ。
1分も経たないうちに森井は姿を現した。長四郎は森井を見て違和感を覚えた。
顔が変わっているというわけではないが、身に纏っている雰囲気が朝に会った森井とは違うものを感じた。
「どうされました?」
その様子は落ち着き払い、余裕さえ感じさせられるものだった。
「あ、いや」ここまできて言い訳を考えていなかったのだ。
「今朝のお礼です」
燐はそう言ってホテル内にある土産物屋で買ったであろうお菓子のセットが入った紙袋を渡す。
「そんな。当たり前のことをしたまでなので受け取れません」
「いえいえ、ご迷惑をおかけしてしまったので」長四郎も燐の作戦に乗り受け取って貰うよう仕向ける。
「そうですか。では、頂戴致します」
紙袋を受け取り森井は「では、失礼します」そう言って裏の事務所に引っ込んでいった。
「どうも、ありがとうございました」受付担当の従業員に礼を言い長四郎はフロントを離れロビーに置いてある共用のソファーに座りまたぶつぶつと何かを唱えながら考え始める。
燐も横に座り長四郎の考えが纏まるのを待っていると「わっ!!」と言う声と共に背後から抱き着かれる。
振り向くとリリであった。
「もうビックリしたぁ~」
「へへへ」無邪気な子供のような笑顔を見せるリリ。
「どうしたの?」
「いや、昨日部屋に帰ってこなかったから心配していたんだよ」
「ごめん、昨日は刑事さんの部屋で寝落ちしちゃって」
「ふ~ん」リリの表情は全てを知っているぞといった感じで燐を見る。
「な、何よ。その顔」
「い~や」不敵な笑みを浮かべながら長四郎を見る。
「ホント、何にもないから」
「そう。それならそれで良いんだけど」と言いながらリリは燐の横に座る。
「で、ここで何してんの?」そうリリに問われ、燐は今までの経緯を話した。
「そんな事があったんだぁ~」
「そうなの」
燐はふと行方が掴めずにいる詩の写真を見せようと思い、スマホの写真アプリを開いた。
長四郎が森井の家に行った後、捜査本部にて絢巡査長から提供されていたのだ。
「ねぇ、この人ホテル若しくはホテル周辺で見かけなかった?」
「詩さんじゃん!!」
「え、知っているの!?」
「知っているもなにも今日、一緒に居たから」
「噓でしょ」
「噓じゃないわよ。写真あるかな?」
リリは自分の写真アプリで詩が写り込んでいる写真を探す。
「ほらっ」
見せられた写真にはリリと一緒にピースサインしている詩の姿があった。
「これで信用した?」
「う、うん」そう返事しながら隣で未だにぶつぶつ言っている長四郎の肩を叩く燐。
だが、反応がない。その為、ひたすら叩き続けながら話を聞く燐。
「何処で知り合ったの?」
「スキューバダイビング」
「ああ、あれね。詩さんに変なところはなかった?」
「ないよ。寧ろ、一人ぼっちの私に優しくしてくれたし」
「という事は、詩さんには誰か連れが居たの?」
「いや、居ないよ。詩さんも一人だったみたい」
「そう。スキューバ終わってからどうしたの?」
「さぁ? でも、東京に住んでるって言っていたからまた会おうって連絡先は交換したけど」
「今すぐ掛けてくれ」ここで長四郎が会話に入ってきた。
「え、何で?」
『いいから早く!!』長四郎と燐の二重唱に押されリリはすぐに電話した。
「ダメ、繋がらなかった」
「どうしよう? このままじゃ第三の事件が」
「口づけいや落ち着け、ラモちゃん。その人はどういう目的でここに来たと行っていた?」
「確か、旅行だって」
「繋がらなかったと言ってな。どういう風なアナウンス流れた」
「ああ、現在電源が入っていないか、電波の届かないと所にありますって」
「最後に一つ、そのスキューバダイビングってどこの港から出るんだ?」
「ここから、歩いて30分の所にある港。そこにスキューバダイビングの教室あるから」
「分かった。ありがとう。行こう、ラモちゃん」
「え? 何処に?」
「いいからついて来い!!」
「もうっ、勝手なんだから!」
燐は長四郎の後を追い、ホテルを出て行った。
その2人の光景を見てリリは「ホント、お似合いなのに」と言いながら見送るのだった。
ホテルを出た長四郎は駐車場に走って向かう。
もしもの時を想定しておっちゃんに駐車場で待機してもらっていた。
おっちゃんはタクシーから降り、背伸びのストレッチをしていた。
「ごめんなさい。この近くにあるスキューバダイビング教室へ向かってください」
少し息を切らしながら目的地を伝えると「了解。さ、乗って」運転席に座ったおっちゃんは後部座席のドアを開ける。
長四郎が乗ったすぐ後に燐も駆け込みながら乗車する。
「よしっ、行くよ!!」おっちゃんのその言葉と共にタクシーは走り出した。
15分程、走った所で長四郎は砂浜に佇む詩の姿を見つけた
「止めてください!!」おっちゃんは急ブレーキをかけてタクシーを停車させた。
おっちゃんがドアを開けるよりも前に長四郎はドアを開けて浜辺の堤防を飛び越え下に降りて詩の元へと向かった。
その動きの華麗さはアクション俳優並みのカッコよさであった。
燐はおっちゃんに「近くで待っていて下さい」とだけ言い長四郎の後を追う。
ずぶ濡れの詩はじぃーっと海を眺めていた。
「あの、花火 詩さんですよね?」そう声を掛けると長四郎の方をゆっくりと向きながら頷く詩。
「ここで何を?」
長四郎に尋ねられた詩は海の方をこれまたゆっくりと指をさす。
その指す方向に2人が目を向けると赤髪のつまり垂水 被布が海に浮かんでいた。
「あっ!!」
長四郎は海に駆けって入り垂水を救出しようとする。
「あの人を殺したんですか?」燐は恐る恐る質問すると詩は「そう」と答えその場に崩れ落ちた。
長四郎は必死に垂水の身体を抱きかかえ海から引き揚げようとするが中々思うようにいかないところに救助用の浮き輪が長四郎の前に飛んできた。
飛んできた方を見るとおっちゃんが「それに捕まれぇぇぇぇぇ!!!」と叫びながら紐を引っ張る準備をしていた。
すぐさま浮き輪に捕まった長四郎。おっちゃんの力は凄まじく垂水を抱きかかえたままの長四郎を軽々と引き上げた。
「大丈夫か?」
「俺は大丈夫です。それより」
長四郎は垂水が呼吸しているか確認するが呼吸はしておらず、心肺停止の状態であった。
「救急車っ!!」おっちゃんが呼ぼうとした時、詩が近づいてこう言った。
「もう遅い」
「それ、どういう意味です?」心臓マッサージをの準備をしていた長四郎がその真意を尋ねる。
「この男が溺れてから10分近く経っているもの」
「貴方が殺したんですか?」
燐の質問に薄ら笑いを浮かべる詩は次のように答えた。
「ご名答。この男の仲間を殺したのも私」
その瞬間、沖縄では感じることのない冷たい風がその場に吹いた。
1階ロビーに入ると、燐が慌てた様子で駆け寄って来た。
「どこ行っていたのよ?」
「それは秘密。そんな事より状況は?」
「うん、逃げ出したのは赤髪の垂水 被布で行方不明な状態」
「そうか。肥後さんと絢ちゃんは?」
「今、捜索しに行っている。私達はどうする?」
「そうだな。例の被害者遺族は見つかった?」
「ううん」燐は首を横に振って否定する。
「ちょっと、ここでマッテローヨ!」
「は?」
長四郎はフロントへと行きこう尋ねた。「森井さんはいらっしゃいますか?」と。
「森井なら居ると思いますけど。何か御用でしょうか?」と聞かれ「とにかく、至急会いたいんです!!」長四郎のその熱意に押され受付担当の従業員は内線で森井を呼んだ。
1分も経たないうちに森井は姿を現した。長四郎は森井を見て違和感を覚えた。
顔が変わっているというわけではないが、身に纏っている雰囲気が朝に会った森井とは違うものを感じた。
「どうされました?」
その様子は落ち着き払い、余裕さえ感じさせられるものだった。
「あ、いや」ここまできて言い訳を考えていなかったのだ。
「今朝のお礼です」
燐はそう言ってホテル内にある土産物屋で買ったであろうお菓子のセットが入った紙袋を渡す。
「そんな。当たり前のことをしたまでなので受け取れません」
「いえいえ、ご迷惑をおかけしてしまったので」長四郎も燐の作戦に乗り受け取って貰うよう仕向ける。
「そうですか。では、頂戴致します」
紙袋を受け取り森井は「では、失礼します」そう言って裏の事務所に引っ込んでいった。
「どうも、ありがとうございました」受付担当の従業員に礼を言い長四郎はフロントを離れロビーに置いてある共用のソファーに座りまたぶつぶつと何かを唱えながら考え始める。
燐も横に座り長四郎の考えが纏まるのを待っていると「わっ!!」と言う声と共に背後から抱き着かれる。
振り向くとリリであった。
「もうビックリしたぁ~」
「へへへ」無邪気な子供のような笑顔を見せるリリ。
「どうしたの?」
「いや、昨日部屋に帰ってこなかったから心配していたんだよ」
「ごめん、昨日は刑事さんの部屋で寝落ちしちゃって」
「ふ~ん」リリの表情は全てを知っているぞといった感じで燐を見る。
「な、何よ。その顔」
「い~や」不敵な笑みを浮かべながら長四郎を見る。
「ホント、何にもないから」
「そう。それならそれで良いんだけど」と言いながらリリは燐の横に座る。
「で、ここで何してんの?」そうリリに問われ、燐は今までの経緯を話した。
「そんな事があったんだぁ~」
「そうなの」
燐はふと行方が掴めずにいる詩の写真を見せようと思い、スマホの写真アプリを開いた。
長四郎が森井の家に行った後、捜査本部にて絢巡査長から提供されていたのだ。
「ねぇ、この人ホテル若しくはホテル周辺で見かけなかった?」
「詩さんじゃん!!」
「え、知っているの!?」
「知っているもなにも今日、一緒に居たから」
「噓でしょ」
「噓じゃないわよ。写真あるかな?」
リリは自分の写真アプリで詩が写り込んでいる写真を探す。
「ほらっ」
見せられた写真にはリリと一緒にピースサインしている詩の姿があった。
「これで信用した?」
「う、うん」そう返事しながら隣で未だにぶつぶつ言っている長四郎の肩を叩く燐。
だが、反応がない。その為、ひたすら叩き続けながら話を聞く燐。
「何処で知り合ったの?」
「スキューバダイビング」
「ああ、あれね。詩さんに変なところはなかった?」
「ないよ。寧ろ、一人ぼっちの私に優しくしてくれたし」
「という事は、詩さんには誰か連れが居たの?」
「いや、居ないよ。詩さんも一人だったみたい」
「そう。スキューバ終わってからどうしたの?」
「さぁ? でも、東京に住んでるって言っていたからまた会おうって連絡先は交換したけど」
「今すぐ掛けてくれ」ここで長四郎が会話に入ってきた。
「え、何で?」
『いいから早く!!』長四郎と燐の二重唱に押されリリはすぐに電話した。
「ダメ、繋がらなかった」
「どうしよう? このままじゃ第三の事件が」
「口づけいや落ち着け、ラモちゃん。その人はどういう目的でここに来たと行っていた?」
「確か、旅行だって」
「繋がらなかったと言ってな。どういう風なアナウンス流れた」
「ああ、現在電源が入っていないか、電波の届かないと所にありますって」
「最後に一つ、そのスキューバダイビングってどこの港から出るんだ?」
「ここから、歩いて30分の所にある港。そこにスキューバダイビングの教室あるから」
「分かった。ありがとう。行こう、ラモちゃん」
「え? 何処に?」
「いいからついて来い!!」
「もうっ、勝手なんだから!」
燐は長四郎の後を追い、ホテルを出て行った。
その2人の光景を見てリリは「ホント、お似合いなのに」と言いながら見送るのだった。
ホテルを出た長四郎は駐車場に走って向かう。
もしもの時を想定しておっちゃんに駐車場で待機してもらっていた。
おっちゃんはタクシーから降り、背伸びのストレッチをしていた。
「ごめんなさい。この近くにあるスキューバダイビング教室へ向かってください」
少し息を切らしながら目的地を伝えると「了解。さ、乗って」運転席に座ったおっちゃんは後部座席のドアを開ける。
長四郎が乗ったすぐ後に燐も駆け込みながら乗車する。
「よしっ、行くよ!!」おっちゃんのその言葉と共にタクシーは走り出した。
15分程、走った所で長四郎は砂浜に佇む詩の姿を見つけた
「止めてください!!」おっちゃんは急ブレーキをかけてタクシーを停車させた。
おっちゃんがドアを開けるよりも前に長四郎はドアを開けて浜辺の堤防を飛び越え下に降りて詩の元へと向かった。
その動きの華麗さはアクション俳優並みのカッコよさであった。
燐はおっちゃんに「近くで待っていて下さい」とだけ言い長四郎の後を追う。
ずぶ濡れの詩はじぃーっと海を眺めていた。
「あの、花火 詩さんですよね?」そう声を掛けると長四郎の方をゆっくりと向きながら頷く詩。
「ここで何を?」
長四郎に尋ねられた詩は海の方をこれまたゆっくりと指をさす。
その指す方向に2人が目を向けると赤髪のつまり垂水 被布が海に浮かんでいた。
「あっ!!」
長四郎は海に駆けって入り垂水を救出しようとする。
「あの人を殺したんですか?」燐は恐る恐る質問すると詩は「そう」と答えその場に崩れ落ちた。
長四郎は必死に垂水の身体を抱きかかえ海から引き揚げようとするが中々思うようにいかないところに救助用の浮き輪が長四郎の前に飛んできた。
飛んできた方を見るとおっちゃんが「それに捕まれぇぇぇぇぇ!!!」と叫びながら紐を引っ張る準備をしていた。
すぐさま浮き輪に捕まった長四郎。おっちゃんの力は凄まじく垂水を抱きかかえたままの長四郎を軽々と引き上げた。
「大丈夫か?」
「俺は大丈夫です。それより」
長四郎は垂水が呼吸しているか確認するが呼吸はしておらず、心肺停止の状態であった。
「救急車っ!!」おっちゃんが呼ぼうとした時、詩が近づいてこう言った。
「もう遅い」
「それ、どういう意味です?」心臓マッサージをの準備をしていた長四郎がその真意を尋ねる。
「この男が溺れてから10分近く経っているもの」
「貴方が殺したんですか?」
燐の質問に薄ら笑いを浮かべる詩は次のように答えた。
「ご名答。この男の仲間を殺したのも私」
その瞬間、沖縄では感じることのない冷たい風がその場に吹いた。
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