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第伍話-支援

支援-13

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 燐は今、悶々としていた。
 何故なら、退屈な授業を受けていたからだ。
 成績優秀者の燐は学園の理事長と直談判して、成績を落とさず有名大学への進学する事を条件に授業免除を許可させた。
 だが、他の生徒の手前それを許さない熱血教師の生徒指導が居た。
 燐も生徒指導の対象となり、長四郎と調査に出ようとした矢先にその生徒指導から電話が掛かってきて呼び出しを受けた。
 学校に赴いた燐は、勿論のこと理事長の許可を取っている旨を伝えたのだが、自分が絶対正義マンの熱血教師には聞き入れて貰えずこうして今に至るのだ。
 今頃、長四郎は悠々自適に捜査していると思うと腹立たしくてしかなかった。
 一方その頃、長四郎は林野が残していたという証拠品を探す為、絢巡査長を伴って林野が住んでいた部屋へと来ていた。
「長さん、どうですか? 何かありそうですか?」
 絢巡査長はキッチンの戸棚を捜索しながら、パソコン周辺のデスクを捜索する長四郎に話しかける。
「いや、ないわ~」
 長四郎は返答しながら、机のモニターの多さに驚く。
 ふと足元に置いてあるゴミ箱に目をやると、証券会社の封筒を見つける。
 それをゴミ箱から拾い上げ中身を確認すると、新規投資のお知らせと共に節税対策の講座のお知らせであった。
 多分、林野という人物は投資で莫大な金を稼いでいたに違いないと踏んだ長四郎。
「絢ちゃん。林野さんって、これで得た金で施設に募金していたのかな?」
 長四郎はそう言って、証券会社の封筒を見せる。
「かもしれないですね。で、これが証拠何ですか?」
「いや、違う」
「ちょっと、真面目にやってください」
「へいへい」
 長四郎は気だるそうに、自分の持ち場へと戻る。
 そして、燐はイライラがピークに達していた。
 貧乏ゆすりがドンドンと音を立て、授業妨害する段階まできていた。
「羅猛さん? うるさいんだけど」
 今の時間担当する英語教師に注意を受ける燐。
「あ、すいません」と謝る燐であったが、貧乏ゆすりを辞めることはなかった。
 そうしていると、校内放送が流れた。
“羅猛燐、直ちに職員室に来るように ”と。
 その声の主が例の熱血教師だったので、燐は眉間に皴を寄せたまま授業を抜け職員室へと向かった。
「失礼しまぁ~す」
 気だるそうに燐はドアを開けると、燐に負けず劣らずの鬼の形相で熱血教師は話しかけてきた。
「羅猛!! お前、学校サボって探偵ごっこをしていたのか!!!」
「探偵ごっこじゃありません!!」
 バチバチにメンチを切りあう二人。
「あ、あの先生。私がいけないんです」
 燐は声がした方を見ると、児童養護施設の職員の位置 洋子が居た。
「貴方は、黙っててください!! 私は、生徒指導をしているんです!!!」
 洋子を怒鳴りつける熱血教師。
「す、すいません」洋子は素直に謝る。
 洋子のその姿を見て我慢の限界に来た燐は、熱血教師の金的を思い切り蹴り上げた。
 瞬間、熱血教師は白眼を向きその場に卒倒した。
「ふぅ~」
 燐は静かに息を吐く。
「大丈夫なんですか?」
 洋子は、燐の学校における立場が危うくなるんじゃないかと心配する。
「大丈夫ですよ。私、理事長とは仲良いんで。それより、今日はどうしたんですか?」
「あ、羅猛さんに渡したいものがあって・・・・・・」
 洋子は燐に1枚のmicro SDカードを渡す。
「これは?」
「実は、林野さんが私にくれたプレゼントの中にこれが入っていたんです。
羅猛さんが定期的に報告してくれていたので、自分にもできる事がないかと思って探していたらこれが」
「ありがとうございます!!」
 燐は学校に来て良かったという気持ちが、少し芽生えていた。
「これ、事件解決の証拠になりますか?」
「はい!」
 燐は元気よく返事をする。
「じゃあ、宜しくお願いします」
 洋子は燐に一礼して、職員室を去った。
「よぉ~しっ!!」
 燐はそのままの勢いで、学校を抜け出し長四郎の元へ向かった。
 長四郎達は証拠品を見つける事ができず、取り敢えず警視庁本部に戻る所であった。
「結局、見つかりませんでしたね」
「ああ」
 長四郎は今、頭の中を張り巡らせて林野が残した証の在処を必死に張り巡らせていた。
 すると、絢巡査長のスマホに着信が入る。
「もしもし、ラモちゃん? 学校じゃなかったの?」
 そう言いながら、どういうことなのかと言った顔で長四郎を見る。
 また面倒ごとがと長四郎は黙って、絢巡査長の反応を伺っていると顔をニンマリとさせる。
「じゃ、警視庁本部で落ち合おう」
 そこで通話を切った絢巡査長は、長四郎に報告する。
「ラモちゃんが、証拠品を確保したそうです」
「うそぉ~ん」
 長四郎と絢巡査長は、急ぎ足で警視庁本部へと帰った。
 命捜班の部屋に入ると、既に燐が来ていた。
「お帰りなさい」
「お帰りなさいじゃねぇよ。
学校に呼び出されてたんじゃないの」
「ふふっ」
 勝ち誇った顔をする燐。
「これを見なさい」
 燐は、長四郎と絢巡査長にモニターを見せる。
 そこには、源の横領する際に会社に提出した書類や自分の口座に入送金された履歴が映っていた。
「これ、どこで見つけたの?」
 絢巡査長が、この証拠の出所を燐に尋ねる。
「これは」
「この人がくれたんだろ?」
 長四郎はそう言って、部屋で見つけた林野と洋子のツーショットの写真を燐に見せた。
「あ、洋子さんだ。2人、付き合ってたんだ」
「知らなかったのかよ」
 呆れる長四郎を他所に、絢巡査長は捜査二課の刑事を呼ぶ。
「これで、源を追い詰めることが出来ますね」
 絢巡査長は、意気揚々と喋る。
「そだねー」
 長四郎は気のない返事をしながら、資料に目を通す。
「おっ、皆、集まっとったとね」一川警部が部屋に入ってきた。
「あ、一川さん。実はかくかくしかじか」
 絢巡査長は、燐が源の横領した証拠を見つけてきた事を報告した。
「大したもんやね。ラモちゃん」
 一川警部は燐の功績を素直に褒める。
「で、屋上の方はどうでした?」
 屋上の下足痕から、争った痕跡がないかの調査結果を長四郎は質問した。
「それが、あったんよ。なんで、見逃し取ったんやろなぁ」
「自殺と判断して、碌に捜査しなかった結果なだけですよ」
「長さんは手厳しいかねぇ~」
「ねぇ、これで源を林野さん殺害の容疑で源を逮捕できるわね」
「それはどうかね? ラモちゃん」
「あんた、まだ源が犯人じゃないと思っているわけ?」
 燐はいい加減、その事実を認めろと言わんばかりの顔をする。
「ま、調べてみればわかるさ」
 長四郎はそう言うと、一人部屋を出ていった。
「私が先に証拠品を見つけて、不満なのかな」
 そう言う燐に一川警部は、こう言うのだった。
「ラモちゃんは、長さんのことをまだまだ知らんね」と。
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