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第伍話-支援

支援-9

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 夫人の家で長四郎と燐は、事件の整理をしていた。
「では、状況を整理すると次のようになると」
 燐はB3の紙に現時点まで、判明している事を書いていく。
1.事件現場には、林野さん以外の下足痕が残されていた。

2.事件現場のビルには、2年前まで東の事務所が入っていた。

3.フリーの記者・東が可愛い私に惚れて、周辺を嗅ぎまわっている。

4.林野さんが勤務していた会社は、横領をしたと思っておらず真犯人を調査中。

5.林野さんは、同僚の人達特に源から嫌われていた。

6.新事実、横領したとされる金は林野さんの口座から源が所有する口座へと移されていた。
「こんなところかな」
 一仕事終えた感を出しながら、燐はペンを置く。
 長四郎はそのペンを取り、こう書き連ねる。
7.ラモちゃんは、安直に源が犯人だと思っている。

8.浅はかで、愚かで、どうしようもない女です(笑)
「ちょっ! 何、書いているの!!」
「え? ラモちゃんが考えていることを代筆しただけだけど」
 悪びれる様子もなく、長四郎は笑顔で答える。
 なんなら、親指を立てサムズアップする始末。
「チェストォォォォォォォォ!!!」
 燐の垂直チョップがお見舞いされる。
「グボッ!!!」
 長四郎はそのまま床に倒れる。
「お見事ぉ~」
 夫人は拍手しながら、燐の華麗な技に感心する。
「婆さん、感心してんじゃねぇよ。痛てて」
 長四郎は頭を抑えながら、起き上がる。
「それで、あんたは源が犯人じゃないって思うわけ?」
「それは・・・・・・」
「それは」
「勘だ!!」
 長四郎はきっぱりと答え、ガクッと肩を落とす燐と夫人。
「何、その王道的な答えは・・・・・・」
 燐は顔を手で覆う。
「まぁ、勘とは言ったが根拠はある。一番、気になるのは殺害現場だ」
「殺害現場?」
「そう、出木杉と思わんか? あの場所は、東の事務所が入っていたビルだぜ。
東に目を向けるようにしているとしか、思えないよね」
「そうかな? 源が東に罪を着せようとしているんじゃないの?」
 燐は自分の推理を披露する。
「俺は、そう単純だと感じてないのよなぁ~」
「なんでよ。普通に考えれば私の推理が正しいでしょ。ねぇ、夫人」
 議論する長四郎達の横で、お茶を飲みながら話を聞いていた夫人に賛同を求める。
「ラモちゃんの言う通りかもねぇ。でもね、長四郎は天邪鬼だから物事を裏から見ようとする癖があるから。あんたの考えを聞かせなさいよ」
「なぁ~に、俺の事、理解していますよぉ~って感じ出してんだよ。ババァ」
「いいから、早くなさい」
 夫人からせかされる長四郎。
「へいへい。仰せのままに。まず、この事件の発端はやっぱり、東の記事だろ」
「確かにそうだけど。そこから、源が犯人じゃないって事にはならないでしょ」
「どうかな? 俺が一番気になっているのは、この横領をリークした人間だ」
「ちょっと待って。あんたは、リークした人間が犯人だと思っているの?」
「いいや、それが誰なのか次第で、犯人が変わると思っている」
「じゃ、じゃあ、もし、もしだよ。源がリークしていたとしたら、犯人だと考えるわけ?」
 燐のその質問に長四郎は暫く無言の後、答える。
「リークしていたのが源であれば、犯人と疑わしいとは考えないな」
「どうしてよ」
「いや、事件の順番だよ。わざわざ、口封じするのに週刊誌にリークする必要あるか?
それこそ、自殺に見せかけて殺せば良いだけじゃん。なんで、そんなまどろっこしいことせにゃならんのよ」
「当初の予定では、社会的抹殺が目的でそれが叶いそうになかったから、殺害したとは考えられないかしら?」
 ここで、夫人が口を挟んでくる。
「それだ!!!」
 燐は嬉しそうに、夫人の推理に賛成する燐。
「そんなリスキーなことするか?」
「するわよ。自分がしていた横領がバレたくないんだから」
「う~ん」
「何で、意地を張るわけ?」
「別に、張ってません。只、変な女子高生にマウント取られるのが嫌なだけですぅ~」
「ホント、ガキねっ!!」
「何とでも言え、小娘」
 そっぽを向き合う長四郎と燐を見て夫人は、ほくそ笑む。
「何が、おかしいんだよ。婆さん」
「いやいや、仲がいいねぇ~あんた達。まるで、兄妹みたいだね」
「夫人! それだけは勘弁してください!!」
 燐は顔を真っ赤にして怒る。
「そんな怒らなくてもねぇ」
 夫人が宥めようするが、燐の怒りが収まる気配はない。
「夫人、申し訳ありませんが、その言葉は私に対する最大の侮辱なんです」
「そうだったの。ごめんなさいね」
 夫人は内心、めんどくせぇガキだなと思いながら取り敢えず、謝る。
「おい、ラモちゃん。夫人を怒らせるなよ」
「怒らせてないし」
「じゃあ、明日から、ラモちゃんの推理通りに源を追って行きますか!」
 長四郎は自分の尻を叩き、活を入れる。
「やっと、私の推理力を認めたようね」
 ドヤ顔を決める燐を見て、長四郎は深い溜息をつく。
「全く、このガキャア。豚もおだてりゃ、木に昇るだな」
「誰が、豚だって!?」
 燐は長四郎言葉を聞き、すぐに戦闘態勢に入る。
「おい、待て!! 助けて、婆さん!!!」
 長四郎は夫人に助けを求めると夫人は次のように言うのだった。
「私は、知らないよ。さ、晩御飯作ろう」
 夫人はそう言って、立ち上がりキッチンに向かう。
 そのすぐ後、屋敷に無いに長四郎の断末魔が響いたことは言うまでもない。
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