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第肆話-映画

映画-21

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 次の日、長四郎と燐は舞香に会う為、事務所近くのスタバに再び来ていた。
「遅いね」
「ああ」
 燐の言う通り、予定した時刻になっても姿を現さなかったからだ。
 仕事で何かあったのかと思っていると、燐が肩を叩いてくる。
「痛い。痛い」
 燐を見ると口をあんぐり開け、スマホを見ながら肩を叩いている。
「どうした?」
「こ、これ」
 燐は長四郎にネットニュースを見せる。
 そこには、里奈が芸能界引退の旨を発表したという記事が検索サイトのトップニュースとして扱われていた。
「えっ!? マジ!!!」
 思わず大声を出してしまう長四郎。
「声が大きい」
「悪い。ちょっと、見せて」
 詳しい内容を知るため、燐のスマホをお互いの頭をくっつけながら見る。
 そこには、今回の恵一が引き起こした事件の責任を取り芸能界を引退すると自身の呟きSNSで発表したらしい。
 がしかし、この事を事務所は認知していないようで対応に追われてんてこ舞いと記事には書かれていた。
「ここに来ない理由がよく分かったな」
「感心している場合?
どうしよう?」
「どうもできないだろう。
電話でもしてみたら?」
「うん。ちょっと、掛けてくる」
 燐は店を出て、里奈に電話する。
 そして、長四郎の元に一川警部から通知が入った。
 レンタルバイクのウラが取れたので、話がしたいという事であった。
「ダメ、繋がらない」
 燐はお手上げといった感じで戻ってきた。
「そうか・・・・・・」
 そこから、長四郎は少し考えると。
「ちょっと、事務所行こうか」
「出禁なのに?」
「確定ではございませんので、ご安心を」
 長四郎と燐は、事務所へと向かった。
 事務所の受付に入ると、電話が鳴りっぱなしで大人が事務所内を走り回っている。
「こりゃ、話聞けそうにないかな?」
「そうだね」
 燐も子の只ならぬ雰囲気を感じ取り、長四郎の言葉に賛同する。
「探偵さん!?」
 後ろから舞香の声がした。
「あ、どうも」
 振り向きざまに長四郎は挨拶する。
「あ、すいません。すっかり忘れてました」
「いえ、この状況ですから致し方ありませんよ」
「ということは、ニュースを」
「見ました。な、ラモちゃん」
「うん」
「そうでしたか。実は今さっきまで里奈の家に行ったんですけど。
居なくなっていたんです。バイクも無かったし」
「えっ!!!」
 燐は驚き、長四郎は「やっぱりか」といった感じの反応をする。
「それでなんですけど」
「分かっています。探します」
「お前、そこで何してるっ!!!」
 事務所社長が駆け足で長四郎に近づいてくる。
「ちっ!! ずらかるぞ、ラモちゃん」
「あ、うん」
 長四郎が事務所を去ろうとするとのを阻止し、掴みかかる。
「お前が里奈にいらぬことを言ったから、こんなことになったんだ!!」
 長四郎の身体を揺さぶりながら、怒鳴り散らす事務所社長。
「やめてください!! 社長!!」
 舞香が長四郎から引き離そうとするが、社長は頑なに長四郎の事を離そうとせず罵声を浴びせ続ける。
「いい加減にしろっ!!」
 舞香の回し蹴りが社長の側頭部に直撃し、ゆっくりと倒れた。
「お、お見事」
 長四郎が拍手すると、自分の作業をしていた社員たちも手を止めスタンディングオベーションで盛大な拍手をするのだった。
「ありがとうございます」
 綺麗なお辞儀をしながら、周りにいる人間に礼を言う。
「それで例の頼んでいた件なんですけど・・・・・・」
 長四郎は舞香に里奈の事件当日のアリバイ確認を頼んでおり、その結果を聞く。
「ああ、書類に纏めておいたので持ってきます。
ここでお待ちください」
 舞香は自分のデスクに、書類を取りに行く。
「ねぇ、頼んでいたのって」
「それは、秘密」
「そんなん良いから、はよ吐け」
「い、いやだ」
 締め上げられる長四郎は拒否する。
 そんな風にじゃれあっていると、舞香が書類の入ったクリアファイルを持って戻ってきた。
「お待たせしました。こちらが頼まれていた事件当時の里奈のスケジュール表です」
「ありがとうございます」
「プライベートも共に過ごした範囲まで記載しましたので」
「助かります。では、失礼します」
 長四郎と燐は、事務所を後にした。
「ねぇ、これから里奈を探しに行くの?」
 どこかへ向かって歩く長四郎に付いて行きながら燐は質問した。
「それは警察に一度任せて、俺達は一川さん達と合流する」
「分かった」
 長四郎と燐は警視庁本部にある捜査本部へと向かうのだった。
 そして、捜査本部に着いた二人が中に入ると、捜査員が里奈の行方を全力で追っていた。
「長さん、来たとね」
「はい、それでどうです? 見つかりそうですか?」
 長四郎の問いに、一川警部は首を横に振る。
「そうですか・・・・・・それで、これ貰ってきました」
 長四郎は舞香から貰ってきた資料を見せる。
「おっ、それを待ってたけん。
絢ちゃん、例の物持って来て」
 別の作業をしていた絢巡査長を呼びつけ、レンタルバイク屋から仕入れた資料を持ってきた。
「これがレンタルバイク屋で仕入れた防犯カメラ映像と、レンタルしたバイクや日時の詳細が記録された書類です」
 絢巡査長は持ってきた物の説明をしながら、机の上に資料を広げる。
「ありがとう」
 長四郎は礼を言い、自分が持ってきた資料と照らし合わせていく。
 借りたバイクの車種は全て、恵一が載っていたバイクと同型の車種で色も同様の物であった。
 借りた時刻もバラバラではあるが、犯行時刻に近い時間に借りられていた。
 そして、バイクから小さい血痕が発見された。
 今、どの被害者のか照合中とのことだ。
「ふぅ」
 5分程でその作業を終えた長四郎は、一川警部達に自分の考えを伝え始める。
「まず、犯人は三玖瑠 里奈で間違いないと思います。
それで、今行方不明の彼女ですが多分、空港に居るのではないでしょうか?」
「空港?」と燐が言う。
「そう、空港」
「でも、長さん。羽田と成田には一応、海外の高飛びを警戒して捜査員も向かわせて空港警察にも協力を得ておるんよ」
「一川さん、関東の空港は羽田や成田だけじゃないですよ」
「もしかして、茨城空港に居るってことですか?」
「That’s Right!!!」
 絢巡査長の意見に指をパチンと鳴らし、正解のポーズを取る長四郎。
「茨城空港から海外に行けるの?」
 燐は自分の疑問をぶつける。
「行けるよ。台北、上海、西安に」
「知らんかったわ~どうして、茨城空港って思ったのか教えてくれんね」
「彼女の移動手段はバイクなので、羽田や成田だと下手したら検問しているかもですし、
茨城空港から高飛びするなんて思ってもないと踏んだんじゃないですか?
現に、そちらへ目を向けてないんですから」
「それを言わんとってぇ~」
「直ちに、非常線を張ります。良いですか? 一川さん」
「多分、遅いと思うよ」
 絢巡査長が動こうとするのを、長四郎が止める。
「えっ、どうしてですか?」
「彼女が姿をくらまして2時間経とうとしているから、もう遅い。
だから、空港警察に身柄を確保してもらった方が良いかな」
「分かりました。手配します」
 絢巡査長は茨城空港の空港警察に、里奈の身柄確保の要請をしに行った。
「じゃ、俺達も」
「分かったばい。車を回してくるけん」
 一川警部は車両を取りに行った。
「ラモちゃんには頑張ってもらうから、俺の話を良く聞けよ」
「うん。って、私!!」
 自分自信を指差し長四郎の提案に驚く燐であった。
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