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第壱話-結成

結成-13

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 翌日から燐の所有物が消えていくという事案が発生していた。
 それに気づいたのは、学校に来た時であった。
 普段通り、燐が登校すると机の中に置き勉していた教科書が丸っと消えていた。
「へ?」と思わず声を上げてしまう燐。
 くすくすと燐を嘲笑うと共に、冷笑な視線を燐は感じる。
 燐が振り向くとクラスメイト達は、普段通りに生活している。
 燐は冷静になるように自分を言い聞かせ、自分のカバンの中身を出しそれを机に並べスマホで写真撮影をする。
 机に並べたものをカバンに戻し、次は自分のロッカー内の所有物を撮影し記録に残しておく。
 そんな燐を見てやんちゃ系男子が「あいつ、頭おかしくなったか?」と呟くとクラス内が大笑いに包まれる。
「騒がしいけどなんかあったかぁ~」と担任の教師がクラスに入って来た。
「なんでもないでぇ~す」とこれまたやんちゃ系男子が返事をし、「そうか」の一言で片付けた担任教師。
 こっちは物が紛失しているんだよと燐は心の中で思いながら、朝礼を受けるのだった。

 その頃、長四郎は警視庁内にある命捜班の部屋に居た。
「朝早くにすまんね。長さん」
 一川警部はそう言って、珈琲を出す。
「いえ。それより、辛辣な事を言っても?」
「え~っ!!」
「もしかして、命捜班って窓際部署ですか?」
「まぁ、この部屋を見てそう思われても仕方ないの事実やけん」
 そう今、俺が居る17畳程の部屋は一川警部の机と椅子以外のデスクと椅子が4つあり全てにシートが被せてあり、陸の孤島という言葉が相応しい部屋であった。
「で、どうして窓際に?」
「窓際なんてとんでもない。
ここはね新設された部署と」
「新設ですか?」長四郎は訝しむ。
「そうそう、最初の事件が今回というわけ」
「はぁ」
「追々、人員が増えていくらしいけん。
そんなことより、事件の話をしようや」
「そうですね」
 長四郎は気を引き締め、刺殺体で見つかった赤山の捜査報告書を読む。
 所轄署は強盗殺人として捜査しており、必死に聞き込みを行っているが有益な情報を得られずにいるらしい。
 無くなっている所持品は、財布,スマホの2つでスマホに至っては売られた痕跡も無い。
 只、興味深い事も記載されていた。
 それは、現場に付着していた血の量が一致しないという鑑識結果であった。
 刺し傷の具合から想定すると、現場に付着している血液の量が圧倒的に少ないとの事。
 所轄署では、強盗犯が別の場所で刺殺し荒川の土手まで運び死体を遺棄したと仮定して捜査を行っているとのことであった。
「強盗犯がわざわざ死体を遺棄したりしないと思うんですけど」
 長四郎は自分の見解を述べる。
「そうね。強盗やったら逃げ出すことを最優先やもんね」
「普通に考えるとそうしますし、初犯にしてはいささか疑問ですよね」
「なんで?」説明を求める一川警部
「だって、スマホを盗んでもロックを解除してデータの削除するのにも技術があれば売れますけど。初犯の素人がスマホを簡単に売るなんて言う芸当は出来ないでしょう」
「ごもっとも。因みに、長さんは誰が犯人やと考えとうと?」
「例の生徒会の誰かじゃないですかね。
個人的には、青山って子が気になりますね」
「あら、奇遇ね。あたしもその子が気になっとたと」
「まず、彼からアプローチをかけますか」
「そうしましょう」2人は赤山の葬儀に向かった。

 燐は赤山の葬儀会場にその身を置いていた。
 学校で葬儀の手伝いのボランティアを決めるクラス内選挙で祭り挙げられ決まりこうして、受付の手伝いをさせられていた。
 溜息をついて肩を落としていると「何しているの?」と香典袋を燐に差し出す長四郎と一川警部。
「ボランティア。ここに名前と住所を書いて」
「は~い」
 長四郎は名簿に名前、住所を書き葬儀会場に入り、お焼香をし終えるとすぐさま会場を引き上げる。
 長四郎は受付に居る燐に話しかける。
「おい、物が無くなってるって、マジ?」
「マジよ」
 燐は物が無くなり直ぐに長四郎に報告していた。
「で、ラモちゃんがいじめられる原因は?」
「私の美貌が気に入らないから?」
 ぶりっ子ポーズを取る燐。
「お前がいじめられる原因がよく分かった」
 長四郎は聞くんじゃなかったと言わんばかりの顔をする。
「ま、写真には残してるから」
「見せて」
 長四郎の依頼を受けて、燐はスマホを渡す。
 そこから真剣な面持ちで写真を見ていく長四郎。
「なぁ、これって今回の事件に関係あると思う?」
「ある。主導しているのは・・・・・・」
 燐は葬儀会場にいる青山達に目を向ける。
「成程ね」
 長四郎は燐の言いたいことを理解し、一川警部の方の様子を窺う。
 一川警部は、青山が座っている隣の席に腰掛け、ひたすら独り言を呟く。
「武道館の屋上に落ちていた血は岡田君のやったなぁ~
なんで、落ちてたんやろ。しかし、犯人は賢いよなぁ~
飛び降り自殺をうまく利用して打撲痕を隠せたんやから」
 岡田槙太の話から始まり、本命の赤山の事について呟き始める。
「赤山君も可哀想やな。これから素晴らしい未来があったろうに・・・・・・」
 涙ぐみながら一川警部は独り言を続ける。
「彼のスマホ、今どこにあるうやろう? まぁ、強盗じゃないのは明白やし。
もうすぐ、犯人も捕まるかも・・・・・・」
 そう言い終えると、立ち上がり青山の様子を見る。
 我関せずといった感じで平然を装っていたが手は以前のように小刻みに震えていた。
 一川警部は青山に声を掛けず、遺族に挨拶をして会場を出る。
「お疲れ様でした」
 出てきた一川警部に頭を下げる長四郎。
「長さんもラモちゃんもお疲れ」
 二人の事を労う一川警部。
「どうでした?」
 燐は、一川警部に成果を聞く。
「どうやろうねぇ~
あ、それよりいじめられてるんやって?」
「そうなんです」
「犯人に心当たりはあると?」
「一川さんが話していた相手らしいですよ」
 長四郎が補足説明をする。
「離しているように見えた?」
 一川警部の一言に、2人は頷いて同意する。
「じゃあさ、長さんに隠しカメラとICレコーダー借りて」
「一川さん、まさか・・・・・・」
 一川警部の意図することを理解し、長四郎は引き笑いを浮かべる。
「そう、そのまさか」
 燐は一川警部の提案をよく理解できずにいた。
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