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第壱話-結成
結成-1
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「え、何?」
俺は思わぬ珍客に身構えてしまう。
「何? じゃないし。依頼人だから。んなことも分からないの?」
女子高生は腕組をし、長四郎を睨みつける。
溜口!? と思いつつ、冷静に大人の対応をする。
「いや、女子高生が依頼って珍しいから」
長四郎は、キッチンへ向かい電気ケトルでお湯を沸かしながら珈琲を淹れる準備をする。
「で、依頼内容は?」
長四郎の問いに、女子高生は言いにくそうに答える。
「殺人」
まさか、女子高生の口からそのようなパワーワードが出てくると思わずむせてしまう。
「あのさ、女子高生。探偵の主な業務内容は、浮気調査,素行調査や企業調査とかそういった事をするのね。テレビドラマじゃあるまいし、殺人事件は解決したりしないの。お分かり?」
「私の事、バカにしているわけ? それに、私は女子高生じゃなくて羅猛 燐って名前あるんだけど!」
「馬鹿にしているなんて滅相もない」
長四郎は淹れたての珈琲を燐に出す。
「どうも」女子高生は一礼し、珈琲に口付ける。
「依頼内容はともかくとして何故、うちの事務所に依頼しに来たの?」
「これ見て来た」
燐はインスタグラムの探偵事務所紹介アカウントを長四郎に見せる。
そこには、目隠しされた高校生時の長四郎の写真と共に、紹介文が記載されていた。
数多の難事件を解決したあの伝説の高校生探偵・熱海長四郎が探偵事務所を開いていた!!!!
迷宮入りしそうな事件があればここへ Let’s GO!!!
「よくこんな眉唾みたいな情報を信じ込むんだね」
「あのね、あんたと違ってネットリテラシー教育がしっかりなされているの。
ちゃんと調べたわよ。ネットだけど。10年程前に多くの迷宮入りしそうな難事件を解決した高校生探偵がいたのは事実なんだし」
やっぱり、所詮は素人。
俺が高校生の時だったら、もう少し上手くやれただろうに。
そんな事を考えながら長四郎は話を続ける。
「でも、俺がその高校生探偵とは限らんでしょ。よくそれだけでここに来たね」
「ふっ、甘い。これを見なさないよ」
燐はとあるネットニュース記事を見せる。
俺が警視総監賞特別授与された際のニュース記事であった。
しかも、その記事には目隠しされていない同じ制服を着た自分が賞状を手に映っていた。
「よく見つけてきたな」素直に感心する長四郎に、「でしょ、でしょ。」と答え燐は満面の笑みを見せる。
長四郎は、この羅猛燐という女子高生を少し見直し、少しだけ話を聞くことにした。
「分かった。少しだけなら話を聞こう」
「やった」ガッツポーズをとり、燐は喜ぶ。
「おじさん、疲れてるから。手短に話して」
長四郎はそう言うと、ソファーにもたれかかり珈琲を飲む。
「分かった。事件が起きたのは・・・・・・」
三日前の深夜に事件は起きた。
私立芸春高等学校に通う2年・岡田 槙太が校内にある三階建て武道館から転落した。
警察の捜査の結果、自殺と判断されたのだが、燐はその結果に納得していなかった。
何故なら、目撃者がいることを知っていたからであった。
事件当夜、岡田槙太が落下した時に武道館の屋上に別の人影を目撃した友達がおり、その友達は警察にこの事を伝えたのだが、相手にされなかったらしい。
勿論、学校側も同様の対応だった。
そのことに深く傷ついた友達は、不登校になったとのことであった。
説明を終えると「マジでムカつく!」という言葉と同時に、燐は机をドンっと叩く。
「ん~」
話を聞き終えた長四郎は少し脳みそを回転させ考え始め、考えが纏まったのかすぐに結論を述べる。
「警察がそう判断したのなら、そういう事なんじゃない?」
「え? 調べてくれないの?」
「良いか? 警察でもない俺が校内うろついて調べるなんてできない。つまり、君の力にはなれない」
「それは、そうだけど。名探偵でしょ! 何とかしなさいよ!!」
「無茶言うなよ。探偵にというか一般市民には逮捕権あれど、捜査権は無いからな」
「もういい!!」
燐は勢いよくソファーから立ち上がると、そのまま事務所を出て行く。
はぁ~と、溜息をつき長四郎は風呂に向かう。
湯船に浸かり命の洗濯を終え、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出したタイミングでスマホに着信が入る。
「もしもし」
見知らぬ番号であった為、警戒しながら電話に出る。
「おっ~電話番号変わってないようで助かったわ~」
この声はもしかして・・・・・・
「長さん、忘れた?あたしよ、あ・た・し。一川ばい」
「一川さんですか? お久しぶりです」
この一川さんは警視庁捜査一課の刑事で10年前、俺と共に事件を解決した間柄だ。
「お久しぶりぃ~」
「それで用件も無しに10年ぶりに連絡してきませんよね?」
「おおっ! 流石、名推理の腕は落ちとらんようね」
「事件ですか?」
「うん、そうやけど。なんやったら、再会を祝して呑まない?
あ、ダメか。未成年やもんね」
「あれから10年経っているんすけどね」
「おお、そうやった。そうやった。
じゃあ、板橋にあるヒマラっていう居酒屋に集合で。そんじゃあ」
そこで、通話が切れた。
俺は生ビールを求めて、板橋の居酒屋へ向かった。
俺は思わぬ珍客に身構えてしまう。
「何? じゃないし。依頼人だから。んなことも分からないの?」
女子高生は腕組をし、長四郎を睨みつける。
溜口!? と思いつつ、冷静に大人の対応をする。
「いや、女子高生が依頼って珍しいから」
長四郎は、キッチンへ向かい電気ケトルでお湯を沸かしながら珈琲を淹れる準備をする。
「で、依頼内容は?」
長四郎の問いに、女子高生は言いにくそうに答える。
「殺人」
まさか、女子高生の口からそのようなパワーワードが出てくると思わずむせてしまう。
「あのさ、女子高生。探偵の主な業務内容は、浮気調査,素行調査や企業調査とかそういった事をするのね。テレビドラマじゃあるまいし、殺人事件は解決したりしないの。お分かり?」
「私の事、バカにしているわけ? それに、私は女子高生じゃなくて羅猛 燐って名前あるんだけど!」
「馬鹿にしているなんて滅相もない」
長四郎は淹れたての珈琲を燐に出す。
「どうも」女子高生は一礼し、珈琲に口付ける。
「依頼内容はともかくとして何故、うちの事務所に依頼しに来たの?」
「これ見て来た」
燐はインスタグラムの探偵事務所紹介アカウントを長四郎に見せる。
そこには、目隠しされた高校生時の長四郎の写真と共に、紹介文が記載されていた。
数多の難事件を解決したあの伝説の高校生探偵・熱海長四郎が探偵事務所を開いていた!!!!
迷宮入りしそうな事件があればここへ Let’s GO!!!
「よくこんな眉唾みたいな情報を信じ込むんだね」
「あのね、あんたと違ってネットリテラシー教育がしっかりなされているの。
ちゃんと調べたわよ。ネットだけど。10年程前に多くの迷宮入りしそうな難事件を解決した高校生探偵がいたのは事実なんだし」
やっぱり、所詮は素人。
俺が高校生の時だったら、もう少し上手くやれただろうに。
そんな事を考えながら長四郎は話を続ける。
「でも、俺がその高校生探偵とは限らんでしょ。よくそれだけでここに来たね」
「ふっ、甘い。これを見なさないよ」
燐はとあるネットニュース記事を見せる。
俺が警視総監賞特別授与された際のニュース記事であった。
しかも、その記事には目隠しされていない同じ制服を着た自分が賞状を手に映っていた。
「よく見つけてきたな」素直に感心する長四郎に、「でしょ、でしょ。」と答え燐は満面の笑みを見せる。
長四郎は、この羅猛燐という女子高生を少し見直し、少しだけ話を聞くことにした。
「分かった。少しだけなら話を聞こう」
「やった」ガッツポーズをとり、燐は喜ぶ。
「おじさん、疲れてるから。手短に話して」
長四郎はそう言うと、ソファーにもたれかかり珈琲を飲む。
「分かった。事件が起きたのは・・・・・・」
三日前の深夜に事件は起きた。
私立芸春高等学校に通う2年・岡田 槙太が校内にある三階建て武道館から転落した。
警察の捜査の結果、自殺と判断されたのだが、燐はその結果に納得していなかった。
何故なら、目撃者がいることを知っていたからであった。
事件当夜、岡田槙太が落下した時に武道館の屋上に別の人影を目撃した友達がおり、その友達は警察にこの事を伝えたのだが、相手にされなかったらしい。
勿論、学校側も同様の対応だった。
そのことに深く傷ついた友達は、不登校になったとのことであった。
説明を終えると「マジでムカつく!」という言葉と同時に、燐は机をドンっと叩く。
「ん~」
話を聞き終えた長四郎は少し脳みそを回転させ考え始め、考えが纏まったのかすぐに結論を述べる。
「警察がそう判断したのなら、そういう事なんじゃない?」
「え? 調べてくれないの?」
「良いか? 警察でもない俺が校内うろついて調べるなんてできない。つまり、君の力にはなれない」
「それは、そうだけど。名探偵でしょ! 何とかしなさいよ!!」
「無茶言うなよ。探偵にというか一般市民には逮捕権あれど、捜査権は無いからな」
「もういい!!」
燐は勢いよくソファーから立ち上がると、そのまま事務所を出て行く。
はぁ~と、溜息をつき長四郎は風呂に向かう。
湯船に浸かり命の洗濯を終え、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出したタイミングでスマホに着信が入る。
「もしもし」
見知らぬ番号であった為、警戒しながら電話に出る。
「おっ~電話番号変わってないようで助かったわ~」
この声はもしかして・・・・・・
「長さん、忘れた?あたしよ、あ・た・し。一川ばい」
「一川さんですか? お久しぶりです」
この一川さんは警視庁捜査一課の刑事で10年前、俺と共に事件を解決した間柄だ。
「お久しぶりぃ~」
「それで用件も無しに10年ぶりに連絡してきませんよね?」
「おおっ! 流石、名推理の腕は落ちとらんようね」
「事件ですか?」
「うん、そうやけど。なんやったら、再会を祝して呑まない?
あ、ダメか。未成年やもんね」
「あれから10年経っているんすけどね」
「おお、そうやった。そうやった。
じゃあ、板橋にあるヒマラっていう居酒屋に集合で。そんじゃあ」
そこで、通話が切れた。
俺は生ビールを求めて、板橋の居酒屋へ向かった。
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