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第二話-長屋

長屋-12

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 長四郎は二太郎の部屋を出ると、一太郎に帰る旨を伝え、そのまま自分の事務所へと戻った。
「あ~疲れたぁ~」
 帰ってすぐの第一声は、それであった。
「何もしてないくせに」
 長四郎の後に続いて部屋に入った燐が小言をボソッと呟く。
「にしても、何も掴めなかったなぁ~」
 長四郎は冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出すと、ソファーでふんぞり返る燐に投げ渡す。燐はそれを片手でキャッチすると、「お茶かよ」と言いながら蓋を開け飲み始める。
「ラモちゃん」
「何?」
「犯人の目星ついた?」
「そう言うあんたは?」
「どうかなぁ~」そう答える長四郎の顔はニヤニヤしていた。
「分かってんだったら、聞かなきゃ良いじゃん」
「冷たいねぇ~」
「そんなことねぇし。で、犯人は誰なの?」
「最後の最後まで秘密だよ。てか、答えは簡単だったじゃん」
「簡単?」
「そう、簡単だし。分かりやすかったぞぉ~」
「分かりやすかった?」
「フフフっ」長四郎は、ほくそ笑む。
「その余裕な感じ、なんかムカつく」
「あら、そぉ?」
「チッ」
 燐は舌打ちすると、やさぐれた感じを醸し出しながらお茶を一気飲みする。
「明日はさ、被害者の調査でもするか」
「分かった」
 燐は了承し、自宅へと帰って行った。
「帰ったか・・・・・・・」
 燐が出ていってすぐに長四郎はスマホを手に取り、一川警部へと電話する。
「もしもし」
「お~長さん。なんか分かったと?」
「はい。犯人の目星が付きましたよ」
「おおっ! それは良かった。いや今ね、幸信君のお母さんが重要参考人として連行されてきたんよ」
「ほぉ~ さしずめ、多額の保険金を息子に掛けていたといったところですかな」
「正解。額は3億円。それも、ここ最近に保険に入っとってね」
「それは疑われますね」
「そうやろ~」
「でも、保険金だけで同行されます?」
「流石は長さん。実はさ、お母さんがゴミ出ししよう時にさ、張り込みをかけていた刑事が声を掛けたらしいっちゃ」
「ゴミ出し、朝ですか?」
「いいや、三時間前ぐらいの事やったかな」
「三時間前ですか。それで?」
「そいでね。丁度、明日ごみ収集に来るのがスプレー缶らしくてさ、証拠品をゴミ出しして証拠隠滅図るのではと若い刑事が思いついたらしくてね」
「それでゴミ袋を漁ったら、彼の髪を染めたであろうスプレー缶が見つかった」
「そんですぐに連行となったと」
「分っかりました。じゃ、今からそっちに行きます」
「お、来てくれると? じゃあ、待っとります」
 そこで通話が終了した。
 長四郎が事務所のドアを開けると目の前に燐が立っていた。
「ラモちゃん、帰ったんじゃないの?」
「女の勘で戻ってきた。行くわよ」
「はい」
 長四郎と燐は一川警部が居る警察署へと向かった。
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