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第二話-長屋
長屋-9
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「お疲れ様でぇ~す」
長四郎は牛丼が入った袋を両手に引っさげて、命捜班の部屋へと入っていく。
「遅い!!」
仁王立ちした燐が、長四郎をしかり付ける。
「すいませぇ~ん」鼻抜け声で長四郎は謝罪する。
「チッ」
舌打ちだけですんで良かったと内心安堵する長四郎。
「そんなお腹が減ってイライラするラモちゃんにこれだ。牛丼特盛ぃ~」
長四郎はドラえもんの真似をしながら、燐に牛丼特盛を差し出す。
「あ、ありがとう」燐は礼を言って、それを受け取った。
それを見ていた絢巡査長は、本当にお腹が空いていたんだと思った。
「はい。絢ちゃん。一川さんも」
絢巡査長、一川警部にも買ってきた牛丼を渡す長四郎。
「それで、俺を呼びつけた理由を聞かせてもらおうか?」
割り箸をパチンと割りながら、用件を聞く長四郎。
「長さんが見つけてきた学生証のおかげで、被害者の身元が分かって親御さんからも確認取れたばい」一川警部がそう答えた。
「そうですか。それは、良かった」そう答えながら長四郎は牛丼を口に入れる。
「でも、そのこの親御さんかなりの曲者らしくて」
「そうらしいね」
「なんで、あんたが知っている訳?」燐が説明を求める。
「何でって。彼が通っていた高校の先生から聞いた」
「通っていた。ていう事は、退学しているって事?」
一川警部の質問に口をモグモグさせながら、長四郎は頷いて返事する。
「という事は、問題児だった?」絢巡査長のその一言に「そうみたい」と答える長四郎。
「でも、殺されるって事はヤンキーの揉め事で殺されたのかなぁ~」
燐は自分の推理を披露する。
「違うな。それだと髪の毛を染める意味がない」
「はい?」
「だから、髪の毛を染める理由がないし、財布を隠す意味もない」
「何でよ」
「長さんが言いたい事は、一太郎の君に似せる必要がないって事」
絢巡査長が解説する。
「絢ちゃん、冴えてるぅ~」
指パッチンをし、長四郎は褒める。
「どうも」
「あんたの話だと、一太郎に似せるために犯人が工作したって意味に聞こえるんだけど」
「そうだよ」
「誰が、何のために?」
「それを考えるのが、一川さん達の仕事だよ。ラモちゃん」
「私達もでしょ」
「そうなの?」
「そうよ」
「本当に仲良いですね。この二人」一川警部にそう耳打ちする絢巡査長。
「でしょ。でも、こん二人。出会ってまだ一ヶ月も絶っておらんとよ」
「へぇ~」
「何、二人でひそひそ話してるんすか? 不倫すか?」
「不倫!?」
燐は一川警部達を、ケダモノを見るような目で見る。
「ラモちゃん、違うから。マジで」
「必死に弁解しているあたり、怪しい」と言う燐に対して、長四郎は、それはないと確信していた。
それは、浮気調査専門の探偵の経験に基づくものからであった。
「ま、なんにせよ。犯人が一太郎君の事を知っている人物。そして、そっくりの幸信君を一太郎君に似せないといけない理由を持つ奴を探そう」
長四郎はこれからの指針を伝えて、牛丼をかきこむのだった。
長四郎は牛丼が入った袋を両手に引っさげて、命捜班の部屋へと入っていく。
「遅い!!」
仁王立ちした燐が、長四郎をしかり付ける。
「すいませぇ~ん」鼻抜け声で長四郎は謝罪する。
「チッ」
舌打ちだけですんで良かったと内心安堵する長四郎。
「そんなお腹が減ってイライラするラモちゃんにこれだ。牛丼特盛ぃ~」
長四郎はドラえもんの真似をしながら、燐に牛丼特盛を差し出す。
「あ、ありがとう」燐は礼を言って、それを受け取った。
それを見ていた絢巡査長は、本当にお腹が空いていたんだと思った。
「はい。絢ちゃん。一川さんも」
絢巡査長、一川警部にも買ってきた牛丼を渡す長四郎。
「それで、俺を呼びつけた理由を聞かせてもらおうか?」
割り箸をパチンと割りながら、用件を聞く長四郎。
「長さんが見つけてきた学生証のおかげで、被害者の身元が分かって親御さんからも確認取れたばい」一川警部がそう答えた。
「そうですか。それは、良かった」そう答えながら長四郎は牛丼を口に入れる。
「でも、そのこの親御さんかなりの曲者らしくて」
「そうらしいね」
「なんで、あんたが知っている訳?」燐が説明を求める。
「何でって。彼が通っていた高校の先生から聞いた」
「通っていた。ていう事は、退学しているって事?」
一川警部の質問に口をモグモグさせながら、長四郎は頷いて返事する。
「という事は、問題児だった?」絢巡査長のその一言に「そうみたい」と答える長四郎。
「でも、殺されるって事はヤンキーの揉め事で殺されたのかなぁ~」
燐は自分の推理を披露する。
「違うな。それだと髪の毛を染める意味がない」
「はい?」
「だから、髪の毛を染める理由がないし、財布を隠す意味もない」
「何でよ」
「長さんが言いたい事は、一太郎の君に似せる必要がないって事」
絢巡査長が解説する。
「絢ちゃん、冴えてるぅ~」
指パッチンをし、長四郎は褒める。
「どうも」
「あんたの話だと、一太郎に似せるために犯人が工作したって意味に聞こえるんだけど」
「そうだよ」
「誰が、何のために?」
「それを考えるのが、一川さん達の仕事だよ。ラモちゃん」
「私達もでしょ」
「そうなの?」
「そうよ」
「本当に仲良いですね。この二人」一川警部にそう耳打ちする絢巡査長。
「でしょ。でも、こん二人。出会ってまだ一ヶ月も絶っておらんとよ」
「へぇ~」
「何、二人でひそひそ話してるんすか? 不倫すか?」
「不倫!?」
燐は一川警部達を、ケダモノを見るような目で見る。
「ラモちゃん、違うから。マジで」
「必死に弁解しているあたり、怪しい」と言う燐に対して、長四郎は、それはないと確信していた。
それは、浮気調査専門の探偵の経験に基づくものからであった。
「ま、なんにせよ。犯人が一太郎君の事を知っている人物。そして、そっくりの幸信君を一太郎君に似せないといけない理由を持つ奴を探そう」
長四郎はこれからの指針を伝えて、牛丼をかきこむのだった。
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