上 下
4 / 51
第一話-始動

始動-4

しおりを挟む
「あ~これ死んでるな」
 悲鳴を聞きつけて駆け付けた長四郎はトイレに倒れている女性の手を取り、動脈が打っているかを確認しながら発言する。
「えっ!」
 駆け付けた店員も驚きのあまり言葉がでない。
「店員さん、救急車じゃなくて警察を呼んでください」
「はっ、はい!!!」
 店員は駆け足で警察に通報しに行く。
「行っちゃった。女子高生、店員さんに今、店に居る客を帰さないように言ってきて」
「なんで、私が」
「はよ、行け!!」
「はい!」
 燐はすぐさま店員の元へと向かい、長四郎はズボンのポケットからスマホを取り出し電話を掛ける。
「もしもし。お久しぶりです。いきなりなんですけど、事件です」

 警察が到着したのは、十分後であった。最初に駆け付けたのは近くの交番の制服警官で事件発生当時の状況を確認するだけで、管轄の三田署、捜査一課の刑事が到着するのを待っていた。
 店の中の空気は、張り詰めていた。
 何故なら、この店内の中に犯人がいるかもしれないからだ。
 客同士、口には出さないがどの客が犯人なのか。視線で探り合うような環境になりつつあった。
 そして、三田警察署の警察官が入ってきた。
「三田警察署捜査一課の南志見なじみです。今から事情聴取を行いますので、捜査にご協力ください」
 南志見はざわつく客に事情聴取の願いを伝え終えると、部下の刑事や鑑識捜査員に指示を出して、燐の元へと近づく。
「君が第一発見者?」南志見の開口一番はそれであった。
「はい」とだけ返事する燐。
「一人でこの店に?」
「そうですけど」
「一人で来る様な店ではないようだけど。何しに来たの?」
 燐はここで、刑事が自分の事を不良少女だと思い込んでいるんだと察した。
「ご飯を食べに来ただけですけど」
「ご飯を食べにね」
 南志見はそう返事しながら、燐の横に立つ長四郎を見る。
「言っておきますけど、この人は相席している人ですから」
「相席。それは本当なの?」
 今度は、長四郎に質問する南志見。
「本当ですよ」それだけ答える長四郎に南志見は質問を続ける。
「君、大学生?」
「違いますよ」
「じゃあ、フリーター?」
「いいえ、こういう仕事してます」
 長四郎は自分の名刺を南志見に渡す。
「探偵!?」
 素っ頓狂な声を上げる南志見に、店中の視線が一気に集まる。
「探偵ですけど、何ですか?」
「いや、ドラマみたいな展開だなと思って」
「そうすか」
「それで、どうしてこの店に何かの調査か?」
「仮にそうだとしても、守秘義務と言うものがありますからお答えできませんよ。警察官ならそのくらい知っているでしょ」
「そんな事はどうでもいい。お前、ここに何しに来た?」
「何しにって。飯を食いに」
「噓です! この人、私のストーカーしてました」
 まさかの裏切りにあう長四郎であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迸れ!輝け!!営業マン!!!

飛鳥 進
ミステリー
あらすじ 主人公・金智 京助(かねとも けいすけ)は行く営業先で事件に巻き込まれ解決に導いてきた。 そして、ある事件をきっかけに新米刑事の二条 薫(にじょう かおる)とコンビを組んで事件を解決していく物語である。 第3話 TV局へスポンサー営業の打ち合わせに来た京助。 その帰り、廊下ですれ違った男性アナウンサーが突然死したのだ。 現場に臨場した薫に見つかってしまった京助は当然のように、捜査に参加する事となった。 果たして、この男性アナウンサーの死の真相如何に!? ご期待ください。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友よ、お前は何故死んだのか?

河内三比呂
ミステリー
「僕は、近いうちに死ぬかもしれない」 幼い頃からの悪友であり親友である久川洋壱(くがわよういち)から突如告げられた不穏な言葉に、私立探偵を営む進藤識(しんどうしき)は困惑し嫌な予感を覚えつつもつい流してしまう。 だが……しばらく経った頃、仕事終わりの識のもとへ連絡が入る。 それは洋壱の死の報せであった。 朝倉康平(あさくらこうへい)刑事から事情を訊かれた識はそこで洋壱の死が不可解である事、そして自分宛の手紙が発見された事を伝えられる。 悲しみの最中、朝倉から提案をされる。 ──それは、捜査協力の要請。 ただの民間人である自分に何ができるのか?悩みながらも承諾した識は、朝倉とともに洋壱の死の真相を探る事になる。 ──果たして、洋壱の死の真相とは一体……?

どうかしてるから童話かして。

アビト
ミステリー
童話チックミステリー。平凡高校生主人公×謎多き高校生が織りなす物語。 ____ おかしいんだ。 可笑しいんだよ。 いや、犯しくて、お菓子食って、自ら冒したんだよ。 _____ 日常生活が退屈で、退屈で仕方ない僕は、普通の高校生。 今まで、大体のことは何事もなく生きてきた。 ドラマやアニメに出てくるような波乱万丈な人生ではない。 普通。 今もこれからも、普通に生きて、何事もなく終わると信じていた。 僕のクラスメイトが失踪するまでは。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

少年の嵐!

かざぐるま
ミステリー
小6になった春に父を失った内気な少年、信夫(のぶお)の物語りです。イラスト小説の挿絵で物語を進めていきます。

処理中です...