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第七の不思議
近くて遠い
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「響子、えーっと……」
翌日の昼休み。ミッション遂行を試みる。いざ確かめるとなると、なんて言えばいいんだろう。直球すぎず遠まわしすぎず、って難易度かなり高い。
「なに? どうかしたの?」
響子が訝しむ。やばい、自然体を心がけないと。
「最近どう?」
「なにが」
「調子」
「普通だけど」
「ええと、忙しい?」
「は?」
「バイトしてたりとか」
「してない。なんで? 金まわり良さそうに見える?」
「そういうわけじゃなくて」
無理だ。こういうの向いてない。諦めようと決意する。と、響子の目が探るような色をおびる。
「うちの部の人になんか言われた?」
「えっ、いや、そんなことは……」
「図星か」
「……なんでわかるの」
「態度にも顔にもでてる」
「やっぱり私、わかりやすい?」
「やすい。丸わかり」
くくく、と喉を鳴らして笑う。
「栞里は気にしなくていいよ。あたしの都合だし」
「でも、すごく心配してるみたいだったよ」
「わかった。ちゃんと話しとく。ありがとね」
淡白。らしいといえば、らしいけど。
あらためて思いかえすと、響子について知っていることなんて数えるほどしかない。甘いものが苦手。激辛が好物。漫画も小説もあまり読まないし、ドラマや映画もほとんど観ない。吹奏楽部に入ってるくらいだから、音楽には興味あるのかな。
家族構成も知らない。もしかして複雑な家庭の事情があったりするのも。だから部活を急に休んで……。
放課後、集まりにいく。福谷さんが気づかわしげにたずねてくれる。
「友だちのこと、まだお悩み中ですか?」
わかってる。顔にでてるんだよね。
「部活、無断で休んでるみたいだけど、誰にも理由を言わないみたいで」
珍しく夏木くんが、おやつそっちのけで加わってくる。
「ほっとけよ。そのうち行くか辞めるかするだろ」
「部活の人たちが心配してるみたいだし、それに……」
たぶん、これが一番の理由。
「もし悩んでることとかトラブルとか抱えてるなら、なんでも相談してほしいっていうか。友達だし」
「中垣は、そいつに洗いざらい話してんのか」
「そんなことはないけど」
「友だちだからって、なんでもありじゃないだろ」
正論。だけども、それを寂しいと思ってしまうのは私の身勝手なんだろうか。
夏木くんの目つきが、いつもより少し厳しく見えた。なぜだか鬼塚くんのことが頭をよぎった。双方とも面識しかないと言っていたけど、それでも因縁めいたものがあるように思えるのは、私の考えすぎなのかな。
翌日の昼休み。ミッション遂行を試みる。いざ確かめるとなると、なんて言えばいいんだろう。直球すぎず遠まわしすぎず、って難易度かなり高い。
「なに? どうかしたの?」
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「最近どう?」
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「調子」
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「は?」
「バイトしてたりとか」
「してない。なんで? 金まわり良さそうに見える?」
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無理だ。こういうの向いてない。諦めようと決意する。と、響子の目が探るような色をおびる。
「うちの部の人になんか言われた?」
「えっ、いや、そんなことは……」
「図星か」
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「態度にも顔にもでてる」
「やっぱり私、わかりやすい?」
「やすい。丸わかり」
くくく、と喉を鳴らして笑う。
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「でも、すごく心配してるみたいだったよ」
「わかった。ちゃんと話しとく。ありがとね」
淡白。らしいといえば、らしいけど。
あらためて思いかえすと、響子について知っていることなんて数えるほどしかない。甘いものが苦手。激辛が好物。漫画も小説もあまり読まないし、ドラマや映画もほとんど観ない。吹奏楽部に入ってるくらいだから、音楽には興味あるのかな。
家族構成も知らない。もしかして複雑な家庭の事情があったりするのも。だから部活を急に休んで……。
放課後、集まりにいく。福谷さんが気づかわしげにたずねてくれる。
「友だちのこと、まだお悩み中ですか?」
わかってる。顔にでてるんだよね。
「部活、無断で休んでるみたいだけど、誰にも理由を言わないみたいで」
珍しく夏木くんが、おやつそっちのけで加わってくる。
「ほっとけよ。そのうち行くか辞めるかするだろ」
「部活の人たちが心配してるみたいだし、それに……」
たぶん、これが一番の理由。
「もし悩んでることとかトラブルとか抱えてるなら、なんでも相談してほしいっていうか。友達だし」
「中垣は、そいつに洗いざらい話してんのか」
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正論。だけども、それを寂しいと思ってしまうのは私の身勝手なんだろうか。
夏木くんの目つきが、いつもより少し厳しく見えた。なぜだか鬼塚くんのことが頭をよぎった。双方とも面識しかないと言っていたけど、それでも因縁めいたものがあるように思えるのは、私の考えすぎなのかな。
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