七不思議をつくろう

真山マロウ

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第五の不思議

寛容性それぞれ

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 自分はひねくれていて、人あたりも悪い。性格に問題があるのはわかっている。だから外見だけでも、かわいくなりたかった。そうすれば、なにかが変わるかもと思った。涙ながらに香西さんが語る。

「賭けてたんだから、七不思議に。これでダメなら全部ダメ。終わった。詰んだ。生きてたって意味ない……!」

 彼女がどんな気持ちでいたのかは理解できたけれど、あまりにも極端だ。志倉くんも同じように思ったようだ。

「効果は約束しないものだと動画内でも伝えていたが」
「だったらコメント欄なに? ヤラセ? あたしだけ効果ないとかありえない」

 と、二人のやりとりを眺めていた福谷さんが、訝しげに眉をしかめる。

「もしかして香西さん、ちゃんとご飯食べてなかったりしますか?」
「カロリー計算して調整してる。すぐ太るから気がぬけない」
「やはり。必要な栄養が足りていないんじゃないでしょうか」

 言われてみれば肌つやはあまりよくなさげだし、髪もパサつているように見える。

「無理なダイエットはよくない。先日も保健委員会が注意喚起していただろう」
「食ったぶん動けばいいんじゃねえの」
「運動は健康にもいいからな」
「体壊したら、それこそ意味ないもんね」

 男子四人が『筋肉は裏切らない説』をかわしているあいだ、かねてより気になっていたことを口にする。

「そういや福谷さん、体型維持なにかしてる?」
「しっかり食べて、しっかり寝て、適度な運動を継続してます。昔ぷにぷにしていましたが、こうなりました」
「ほんとに? 運動ってなにするの」
「朝、走ります。夜はストレッチです。気がむいたときに筋トレします」
「そんなに! すごいね。毎日?」
「はい、ルーティンです。やらないほうが調子悪くなります」

 福谷さんの熱意の根源は、好きなファッションをするためだそうだ。「母のようになりたいです」と誇らしげな笑顔が輝いてみえるのは、元の素材うんぬんよりも日頃の努力と、それにもとづいた自信だろう。シンプルに尊敬する。そしてそれは香西さんにも変化をもたらした。

「あたしも一緒に走ってもいいかな。やってみたいけど一人だとサボりそうで。……福谷さんが嫌じゃなければ」
「いいですよ。どこでしますか。学校でしますか」

 あれだけのことをされたのに快く承諾するのもすごい。格の違いを思いしらされる。と自分の器の小ささに落ちこみかけた矢先、
「その前に謝罪をするべきだ」
 鬼塚くんの融通のきかなさ、とっても親近感だよ。
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