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第239話:魔族の勢力
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紅の騎士と先ほど襲撃してきた魔族の下っ端を連れて、山の麓へ戻った。
その際、これまで一緒に行動を共にしていたドノヴァンの偵察隊とは別れることになった。
理由を聞くと、オズベルクの無事を確認できたことと、元々の任務である魔族の〝本隊〟を確認するためだそうだ。
「それでは、我々は偵察の任に戻る。
フレデリカさんのおかげで早く仕事をこなせそうだ」
「ああ! ドラゴンに乗っかれなかったのはちょっと残念だったけどな。
あとでまた会おうぜ!」
「分かったわ。気を付けてねアンタ達」
「バイバーイ!」
「無理はするなよ、貴殿ら」
手を振って若きドノヴァンの偵察隊を見送る。
久しぶりに活気豊かな男子と共闘したせいか、ガルドの実家が恋しくなった。
…元気にしてるかしら、皆。
「さて、貴殿らにはいくつか質問がある。
まずは『梟熊』からだ。
カーティス、腕を離してやれ」
「はーい。逃げたら殺すから♪」
「ヒイッ!?」
オズベルクが指示を出すと、カーティスはニコニコと機嫌良さそうに捕らえていた魔物を地面へ転がした。
今は人の姿とはいえ、仮にもドラゴン。
それも二匹居る。
梟熊はガタガタと震えながら私たちを見上げた。
「な、何を聞くってんだ!?
俺はただの一兵卒なんだぞ!」
「そう慌てるな。
素直に答えればここから帰してやる」
「え!? 帰すの!?
てっきりワタシ食べて良いのかと思った…」
「アンタさっきミアの所でたらふく食べてたでしょ!
こんなの食ったらお腹壊すわよ!」
「食べ!? な、なんなんだよこのパーティ!?
イカれてやがる…」
「うんうん、ウチも完全に同意だよ」
おバカなカーティスのせいでさらに魔物が怯えてしまった。
尋問の時はこの子は外しておくべきね…。
「まず…貴殿らの目的は隣にいる『紅の騎士』か?」
オズベルクはのほほんと水魔法に浸かっている『紅の騎士』へ目配せる。
それに対して梟熊はコクンと頷いた。
「そ、そうだよ…!
まさか既に仲間がこんなに居るとは思わなかったが…」
「んん? ああ、別にこのニンゲンとドラゴンはウチらの仲間じゃないよ。
お前らが来るのを待ってる間に、退屈しのぎで遊んでただけですー」
「ああ? なんですって…?
ハッ、その退屈しのぎで捕まるマヌケなんだし、魔族たちが必死に追うまでの価値があるのかしら?」
半分挑発、半分本音で言ってやると、兜越しでも分かるくらい騎士は目を細めた。
同時に声のトーンも数段下がる。
「…言っとくけど、ウチの本気はまだまだあんなモノじゃないから。
ウチが居なきゃカンバクだって〝国〟から逃げおおせられなかったんだから」
「私にあっけなく得物を吹っ飛ばされたザコ女が何か言ってるわね」
「…上等だよ…。
お前、素手で引き裂いてやろうか…?」
「やってみなさいよ紅のちんちくりん」
梟熊《オウルベア》そっちのけで睨み合っていると、オズベルクが間に入ってきた。
「イタズラに刺激をするな。
この魔族の言う通り、先の闘いの結果は欺瞞があったからだ。
我輩の見立てでは、単騎でドラゴン十体は相手取れるほどの戦闘力を保有している」
「なっ…!?」
「おお~。ただのヘンタイ海竜にしてはなかなか正確な観察眼だね。
ちょっと見直しちゃったよ」
紅の騎士は関心したのか、水の中で手を叩いて拍手をしてきた。
な、なによ…。
私だって頑張って修行してるってのに、オズベルクはこんなヤツの方が強いって言うの!?
「少々話の腰を折られてしまったが、再び貴殿に訊ねよう。
ズバリ聞くがそちらの勢力は如何ほどだ?」
オズベルクはしゃがみこんで、改めて梟熊へ質問した。
それまでポカンとしていたのか、慌てて答え始める。
「いっ、〝一師団〟だ…!
今回は〝ラドン師団長〟自らご出陣なさ…って、よく考えたらお前らドラゴンが俺らの進軍を散々ジャマしてきたんだから、そんくらい知ってんだろ!?
キャンプを壊すわ、橋を落とすわ、挙句には俺らの食料までオシャカにしやがって…!」
怯えた目から一転、今度は怒ってオズベルクに詰め寄った。
ド、ドラゴンにしてはずいぶんセコいけど、地味に効く嫌がらせね…。
「援軍が来ていないか気になったからな。
一個の師団の勢力はせいぜい約100~500。
正確な数は数えていないが、今回出てきている軍はそいつらだけか?」
「ええ!? そんなに!?」
「なんだよ〝だけ〟って…。
そうだよ! これでも充分大所帯だろうが!」
い、一師団って…!
それほどまでの数を用意しないと紅と黒の騎士を見つけられないって言うの?
というかまずいわ…、百も居ない村の戦力だけじゃとても魔族に太刀打ちできない!
「に、逃げるしかないわよオズベルク!
いくら何でもその数じゃかないっこないわ!
急いでドノヴァンのみんなに伝えて避難を…」
「それを決めるのは〝彼ら〟だ。
先の若き戦士たちは何のために貴殿に同行したと思っている?」
ピシャリとオズベルクは私の意見を覆った。
そりゃあ気持ちは分からないでもないけど、本来魔族が人里の近くに出現しただけでも、避難指示が出てもおかしくない。
ましてドノヴァンの近くには頼れる公共の警察機関が存在しない。
それなら傭兵の私が…!
「ふふっ、舐められたものだね。
その程度の数でウチらを捕まえられるとでも思ってるのかな?」
「な、なんだと?」
「お前たちはどうもカンバクよりもウチを警戒して追って来てるようだけど…本当に怖いのはアイツだよ」
「…………」
またもや紅の騎士が口を挟む。
さっきから言ってる『カンバク』っていったい誰なのよ!?
「いずれにせよ、貴殿に聞きたいことは以上だ。
約束通り帰してやろう」
「マ、マジか…!? ふう…」
「ええー本当に帰すのー?」
オズベルクが一つため息をついて、魔物に勧告する。
喜ぶ梟熊と残念がるカーティスが対照的だ。
…まさかあの子本当に食べようとしてたの?
すると、オズベルクの口元が微かに歪んだ。
「せっかくだ、我輩が送ってやろう」
「え」
「『流水流星』」
「ゴボボボボッ!?」
あっ、梟熊が水に呑み込まれた。
「『魔族の国』はおおよそこちらの方角だったか。
じっくりと空の旅を楽しんでくれたまえ」
「ボゴゴゴー!!!!」
バビュッ!
オズベルクは水に包んだ魔物を空に撃ち出すと、パンパンと手を払った。
…えげつないわねこのオジサン…。
「「アハハハハハハ!!!」」
そしてカーティスと紅の騎士は、今の光景を腹を抱えて爆笑していた。
その際、これまで一緒に行動を共にしていたドノヴァンの偵察隊とは別れることになった。
理由を聞くと、オズベルクの無事を確認できたことと、元々の任務である魔族の〝本隊〟を確認するためだそうだ。
「それでは、我々は偵察の任に戻る。
フレデリカさんのおかげで早く仕事をこなせそうだ」
「ああ! ドラゴンに乗っかれなかったのはちょっと残念だったけどな。
あとでまた会おうぜ!」
「分かったわ。気を付けてねアンタ達」
「バイバーイ!」
「無理はするなよ、貴殿ら」
手を振って若きドノヴァンの偵察隊を見送る。
久しぶりに活気豊かな男子と共闘したせいか、ガルドの実家が恋しくなった。
…元気にしてるかしら、皆。
「さて、貴殿らにはいくつか質問がある。
まずは『梟熊』からだ。
カーティス、腕を離してやれ」
「はーい。逃げたら殺すから♪」
「ヒイッ!?」
オズベルクが指示を出すと、カーティスはニコニコと機嫌良さそうに捕らえていた魔物を地面へ転がした。
今は人の姿とはいえ、仮にもドラゴン。
それも二匹居る。
梟熊はガタガタと震えながら私たちを見上げた。
「な、何を聞くってんだ!?
俺はただの一兵卒なんだぞ!」
「そう慌てるな。
素直に答えればここから帰してやる」
「え!? 帰すの!?
てっきりワタシ食べて良いのかと思った…」
「アンタさっきミアの所でたらふく食べてたでしょ!
こんなの食ったらお腹壊すわよ!」
「食べ!? な、なんなんだよこのパーティ!?
イカれてやがる…」
「うんうん、ウチも完全に同意だよ」
おバカなカーティスのせいでさらに魔物が怯えてしまった。
尋問の時はこの子は外しておくべきね…。
「まず…貴殿らの目的は隣にいる『紅の騎士』か?」
オズベルクはのほほんと水魔法に浸かっている『紅の騎士』へ目配せる。
それに対して梟熊はコクンと頷いた。
「そ、そうだよ…!
まさか既に仲間がこんなに居るとは思わなかったが…」
「んん? ああ、別にこのニンゲンとドラゴンはウチらの仲間じゃないよ。
お前らが来るのを待ってる間に、退屈しのぎで遊んでただけですー」
「ああ? なんですって…?
ハッ、その退屈しのぎで捕まるマヌケなんだし、魔族たちが必死に追うまでの価値があるのかしら?」
半分挑発、半分本音で言ってやると、兜越しでも分かるくらい騎士は目を細めた。
同時に声のトーンも数段下がる。
「…言っとくけど、ウチの本気はまだまだあんなモノじゃないから。
ウチが居なきゃカンバクだって〝国〟から逃げおおせられなかったんだから」
「私にあっけなく得物を吹っ飛ばされたザコ女が何か言ってるわね」
「…上等だよ…。
お前、素手で引き裂いてやろうか…?」
「やってみなさいよ紅のちんちくりん」
梟熊《オウルベア》そっちのけで睨み合っていると、オズベルクが間に入ってきた。
「イタズラに刺激をするな。
この魔族の言う通り、先の闘いの結果は欺瞞があったからだ。
我輩の見立てでは、単騎でドラゴン十体は相手取れるほどの戦闘力を保有している」
「なっ…!?」
「おお~。ただのヘンタイ海竜にしてはなかなか正確な観察眼だね。
ちょっと見直しちゃったよ」
紅の騎士は関心したのか、水の中で手を叩いて拍手をしてきた。
な、なによ…。
私だって頑張って修行してるってのに、オズベルクはこんなヤツの方が強いって言うの!?
「少々話の腰を折られてしまったが、再び貴殿に訊ねよう。
ズバリ聞くがそちらの勢力は如何ほどだ?」
オズベルクはしゃがみこんで、改めて梟熊へ質問した。
それまでポカンとしていたのか、慌てて答え始める。
「いっ、〝一師団〟だ…!
今回は〝ラドン師団長〟自らご出陣なさ…って、よく考えたらお前らドラゴンが俺らの進軍を散々ジャマしてきたんだから、そんくらい知ってんだろ!?
キャンプを壊すわ、橋を落とすわ、挙句には俺らの食料までオシャカにしやがって…!」
怯えた目から一転、今度は怒ってオズベルクに詰め寄った。
ド、ドラゴンにしてはずいぶんセコいけど、地味に効く嫌がらせね…。
「援軍が来ていないか気になったからな。
一個の師団の勢力はせいぜい約100~500。
正確な数は数えていないが、今回出てきている軍はそいつらだけか?」
「ええ!? そんなに!?」
「なんだよ〝だけ〟って…。
そうだよ! これでも充分大所帯だろうが!」
い、一師団って…!
それほどまでの数を用意しないと紅と黒の騎士を見つけられないって言うの?
というかまずいわ…、百も居ない村の戦力だけじゃとても魔族に太刀打ちできない!
「に、逃げるしかないわよオズベルク!
いくら何でもその数じゃかないっこないわ!
急いでドノヴァンのみんなに伝えて避難を…」
「それを決めるのは〝彼ら〟だ。
先の若き戦士たちは何のために貴殿に同行したと思っている?」
ピシャリとオズベルクは私の意見を覆った。
そりゃあ気持ちは分からないでもないけど、本来魔族が人里の近くに出現しただけでも、避難指示が出てもおかしくない。
ましてドノヴァンの近くには頼れる公共の警察機関が存在しない。
それなら傭兵の私が…!
「ふふっ、舐められたものだね。
その程度の数でウチらを捕まえられるとでも思ってるのかな?」
「な、なんだと?」
「お前たちはどうもカンバクよりもウチを警戒して追って来てるようだけど…本当に怖いのはアイツだよ」
「…………」
またもや紅の騎士が口を挟む。
さっきから言ってる『カンバク』っていったい誰なのよ!?
「いずれにせよ、貴殿に聞きたいことは以上だ。
約束通り帰してやろう」
「マ、マジか…!? ふう…」
「ええー本当に帰すのー?」
オズベルクが一つため息をついて、魔物に勧告する。
喜ぶ梟熊と残念がるカーティスが対照的だ。
…まさかあの子本当に食べようとしてたの?
すると、オズベルクの口元が微かに歪んだ。
「せっかくだ、我輩が送ってやろう」
「え」
「『流水流星』」
「ゴボボボボッ!?」
あっ、梟熊が水に呑み込まれた。
「『魔族の国』はおおよそこちらの方角だったか。
じっくりと空の旅を楽しんでくれたまえ」
「ボゴゴゴー!!!!」
バビュッ!
オズベルクは水に包んだ魔物を空に撃ち出すと、パンパンと手を払った。
…えげつないわねこのオジサン…。
「「アハハハハハハ!!!」」
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