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第203話:連絡手段

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白竜ホワイト・ドラゴンと別れ、再び山を登り出した俺たち。
 ドラゴンの言うことを信じるってのも癪だが、もともと俺たちの目的は『紅と黒の騎士』だ。
 フレイ達も俺らを連れ去った方角さえ見ていたなら、きっと山頂を目指すだろうという結論に至った。


「へぇ~そんなにご利益あるのか!」

「はい。霊力エーテルを神聖視する人は多いですからね。
 必ずっていいほどお客さんはお社に訪れてます」

「神ではなく種族の先祖が祀られている…か。
 ふむ、なかなか物珍しい祭祀だな」


 そして今はドラゴンの事なんかさっさと忘れて先ほどまで居た、神社っぽい所についてイザークと花を咲かせていた。

 やしろの名は『ドノヴァン・シュライン』。
 なんでも亜人の国ヘルベルクの観光名所として登録されているらしく、以前『ノルン広報』という新聞社まで取材しに来たとか。
 …ちなみにその企業には、俺の事も(勝手に)掲載されたので覚えがある。
 イザークには言わないけど。


「だからさっきの白いドラゴンがお社に着地した時は相当焦りましたよ!
 あの巨体で一瞬で壊されると思いましたから…」

「フフ、君たちにとって大切な場所なんだな。
 …だが、それにしてもあの白竜ホワイト・ドラゴン…。
 いったい奴は何者なんだ?」


 あ、クソ。話題がドラゴンに戻りやがった。


「さあ…あんな爺ギャル皆目見当もつかないぜ。
 魔族ではないっぽいけど…」

「でもただ〝サバト〟に呼ばれてきた魔物…というわけでもなさそうですね。
 『派遣』とか言っていましたし…」


 ウーンと、頭を傾げる俺たち。
 奴の正体は気にはなるけど、正直二度と会いたくないという思いの方が強い。
 俺、ドラゴンもギャルも苦手なので。


「…あくまで私の推測だが、ヤツは何かしらの〝組織〟に属しているのではないだろうか?」

「「組織?」」


 後ろ向きに飛びながら思案するルカに、俺とイザークはオウム返しに聞き返した。
 組織だって…?


「ああ。先の言動からどうやら奴も我々と同じく『紅と黒の騎士』を追っているに違いない。
 魔物の力比べを行なっているならば、それに乗じて飛び込んできた…そう考えられないか?」

「…ってことはなに?
 まさかあいつ〝潜入捜査〟してるってことか?」

「そうだ。目的は分からんがな」

「な、なんだか話が壮大になってきましたね…。
 族長のお耳へ入れなければなりません…」


 潜入捜査にしては随分派手なドラゴンに思えたけどな…。
 あんなデカブツ、嫌でも目立つだろうに。

 はぁ…、こんなときオズのおっさんがいれば何か分かったかもしれないのになぁ。
 あのオヤジいつも肝心なとこで居ないんだから。


「まぁ、それはそれとしてどうする?
 今日中にはこの山登り切れないと思うけど…。
 ある程度まで進んだら、そこに座標置いて一旦村に戻らねぇ?」

「え、ええっ!?
 こんなに離れてるのに村へ戻れるのですか!?」

「もちろん可能だ。
 そうだな…、先の戦闘で消費したエネルギーも補給しなければならないからな。
 私はその案を支持する」

「イザークは?」

「そうして頂けるのでしたらぜひ!
 族長と戦士長へ今の状況をお伝えしなければ!」


 よし、決まりだ。
 ただ、唯一の心残りはフレイ達に俺らの無事を知らせらんねぇことだ。
 あっちは人数も居るし簡易キャンプキットをブレイズに背負わせていたから、夜は無事に明かせられるとは思うけど…。
 連絡できないことがなんとももどかしいぜ。

 あーあ…ここにネット通ってて、かつアイツらもスマホ持ってたら連絡できたのになぁ…。

 ……ん、いや待てよ…?
 少し手間と金を掛ければあいつらに連絡できるんじゃないか?


「零人? どうかしたのか?」

「…なぁ、フレイ達にも俺たちの状況を知らせるべきだよな?」

「ああ、きっと奴らも心配してるからな。
 もしできれば転移テレポートで合流したいが…。
 さすがにここまで時間も経てば、別れた場所から既に移動しているだろう…。
 …ん? まさか、何か手があるのか?」


 ルカが目を見開いて俺の肩を掴んできた。
 まあまあ、落ち着けよ相棒。


「あっ、分かりました!
 レイトの〝使い魔〟を送るんですね!」

「使い魔? なにそれ?」

「えっ、違うんですか?
 魔物と話せると聞いていたので、てっきり山の魔物を捕まえて伝達役に使役するのかと…」

「俺は『調教士テイマー』じゃないよ…。
 そんな原始的な連絡手段よりもっと確実な方法がある。
 それは…」

「「それは?」」


 妙にワクワクした目で二人が俺の言葉を待っている。
 肩透かししなけりゃ良いけど。
 俺は腰にぶら下げている〝ある物〟を二人に見せつけた。


「こいつだ」

「…? 竜の仮面…ですか?」

「…なるほど! よく考えたじゃないか零人!」


 イザークが分からないのは当然として、ルカは一瞬で俺がやろうとしていることに気付いた。
 さすが宝石スフィア。頭が良いだけある。


「えっ!? ルカさんは分かるのですか!?
 それはいったい…?」

「アハハ…、まあ今はとりあえず見ててくれ。
 あとで詳しく説明すっから」


 俺は手に持った青い竜の仮面を顔に装着した。
 そして起動コードを口にする。


「『仮面遊戯ペルソナ』」

ボウッ!

「えっ!? こ、この魔力マナは…?」

「『占術士フォーチュナー』のエネルギーだ。
 彼が使うところを見るのは久しぶりだな」

「やっぱりレイトは『占術士フォーチュナー』だったんですね!」

「いや違うが…。まあ、いいから見ていろ」


 仮面から出たエネルギーと共に、中性的な声が頭の中に響く。


<ユーザー認証、マミヤ・レイトを確認。
 水竜アクア・ドラゴンモード起動>


 さて、この次よ。本当は耳塞ぎたい。


<よお! マミヤ様! 久しぶりだな!!>

「ちっ、相変わらずうるせぇ口調だな。
 もっと黒獄犬ヘルハウンドみたく丁寧に喋れないのか?」

<あいつはダメだ! 大人しすぎてつまんねぇ!
 それで!? 今日はどいつをぶっ飛ばし…あん?
 マミヤ様、どこにも敵対ターゲットが居ねぇぞ?>

「ああ、今回は闘いのために起動したわけじゃないんだ。
 モネと連絡を取りたい。繋いでくれるか?」

<はああ!?
 ま、まさかこの俺様を電話代わりに使おうってのか!?
 冗談じゃねえぜ!
 やっと使ってくれたと思ったらそんな役かよ!>

「仮面のくせにピーピーうるせぇ!
 金は(モネが)払ってるんだから文句言うなよ!
 …あんま聞き分け悪いと『再始動リブート』すんぞ」

<なに!?>


 これだからコイツ嫌なんだよ!
 なんで俺は仮面にまでドラゴンと関わらなきゃいけないんだ。


「…すみません。
 レイトはさっきから誰とお話をしているんですか?
 独り言をブツブツ言っているんですが…」

「あの仮面には『人格』とやらが搭載されていてな。
 過去に私も話したことがあるが、いま彼が会話をしている相手は『水竜アクア・ドラゴン』の人格なのだ」

「は、はあ…??」


 ルカがイザークに説明してくれてるようだ。
 そして仮面は俺の脅し?に悩んだ末、やっと答えを出した。


<ちっ、ユーザー様の命令は絶対だからな…。
 分かったよ。
 ただ、『緊急回線ホットライン』はかなり金が掛かるがそれでもいいのか?>

「金ならあるからさっさとしてくれ。
 こっちも忙しいんだ」

<了解だぜ。…『緊急回線ホットライン』起動。
 サブID:492338よりメインID:201570へ。
 回線をお繋ぎいたします。
 しばらくお待ちください>


 あれ? いきなり口調が代わった。
 起動時のデフォルトの口調だ。
 しんとした空白の時間を少し挟んでしばらくすると、およそ一ヶ月ぶりの…小生意気そうな女の声が頭に届いた。


<マミヤ君っ!!>








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