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第182話:ドラゴンの口論
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「おっさん!」
「それはこっちのセリフだぜオズベルク!
何回ニアミスする気だてめェは」
入室した人物は海竜オズベルク・ダアト。
リックの言う通りだぜ、さんざんほっつき歩いて…って、ドラゴンは皆そういう性格か。
「うふふ、お疲れさまですわオズベルクさん。
本日の戦果はいかがでしたか?」
「うむ、上々だ。
若人たちはみな、霊力に頼らない戦法を身に付けつつある」
「まあ、本当ですか! 良かったわ…。
エドウィンとの差に落ち込んでいる子たちが居たから…」
おっさんがマキオンさんと話をしている。
極端に強い奴が一人いると、他の戦士が自信を無くす…おや、どこかで聞いた話だな?
「…? なによ、レイト?
こっち見てニヤニヤして…。キモいんですけど」
「真顔どストレートに言われるとけっこう傷つくなそれ」
もっとも、ガルドの男どもの方は、フレイの婚約を賭けた特殊な訓練のおかげで、モチベは満ちているけどね。
この村ではおっさんが発破をかけているわけか。
「ところで…、下のロビーに貴殿の伴侶と息子が倒れていたがあれは貴殿の仕業か?」
「うふふ、彼らは少し『お昼寝』をしているだけですわ。
お気になさらずとも大丈夫ですよ」
「両者とも白目を剥いていたが…?」
…なんだろう、さっきまで俺の中での彼女はお淑やかなイメージがあったけど、今はなぜかあの嘲笑にドキリと反応してしまう。
この胸の高鳴りはいったい…?
「あ、あのっ…!」
「ん? 貴殿は…」
席から立ち上がって、おっさんの所へわざわざ駆け寄ったのは同じ竜族であるカーティス。
コイツがおっさんに会うのはグロック村で助けられて以来になるのか。
カーティスが俺らに同行する羽目になった原因でもある。
「ワタシのこと、覚えてる?」
「もちろんだ。グロックに来た赤竜だろう?
また人里に悪さを働くというなら受けて立つぞ」
ふふん、と余裕そうに応えるおっさん。
…また緊急クエストを起こさせるつもりかこのオヤジ。
「ち、ちがうちがう!
今そんなことする力は無いし、仮にできてもマー坊から『おしおき』されちゃう…」
「マー坊? …ああ、レイトのことか。
ほう…とうとうドラゴンを従える力まで得たか」
「なに気色悪ぃこと抜かしてんだ!
ソイツが勝手についてきたんだよ!」
ドラゴンと仲良くなる能力なんて死んでもゴメンだ!
あの鱗の肌を見るだけで鳥肌モンなのに。
「ワタシがマー坊について行ったのは、オマエに会って借りを返すためだよ!
海竜なら分かるでしょ?
ワタシたちドラゴンにとって借りは…」
「フン、まだまだ青いな。
そんなくだらないプライドは『豚魔獣』にでも食わせてしまえ」
「ええ!?」
カーティスの言葉をバッサリと斬るおっさん。
ドラゴンは気ままで自由な性格ではあるけど、一方的な施しを受けることを嫌う個体が多い。
もちろん彼女もその一人だ。
だからおっさんにしては意外な意見だな…。
「どうしてどうして!?
ワタシ、オマエに命を救われたよ…?
こんな大きな借りを残しておくなんて…」
「竜の話を聞きたまえ。
元より、我輩は貴殿を救ったつもりなどない。
仕留めるつもりだったがたまたま黒竜が襲撃してきたのだ。
貴殿はうまく場の混乱に乗じて脱出しただけのこと」
「ウ、ウソだっ!
あの時明らかにワタシを庇って闘ってた!
それにワタシみんなから聞いたよ!
黒竜の正体が悪魔竜だって…。
オマエは…魔族から守ってくれたんだ!」
「少々驕りが過ぎるな、若き赤竜よ。
我輩の起こす行動は全て世界の調和のため…。
それを乱す存在ならば、魔族であろうと魔物であろうと我輩は…容赦をしない」
「でも…、でも…っ!!」
……えっと、話が並行線になってきたな。
どうあっても自分を助けたと認めさせたいカーティスと、あくまで自身の信条のために闘ったと言い張るおっさん。
参った…、ドラゴン同士が口論になるとここまでもつれるのか。
(セリーヌ、セリーヌ)
ちょいちょいと、二人の言い争いを眺めているネコ娘に手招きをする。
すぐに気づいてこちらにやってきた。
(どうしたのニャ?)
(このままじゃ埒が明かねぇ。
悪いけどカーティス連れて退席してくれるか?
少し頭冷やさせよう)
(ガッテンニャ)
トコトコと、セリーヌはカーティスの所へ走っていく。
「カーティスちゃん、カーティスちゃん」
「なに!? ジャマしないでよセリ子!」
「さっきの宿屋さんの食事処に、数量限定で『クルゥエッグパフェ』ってスイーツがあるみたいなのニャ。
良かったらあたしと一緒に行かないかニャ?」
「え!? ホント!?」
へえ、そんなのあったのか。
するとカーティスの興味がそっちに傾いたのか、おっさんから離れた。
やるな、一発で引き離したぞ。
「もちろん行く行く!」
「ニャハハ、それじゃあ宿に戻ろうニャ」
「待て、私も同行を「お前まで釣られんな!」」
ガシッ!
あ、危ねぇ!
ルカもさり気なくセリーヌたちに付いて行こうとしやがったぜ。
すぐ食べ物に食いつくんだから…。
「数量限定…。パフェ…」
ルカは俺に羽交い締めにされながら、部屋から出ていくセリーヌとカーティスを恨めそうに見送った。
「それはこっちのセリフだぜオズベルク!
何回ニアミスする気だてめェは」
入室した人物は海竜オズベルク・ダアト。
リックの言う通りだぜ、さんざんほっつき歩いて…って、ドラゴンは皆そういう性格か。
「うふふ、お疲れさまですわオズベルクさん。
本日の戦果はいかがでしたか?」
「うむ、上々だ。
若人たちはみな、霊力に頼らない戦法を身に付けつつある」
「まあ、本当ですか! 良かったわ…。
エドウィンとの差に落ち込んでいる子たちが居たから…」
おっさんがマキオンさんと話をしている。
極端に強い奴が一人いると、他の戦士が自信を無くす…おや、どこかで聞いた話だな?
「…? なによ、レイト?
こっち見てニヤニヤして…。キモいんですけど」
「真顔どストレートに言われるとけっこう傷つくなそれ」
もっとも、ガルドの男どもの方は、フレイの婚約を賭けた特殊な訓練のおかげで、モチベは満ちているけどね。
この村ではおっさんが発破をかけているわけか。
「ところで…、下のロビーに貴殿の伴侶と息子が倒れていたがあれは貴殿の仕業か?」
「うふふ、彼らは少し『お昼寝』をしているだけですわ。
お気になさらずとも大丈夫ですよ」
「両者とも白目を剥いていたが…?」
…なんだろう、さっきまで俺の中での彼女はお淑やかなイメージがあったけど、今はなぜかあの嘲笑にドキリと反応してしまう。
この胸の高鳴りはいったい…?
「あ、あのっ…!」
「ん? 貴殿は…」
席から立ち上がって、おっさんの所へわざわざ駆け寄ったのは同じ竜族であるカーティス。
コイツがおっさんに会うのはグロック村で助けられて以来になるのか。
カーティスが俺らに同行する羽目になった原因でもある。
「ワタシのこと、覚えてる?」
「もちろんだ。グロックに来た赤竜だろう?
また人里に悪さを働くというなら受けて立つぞ」
ふふん、と余裕そうに応えるおっさん。
…また緊急クエストを起こさせるつもりかこのオヤジ。
「ち、ちがうちがう!
今そんなことする力は無いし、仮にできてもマー坊から『おしおき』されちゃう…」
「マー坊? …ああ、レイトのことか。
ほう…とうとうドラゴンを従える力まで得たか」
「なに気色悪ぃこと抜かしてんだ!
ソイツが勝手についてきたんだよ!」
ドラゴンと仲良くなる能力なんて死んでもゴメンだ!
あの鱗の肌を見るだけで鳥肌モンなのに。
「ワタシがマー坊について行ったのは、オマエに会って借りを返すためだよ!
海竜なら分かるでしょ?
ワタシたちドラゴンにとって借りは…」
「フン、まだまだ青いな。
そんなくだらないプライドは『豚魔獣』にでも食わせてしまえ」
「ええ!?」
カーティスの言葉をバッサリと斬るおっさん。
ドラゴンは気ままで自由な性格ではあるけど、一方的な施しを受けることを嫌う個体が多い。
もちろん彼女もその一人だ。
だからおっさんにしては意外な意見だな…。
「どうしてどうして!?
ワタシ、オマエに命を救われたよ…?
こんな大きな借りを残しておくなんて…」
「竜の話を聞きたまえ。
元より、我輩は貴殿を救ったつもりなどない。
仕留めるつもりだったがたまたま黒竜が襲撃してきたのだ。
貴殿はうまく場の混乱に乗じて脱出しただけのこと」
「ウ、ウソだっ!
あの時明らかにワタシを庇って闘ってた!
それにワタシみんなから聞いたよ!
黒竜の正体が悪魔竜だって…。
オマエは…魔族から守ってくれたんだ!」
「少々驕りが過ぎるな、若き赤竜よ。
我輩の起こす行動は全て世界の調和のため…。
それを乱す存在ならば、魔族であろうと魔物であろうと我輩は…容赦をしない」
「でも…、でも…っ!!」
……えっと、話が並行線になってきたな。
どうあっても自分を助けたと認めさせたいカーティスと、あくまで自身の信条のために闘ったと言い張るおっさん。
参った…、ドラゴン同士が口論になるとここまでもつれるのか。
(セリーヌ、セリーヌ)
ちょいちょいと、二人の言い争いを眺めているネコ娘に手招きをする。
すぐに気づいてこちらにやってきた。
(どうしたのニャ?)
(このままじゃ埒が明かねぇ。
悪いけどカーティス連れて退席してくれるか?
少し頭冷やさせよう)
(ガッテンニャ)
トコトコと、セリーヌはカーティスの所へ走っていく。
「カーティスちゃん、カーティスちゃん」
「なに!? ジャマしないでよセリ子!」
「さっきの宿屋さんの食事処に、数量限定で『クルゥエッグパフェ』ってスイーツがあるみたいなのニャ。
良かったらあたしと一緒に行かないかニャ?」
「え!? ホント!?」
へえ、そんなのあったのか。
するとカーティスの興味がそっちに傾いたのか、おっさんから離れた。
やるな、一発で引き離したぞ。
「もちろん行く行く!」
「ニャハハ、それじゃあ宿に戻ろうニャ」
「待て、私も同行を「お前まで釣られんな!」」
ガシッ!
あ、危ねぇ!
ルカもさり気なくセリーヌたちに付いて行こうとしやがったぜ。
すぐ食べ物に食いつくんだから…。
「数量限定…。パフェ…」
ルカは俺に羽交い締めにされながら、部屋から出ていくセリーヌとカーティスを恨めそうに見送った。
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