179 / 243
第176話:兄と幼なじみ
しおりを挟む
「全敵性存在の殲滅を確認。
作戦成功だ。お疲れ様」
「あいよー、お疲れさん」
残った黒獄犬の残党をみんなで掃討して、ようやくひと息入れられた。
何匹か逃げて行っちまったが、あの乱戦の場では仕方ない。
合体を解除して互いを労っていると、先ほど単眼巨人をブチのめしたエドウィンさんがこちらにやって来た。
「レイト殿。君たちの支援に感謝しよう。
誇り高きドノヴァンの戦士を代表して礼を言わせてもらう。
改めて、エドウィン・センチュリーだ。
よろしくな」
「へっ…!?
あ、ど、どうも…、間宮 零人っす…」
「零人? なぜ声が上擦っている?」
ルカが不思議そうに尋ねる。
し、仕方ないだろ!
この人すげぇキラキラしててアイドルみたいっつーか…なんかアガッちゃうんだよ。
「そして、君が『蒼の宝石』であるルカ殿か。
話はあらかた聞いているぞ。
なんでも下賎な魔族たちの王、『紅の魔王』に兄君が囚われているらしいな?」
「ああ、そうだ。
それと、私の正式名称は『翔の宝石』だ。
呼び名はルカで構わないがな」
「そうか。
ではよろしくルカ殿…「レイト!」」
互いに自己紹介を済ませると、他の仲間たちもこちらにやって来た。
みんな(カーティス以外)無事なようで良かった。
…あれ? ザベっさんの表情が固いような…?
「どうした? ザベ…」
ザベっさんに声を掛けようとした途端、異変は起きた。
「おおおお!そこに居るのはエリーかい!?
待ってたよエリーちゅわああああん!!!!」
「「「!?」」」
あ!? なんだぁ!?
今のきたねぇ声はどこから…
「あ…えーと、エドウィン…さん?」
目の前だった。
先ほどすげぇ爽やかに挨拶をしていたイケメンが、地下アイドルの追っかけをしてるおっさんみたいなテンションに変貌した!
「エリーたぁぁぁん!!!!
会いたかったよぉぉぉぉ!!!」
バッ!
「あっ!? エドウィンさん!?」
先ほど闘いで見せてくれた跳躍の如く、エドウィンさんはザベっさんに向かって一直線に突っ込んだ!
ドゴォッ!!!
「ごぶらぁっ!!」
「「「ええええ!?」」」
向かって行ったエドウィンさんを思い切り蹴っ飛ばした!
あれ!? その人兄貴なんじゃないの!?
腹を蹴られて地面にうずくまるお兄さんを、ザベっさんは氷のような冷たい眼差しで見下ろした。
「…お久しぶりです、兄様。
私は全然会いたくありませんでしたが」
「『ニイサマ』!?
な、何を言っているんだエリー!
ホラ、いつもみたいに『にぃに』と…」
バゴォン!!!
「「「!?」」」
「ぐふっ…」
エドウィンさんはセリフを完結することなく、ザベっさんの鉄拳に沈んだ…。
その圧倒的なまでの暴力行為に隣にいたフレイがたじろいだ。
「な、なにしてんのよエリザベス?
その人アンタの家族でしょ…?」
「いえ、このような暑苦しいエルフなど存じ上げません」
あ、あれぇ?
久しぶりの帰省って言ってたから、なんやかんや家族に会えるの楽しみにしてるもんだと思って…いや、待て。
そういえば昨日の夜、家族のこと聞いたらこの人の話題ひとっっっつも出なかったな…。
つまり、それほど…
「私、キライなので」
☆☆☆
「『溺愛』されてる?」
「はい。…忌々しいことに」
数分後。
キャラバンを預けたシルヴィアとセリーヌもこちらに合流してきた。
他の戦士たちと共にドノヴァン村まで徒歩で移動中だ。
ちなみに今話題にしているエドウィンさんはガルドのキャラバンに載せてあげている。
…ただいま絶賛気絶してるからね。
「戦士長は昔から彼女の事になると我を忘れてしまい…僕たちも久しぶりにあんな彼を見ました。
それにエリザベスも最初はよく彼の後をついていって…」
「イザーク?
余計なことは口にしないようにお願いします」
「は、はい。
というか君もずいぶん変わったよね…。
すごく大人しくなってるし…」
俺とザベっさん、そして今『イザーク』と呼ばれた男と一緒に肩を並べて歩いている。
体育系なエドウィンさんとは違い、こちらの彼は柔らかい印象を持たせる大人しめの男だ。
彼も同じ村の戦士で、ザベっさんの幼なじみでもある。
軽くエドウィンさんのことを訊くと、どうやら重度のシスコンらしく、彼女が産まれてから一心に愛情を注いできたらしい。
しかし、ザベっさんは行き過ぎた愛情は受ける側にとっては迷惑でしかないと斬り捨てた。
彼からは物心ついてからも、ご飯の補助や着替え、果てには『洗浄』までしてもらったのだとか。
そして彼女は思春期を迎えるより前に、お兄ちゃん離れをして…というか嫌ってしまった。
「そうだ、昨日軽くは聞いたけど、子供の頃のザベっさんってどんな感じなんだ?」
「えっと…貴方のことはレイトさんって呼んでもいいですか?」
「『さん』は付けなくていいよ。
気軽に『零人』って呼んでくれ」
「レイト…。うん、良い名前ですね!」
イザークは歩きながら右手を差し出してきた。
その握手に応じると、彼は人懐っこい笑顔を向けてくれた。
「フフ、村に着いてから昔の彼女のことをゆっくりお話しますよ。
それまで貴方の旅路と…この給仕服を着たエリザベスについて詳しく聞かせてください!」
「ああ、いいぜ。
つっても、ザベっさんとはまだほんの1ヶ月くらいの付き合いだけどな」
「お二方…。
傍に本人が居ることをお忘れですか?」
居心地の悪そうなザベっさんを差し置いて、俺たちは彼女を話題にしばらく花を咲かせた。
作戦成功だ。お疲れ様」
「あいよー、お疲れさん」
残った黒獄犬の残党をみんなで掃討して、ようやくひと息入れられた。
何匹か逃げて行っちまったが、あの乱戦の場では仕方ない。
合体を解除して互いを労っていると、先ほど単眼巨人をブチのめしたエドウィンさんがこちらにやって来た。
「レイト殿。君たちの支援に感謝しよう。
誇り高きドノヴァンの戦士を代表して礼を言わせてもらう。
改めて、エドウィン・センチュリーだ。
よろしくな」
「へっ…!?
あ、ど、どうも…、間宮 零人っす…」
「零人? なぜ声が上擦っている?」
ルカが不思議そうに尋ねる。
し、仕方ないだろ!
この人すげぇキラキラしててアイドルみたいっつーか…なんかアガッちゃうんだよ。
「そして、君が『蒼の宝石』であるルカ殿か。
話はあらかた聞いているぞ。
なんでも下賎な魔族たちの王、『紅の魔王』に兄君が囚われているらしいな?」
「ああ、そうだ。
それと、私の正式名称は『翔の宝石』だ。
呼び名はルカで構わないがな」
「そうか。
ではよろしくルカ殿…「レイト!」」
互いに自己紹介を済ませると、他の仲間たちもこちらにやって来た。
みんな(カーティス以外)無事なようで良かった。
…あれ? ザベっさんの表情が固いような…?
「どうした? ザベ…」
ザベっさんに声を掛けようとした途端、異変は起きた。
「おおおお!そこに居るのはエリーかい!?
待ってたよエリーちゅわああああん!!!!」
「「「!?」」」
あ!? なんだぁ!?
今のきたねぇ声はどこから…
「あ…えーと、エドウィン…さん?」
目の前だった。
先ほどすげぇ爽やかに挨拶をしていたイケメンが、地下アイドルの追っかけをしてるおっさんみたいなテンションに変貌した!
「エリーたぁぁぁん!!!!
会いたかったよぉぉぉぉ!!!」
バッ!
「あっ!? エドウィンさん!?」
先ほど闘いで見せてくれた跳躍の如く、エドウィンさんはザベっさんに向かって一直線に突っ込んだ!
ドゴォッ!!!
「ごぶらぁっ!!」
「「「ええええ!?」」」
向かって行ったエドウィンさんを思い切り蹴っ飛ばした!
あれ!? その人兄貴なんじゃないの!?
腹を蹴られて地面にうずくまるお兄さんを、ザベっさんは氷のような冷たい眼差しで見下ろした。
「…お久しぶりです、兄様。
私は全然会いたくありませんでしたが」
「『ニイサマ』!?
な、何を言っているんだエリー!
ホラ、いつもみたいに『にぃに』と…」
バゴォン!!!
「「「!?」」」
「ぐふっ…」
エドウィンさんはセリフを完結することなく、ザベっさんの鉄拳に沈んだ…。
その圧倒的なまでの暴力行為に隣にいたフレイがたじろいだ。
「な、なにしてんのよエリザベス?
その人アンタの家族でしょ…?」
「いえ、このような暑苦しいエルフなど存じ上げません」
あ、あれぇ?
久しぶりの帰省って言ってたから、なんやかんや家族に会えるの楽しみにしてるもんだと思って…いや、待て。
そういえば昨日の夜、家族のこと聞いたらこの人の話題ひとっっっつも出なかったな…。
つまり、それほど…
「私、キライなので」
☆☆☆
「『溺愛』されてる?」
「はい。…忌々しいことに」
数分後。
キャラバンを預けたシルヴィアとセリーヌもこちらに合流してきた。
他の戦士たちと共にドノヴァン村まで徒歩で移動中だ。
ちなみに今話題にしているエドウィンさんはガルドのキャラバンに載せてあげている。
…ただいま絶賛気絶してるからね。
「戦士長は昔から彼女の事になると我を忘れてしまい…僕たちも久しぶりにあんな彼を見ました。
それにエリザベスも最初はよく彼の後をついていって…」
「イザーク?
余計なことは口にしないようにお願いします」
「は、はい。
というか君もずいぶん変わったよね…。
すごく大人しくなってるし…」
俺とザベっさん、そして今『イザーク』と呼ばれた男と一緒に肩を並べて歩いている。
体育系なエドウィンさんとは違い、こちらの彼は柔らかい印象を持たせる大人しめの男だ。
彼も同じ村の戦士で、ザベっさんの幼なじみでもある。
軽くエドウィンさんのことを訊くと、どうやら重度のシスコンらしく、彼女が産まれてから一心に愛情を注いできたらしい。
しかし、ザベっさんは行き過ぎた愛情は受ける側にとっては迷惑でしかないと斬り捨てた。
彼からは物心ついてからも、ご飯の補助や着替え、果てには『洗浄』までしてもらったのだとか。
そして彼女は思春期を迎えるより前に、お兄ちゃん離れをして…というか嫌ってしまった。
「そうだ、昨日軽くは聞いたけど、子供の頃のザベっさんってどんな感じなんだ?」
「えっと…貴方のことはレイトさんって呼んでもいいですか?」
「『さん』は付けなくていいよ。
気軽に『零人』って呼んでくれ」
「レイト…。うん、良い名前ですね!」
イザークは歩きながら右手を差し出してきた。
その握手に応じると、彼は人懐っこい笑顔を向けてくれた。
「フフ、村に着いてから昔の彼女のことをゆっくりお話しますよ。
それまで貴方の旅路と…この給仕服を着たエリザベスについて詳しく聞かせてください!」
「ああ、いいぜ。
つっても、ザベっさんとはまだほんの1ヶ月くらいの付き合いだけどな」
「お二方…。
傍に本人が居ることをお忘れですか?」
居心地の悪そうなザベっさんを差し置いて、俺たちは彼女を話題にしばらく花を咲かせた。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
W職業持ちの異世界スローライフ
Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。
目が覚めるとそこは魂の世界だった。
橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。
転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
旦那様に勝手にがっかりされて隣国に追放された結果、なぜか死ぬほど溺愛されています
新野乃花(大舟)
恋愛
17歳の少女カレンは、6つほど年上であるグレムリー伯爵から婚約関係を持ち掛けられ、関係を結んでいた。しかしカレンは貴族でなく平民の生まれであったため、彼女の事を見る周囲の目は冷たく、そんな時間が繰り返されるうちに伯爵自身も彼女に冷たく当たり始める。そしてある日、ついに伯爵はカレンに対して婚約破棄を告げてしまう。カレンは屋敷からの追放を命じられ、さらにそのまま隣国へと送られることとなり、しかし伯爵に逆らうこともできず、言われた通りその姿を消すことしかできなかった…。しかし、彼女の生まれにはある秘密があり、向かった先の隣国でこの上ないほどの溺愛を受けることとなるのだった。後からその事に気づいた伯爵であったものの、もはやその時にはすべてが手遅れであり、後悔してもしきれない思いを感じさせられることとなるのであった…。
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
裏切られたあなたにもう二度と恋はしない
たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。
あなたに相応しくあろうと努力をした。
あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。
なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。
そして聖女様はわたしを嵌めた。
わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。
大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。
その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。
知らずにわたしはまた王子様に恋をする。
悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活
束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。
初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。
ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。
それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる