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第144話:零人の『笑顔』
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なんてこった…!
まさかこんな所でまた外骨鎧と闘うことになるとは…。
頭を抱えていると、あご周りまで金属で覆われたハルートがキョトンと首を傾げた。
「もしかして、おめーらエグゾ見たことあんのか?」
「つい最近それと闘ったばかりだよ!
しかもステゴロでな!」
「ステゴロ…??
ぷっ…、なははははは!!!」
なっ…いきなり噴き出しやがった!
笑い涙を浮かべるハルートを訝しげに睨むと、カチカチと金属の篭手で拍手を送ってきた。
「まさか本気で言ってるわけじゃねーよな!?
武器も持たずにコイツと闘うなんて…。
もしそんなのが居たらホンモノのバカだよ!」
「バカで悪かったな!
こっちはやるしかなかったんだよ…」
はあ…一応、脆弱性見てみるか…。
右目にエネルギーを回して観察してみると、外見がスタイリッシュに肉抜きされていること以外はほとんど変わっていないな。
胸元からエネルギーが四肢に行き渡っている流れ方からして、やはり動力源である魔石がそこに内蔵されているのだろう。
ただ…武装に関しては分からない。
さっきこの女は『弄ってる』と抜かしやがった。
『仕込み鎧手』の技術があれにも盛り込まれているとしたら…。
「マキナ。
先の戦闘では、私たちは1つの存在として闘ったのだ。
したがって今回も同じ条件でやらせてもらう。
異論は認めん」
不安がる俺の肩を優しく抱いてきたルカ。
融解ならたしかに渡り合えそうだけど、ここガレージだから狭いんだよな…。
そんなルカの提案にハルートは頷いた。
「ああ、話は聞いてるぜ。
マミヤの本当の力はあの仮面じゃねー。
おめーの『転移』っつー能力のおかげで、ドラゴンだの鷲獅子だのをブチのめせたってな。
…ったく、こないだ仕事手伝いに来た時にゃ、おめーのノロケばっかで参ったぜ…」
あああっ!?ちょっと!
なに本人いる前で言ってくれてんだ!
「なっ…!?ほ、本当なのか零人!?」
「いっいやっ、そこまで熱く語ったつもりは…」
ガクガクと肩を揺さぶってきた。
ルカの口元がモニョモニョとしてる…。
恥ずかしいのと怒ってるの中間みたいな顔だ。
「ちょっとレイト!私は!?
私だって今までアンタと背中合わせて色んな奴と闘ってきたでしょ!」
ゲシッ!
「いだっ!」
ケツ蹴られた!
お尻をさすって後ろを見ると、フレイがものすごく頬を膨らませている。
こっちはめっちゃご立腹のようで…。
「コラ!痴話喧嘩は後にしろや!
いい加減テスト始めんぞ!」
カシュン!
ハルートの口周りを金属のマスクが覆った!
あれは顔面を守るための装甲なのだろうか?
「さあ構えな、マミヤ!」
腰を落とし右脚を引いて拳を上げるハルート。
…ふう、ボヤきはもうやめだ。
あくまでこれはテストだし殺し合いじゃない。
それなら身体の力を抜いて闘った方が良いパフォーマンスを演じられるってもんだ。
「零人、心を合わせろ。
だが、フィールドが極端に狭い。
今回は『同調』でいこう」
「ああ、了解だ。
フレイ、危ないから離れててくれ」
「もうっ!
いつも私を置いてけぼりにするんだから!」
そう言いつつしぶしぶと離れてくれるフレイ。
本当はガレージの外に避難しててほしいけど、多分そこまで素直には聞いてくれないな。
「「『同調』!」」
ボン!
「ほー…。なるほど、コイツが噂の…」
地上戦がメインのスタイルに変身。
蒼い残滓を周りに迸らせ、俺とルカは一つの身体となった。
今日はエネルギーの心配がない。
存分に力を振るえるぜ!
「私の声は聴こえるな?
ハルート・マキナと戦闘を開始する。
Type L…エネルギーの質からして、十中八九シュバルツァー級の雷属性を持ち合わせているはず。
油断するなよ、零人」
「まぁそんな固くなるなって。
せっかくおニューの装備があるんだ。
使い心地試してみっべ」
ガキャン!
両手のスナップをきかせ、左手に盾、右手に両刃剣を展開させる。
この手軽さは俺たちの戦法にはかなり相性が良いはずだ。
どこまであの外骨鎧に通用するかは分からないがな!
「あたいの装甲は頑丈だ。
遠慮しねーで斬りかかってきな!」
☆フレデリカ・シュバルツァーsides☆
「『雷光拳』!」
「右だ!弾け零人!」
「『流水反撃』!」
ギャアンッ!!
「『雷光撃』!」
「後ろへ!」
ブン!
ボォォンッ!!
「今だ!攻撃を叩き込め!」
「おう!うらあッ!」
キィン!!
「はっ!やるじゃねーか!」
合体したレイトとハルートによる、『テスト』が私の目の前で繰り広げられている…。
たがいに装備した金属と金属の攻防は、両者がぶつかる度に目がチカチカするような火花を生み出す。
そしてハルートの雷魔法が炸裂すると、ガレージ内をさらに派手に照らした。
…レイトのやつ、まさかこんなとんでもない女と闘っていたなんて…。
私も同じく雷属性が得意だから分かる。
あの子の魔力…下手したらママに匹敵するくらいのモノなんじゃ…?
「シールドの属性カット率は上々みてーだな。
うし、こっから少し荒くなるぞ!」
ハルートは両脚を開き、逆に両腕を目の前でクロスさせた。
…待って、あのポーズは…!
「『麻痺』!!」
ビビビビッ!!
ハルートの全身からバチバチと、静電気が弾けとんだ!
それだけではなく、あの子の背中から四対のロープ?が伸びている。
先っぽには3つの小さい鉤爪が付けられて、まるで蛇みたいにゆらゆらうごめいているわ…。
不気味ね…あれは何なのかしら?
「おい、もしかしてこれセリーヌの技じゃない?
なんかあれよりヤバそうだけど…」
「奴のマニピュレーターに注意しろ。
先ほどのエネルギーがそこへ収束された」
「分かった!」
ま、まにゅ…?
レイトは盾を前に構え、ジリジリと間合いを詰め始めた。
そんな彼を嘲笑うかのように、ハルートはハスキーながら高い笑い声を上げた。
「はははははっ!
ビビらずに向かってくるのは大したモンだ!
だが、シールドにばかり頼ってると…こーなるぜ?」
ビュッ!
「あぶねっ!!」
4つの内の1つのロープがレイトに向かって突っ込んだ!
ガキンッ!
反射的にレイトはその攻撃を盾で防ぐ。
すると…
「ん?…あばばばばば!!!!??
し、痺れるるるるる!!!!!」
ロープがくっついた盾からそのまま左腕に巻き付き、魔力を流れ込ませて攻撃してきた!
あのバカ!セリーヌの技知ってるでしょうに!
「零人!剣で切り落とせ!」
「あがががっ……!!…はあっ!!」
ザシュッ!
右の剣でロープを切った!
そして、転移を発動して少し彼女と距離をとった。
そうよ、それでいいわ。
無闇に突っ込むのは三流の戦士よレイト。
「…クソ、うまく力が入らねぇ…」
「くくくっ!うまく逃げたな。
だがマニピュレーターはもっとあるんだぜ?」
ビビビビビッ!!
ハルートは不敵に笑うと、さらに多くのロープが背中から生えてきた!
ちょ、ちょっと気持ち悪いわねアレ…。
「…零人。盾を格納し左の装備を変更しろ。
そしてあとは、私に任せてくれ。
私も慣れておかねばな」
「…?ああ、『あれ』か。
…よし、切り替えた!バトンタッチだ!」
「了解、意識を集中するんだ」
ボウ…!
レイトは巻き付いた左手首のロープを投げ捨て、鎧手を逆さまになるようにくるりと回した。
それと同時に、蒼い魔力が彼の全身を包むように覆う。
…あ、改めて見るとやっぱりすごく綺麗な魔力ね…。
「「『癒着』!」」
ボン!
「おおっ!?すげーなこりゃ!」
再び蒼い爆発を身体から起こして、〝彼女〟は変身した。
黒髪と蒼髪が半々に別れた、レイトたちの新しい姿だ。
ガキャン!ガキャン!
現在、身体の主導権を握っているルカは、両手首から剣を展開する。
そして挑発するように、左の刃をハルートに向けて手招きをした。
「次は〝私〟が相手だ。かかってこい」
「…!なるほど、そういうことか!
おもしれーヤツらだなおめーらは!!」
ヒュヒュヒュヒュッ!!
ハルートは愉しそうに、伸ばしたロープを全てルカに突っ込ませた!
あれは…捌くには数が多いわ!
「私を舐めるなよ。はあああっ!」
ガガガガガガガガッ!!!!!
ルカは全身をくまなく運動させ、襲い来るロープを全て剣でたたき落とした!
す、すごいわっ!!!
「マニピュレーターを全て弾きやがった!?
…もう1発くらいは当たると思ったんだが…。
とんでもねー技量を持ってやがるなオメー」
「フン…褒めても何も出ないぞ。
ところで、もうテストは終わりか?」
「いや…次でラストだ。
少し本気で相手したくなってきた。
両手をシールドにすることをオススメするぜ?」
そう言うと、ハルートは展開したロープを全て背中へ戻した。
そして僅かに膝を折った。
…今度は何をするつもり?
「…『雷光瞬撃』」
ドンッ!!
は、速…!?
一瞬で間合いを!!
「ルカ!左に避けろ!!」
「くっ!?」
ブォン!!
レイトの掛け声でルカは左側へ身体を投げた!
よ、良く今の反応できたわね…。
しかし、ハルートは間髪入れず、避けた先へ再び拳を振り下ろした!
「オラッ!!
そーやって逃げてばかりか!?」
「…チッ!」
ガキャン!
ルカは素早く左の鎧手をひっくり返して盾を展開した!
かろうじてハルートの拳を受け止めることに成功する…。
「『雷光連撃』!
オラオラオラオラオラ!!!」
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
な、なんて攻撃なの…!?
両手だけじゃなく、両脚も絡めて怒涛の連撃をルカに叩き込んでる!
ダメ…これ以上はムチャよ!!
「くっ、クソッ!この馬鹿力め!」
「ルカ!もっかい俺と代われ!
次は〝あっち〟でやるぞ!」
「りょ、了解…ッ!行動権を移譲する!」
ボン!
三度、蒼の爆発がガレージ内で発生する。
今度は髪が長くなった…『融解』だわっ!
「失せろっ!!」
ガキャアアン!!
「ぐっ!?なんだ今のパワーは…?」
や、やったわ!
左の盾を振って、体格差があるハルートを後ろへ弾き飛ばした!
すかさず右手首を回し両腕に盾を装備させて、ガツン!と、拳を合わせるようにたがいの盾をぶつけた。
そして、レイトの脚が地面から浮いて、ちょうどハルートの視線の高さに並ぶ…。
「よくもウチのルカをボコボコにしてくれたな。
…って、前にもこんな感じだったか?」
「へへ、そーいやそうだな。
エリザベスを除けば、あたいを真正面からKOしたのはオメーくらいなんだぜ?」
「あの時はちょっと反則的な仮面使ったからな。
本来ならこの状態が俺の…いや、俺たちの最強フォームなんだ」
「おもしれー…。
オメーらは複数の形態でそれぞれの役割をその都度変えてやがるのか。
どーやら外骨鎧とやり合ったって話は本当みてーだな。
どーせなら…このType L も打ち破ってみな!」
「上等!」
ドンッ!
蒼の魔力と雷の魔力を纏った2人は…ほぼ同時に前へ踏み込んだ。
ガァンッ!!
たがいの四肢をぶつけ合う、火花散る肉弾戦が再び幕を開ける。
「ああそうだ!
それが変形武器の正しい使い方だ!
もっとだ!打ち込んで来いマミヤッ!」
「ハア、ハア、ハア…ッ!!
アハッ…アハハハハハハハハハハッ!!!!」
(……レ、レイト…?)
……私はこの日、レイトが心の底から闘いを楽しんでいる『笑顔』を初めて目撃した。
汗水を流しながら爽やかに闘うその男と女は…見ているだけで惹き込まれてしまうような、危険で妖しい輝きを放っていた…。
まさかこんな所でまた外骨鎧と闘うことになるとは…。
頭を抱えていると、あご周りまで金属で覆われたハルートがキョトンと首を傾げた。
「もしかして、おめーらエグゾ見たことあんのか?」
「つい最近それと闘ったばかりだよ!
しかもステゴロでな!」
「ステゴロ…??
ぷっ…、なははははは!!!」
なっ…いきなり噴き出しやがった!
笑い涙を浮かべるハルートを訝しげに睨むと、カチカチと金属の篭手で拍手を送ってきた。
「まさか本気で言ってるわけじゃねーよな!?
武器も持たずにコイツと闘うなんて…。
もしそんなのが居たらホンモノのバカだよ!」
「バカで悪かったな!
こっちはやるしかなかったんだよ…」
はあ…一応、脆弱性見てみるか…。
右目にエネルギーを回して観察してみると、外見がスタイリッシュに肉抜きされていること以外はほとんど変わっていないな。
胸元からエネルギーが四肢に行き渡っている流れ方からして、やはり動力源である魔石がそこに内蔵されているのだろう。
ただ…武装に関しては分からない。
さっきこの女は『弄ってる』と抜かしやがった。
『仕込み鎧手』の技術があれにも盛り込まれているとしたら…。
「マキナ。
先の戦闘では、私たちは1つの存在として闘ったのだ。
したがって今回も同じ条件でやらせてもらう。
異論は認めん」
不安がる俺の肩を優しく抱いてきたルカ。
融解ならたしかに渡り合えそうだけど、ここガレージだから狭いんだよな…。
そんなルカの提案にハルートは頷いた。
「ああ、話は聞いてるぜ。
マミヤの本当の力はあの仮面じゃねー。
おめーの『転移』っつー能力のおかげで、ドラゴンだの鷲獅子だのをブチのめせたってな。
…ったく、こないだ仕事手伝いに来た時にゃ、おめーのノロケばっかで参ったぜ…」
あああっ!?ちょっと!
なに本人いる前で言ってくれてんだ!
「なっ…!?ほ、本当なのか零人!?」
「いっいやっ、そこまで熱く語ったつもりは…」
ガクガクと肩を揺さぶってきた。
ルカの口元がモニョモニョとしてる…。
恥ずかしいのと怒ってるの中間みたいな顔だ。
「ちょっとレイト!私は!?
私だって今までアンタと背中合わせて色んな奴と闘ってきたでしょ!」
ゲシッ!
「いだっ!」
ケツ蹴られた!
お尻をさすって後ろを見ると、フレイがものすごく頬を膨らませている。
こっちはめっちゃご立腹のようで…。
「コラ!痴話喧嘩は後にしろや!
いい加減テスト始めんぞ!」
カシュン!
ハルートの口周りを金属のマスクが覆った!
あれは顔面を守るための装甲なのだろうか?
「さあ構えな、マミヤ!」
腰を落とし右脚を引いて拳を上げるハルート。
…ふう、ボヤきはもうやめだ。
あくまでこれはテストだし殺し合いじゃない。
それなら身体の力を抜いて闘った方が良いパフォーマンスを演じられるってもんだ。
「零人、心を合わせろ。
だが、フィールドが極端に狭い。
今回は『同調』でいこう」
「ああ、了解だ。
フレイ、危ないから離れててくれ」
「もうっ!
いつも私を置いてけぼりにするんだから!」
そう言いつつしぶしぶと離れてくれるフレイ。
本当はガレージの外に避難しててほしいけど、多分そこまで素直には聞いてくれないな。
「「『同調』!」」
ボン!
「ほー…。なるほど、コイツが噂の…」
地上戦がメインのスタイルに変身。
蒼い残滓を周りに迸らせ、俺とルカは一つの身体となった。
今日はエネルギーの心配がない。
存分に力を振るえるぜ!
「私の声は聴こえるな?
ハルート・マキナと戦闘を開始する。
Type L…エネルギーの質からして、十中八九シュバルツァー級の雷属性を持ち合わせているはず。
油断するなよ、零人」
「まぁそんな固くなるなって。
せっかくおニューの装備があるんだ。
使い心地試してみっべ」
ガキャン!
両手のスナップをきかせ、左手に盾、右手に両刃剣を展開させる。
この手軽さは俺たちの戦法にはかなり相性が良いはずだ。
どこまであの外骨鎧に通用するかは分からないがな!
「あたいの装甲は頑丈だ。
遠慮しねーで斬りかかってきな!」
☆フレデリカ・シュバルツァーsides☆
「『雷光拳』!」
「右だ!弾け零人!」
「『流水反撃』!」
ギャアンッ!!
「『雷光撃』!」
「後ろへ!」
ブン!
ボォォンッ!!
「今だ!攻撃を叩き込め!」
「おう!うらあッ!」
キィン!!
「はっ!やるじゃねーか!」
合体したレイトとハルートによる、『テスト』が私の目の前で繰り広げられている…。
たがいに装備した金属と金属の攻防は、両者がぶつかる度に目がチカチカするような火花を生み出す。
そしてハルートの雷魔法が炸裂すると、ガレージ内をさらに派手に照らした。
…レイトのやつ、まさかこんなとんでもない女と闘っていたなんて…。
私も同じく雷属性が得意だから分かる。
あの子の魔力…下手したらママに匹敵するくらいのモノなんじゃ…?
「シールドの属性カット率は上々みてーだな。
うし、こっから少し荒くなるぞ!」
ハルートは両脚を開き、逆に両腕を目の前でクロスさせた。
…待って、あのポーズは…!
「『麻痺』!!」
ビビビビッ!!
ハルートの全身からバチバチと、静電気が弾けとんだ!
それだけではなく、あの子の背中から四対のロープ?が伸びている。
先っぽには3つの小さい鉤爪が付けられて、まるで蛇みたいにゆらゆらうごめいているわ…。
不気味ね…あれは何なのかしら?
「おい、もしかしてこれセリーヌの技じゃない?
なんかあれよりヤバそうだけど…」
「奴のマニピュレーターに注意しろ。
先ほどのエネルギーがそこへ収束された」
「分かった!」
ま、まにゅ…?
レイトは盾を前に構え、ジリジリと間合いを詰め始めた。
そんな彼を嘲笑うかのように、ハルートはハスキーながら高い笑い声を上げた。
「はははははっ!
ビビらずに向かってくるのは大したモンだ!
だが、シールドにばかり頼ってると…こーなるぜ?」
ビュッ!
「あぶねっ!!」
4つの内の1つのロープがレイトに向かって突っ込んだ!
ガキンッ!
反射的にレイトはその攻撃を盾で防ぐ。
すると…
「ん?…あばばばばば!!!!??
し、痺れるるるるる!!!!!」
ロープがくっついた盾からそのまま左腕に巻き付き、魔力を流れ込ませて攻撃してきた!
あのバカ!セリーヌの技知ってるでしょうに!
「零人!剣で切り落とせ!」
「あがががっ……!!…はあっ!!」
ザシュッ!
右の剣でロープを切った!
そして、転移を発動して少し彼女と距離をとった。
そうよ、それでいいわ。
無闇に突っ込むのは三流の戦士よレイト。
「…クソ、うまく力が入らねぇ…」
「くくくっ!うまく逃げたな。
だがマニピュレーターはもっとあるんだぜ?」
ビビビビビッ!!
ハルートは不敵に笑うと、さらに多くのロープが背中から生えてきた!
ちょ、ちょっと気持ち悪いわねアレ…。
「…零人。盾を格納し左の装備を変更しろ。
そしてあとは、私に任せてくれ。
私も慣れておかねばな」
「…?ああ、『あれ』か。
…よし、切り替えた!バトンタッチだ!」
「了解、意識を集中するんだ」
ボウ…!
レイトは巻き付いた左手首のロープを投げ捨て、鎧手を逆さまになるようにくるりと回した。
それと同時に、蒼い魔力が彼の全身を包むように覆う。
…あ、改めて見るとやっぱりすごく綺麗な魔力ね…。
「「『癒着』!」」
ボン!
「おおっ!?すげーなこりゃ!」
再び蒼い爆発を身体から起こして、〝彼女〟は変身した。
黒髪と蒼髪が半々に別れた、レイトたちの新しい姿だ。
ガキャン!ガキャン!
現在、身体の主導権を握っているルカは、両手首から剣を展開する。
そして挑発するように、左の刃をハルートに向けて手招きをした。
「次は〝私〟が相手だ。かかってこい」
「…!なるほど、そういうことか!
おもしれーヤツらだなおめーらは!!」
ヒュヒュヒュヒュッ!!
ハルートは愉しそうに、伸ばしたロープを全てルカに突っ込ませた!
あれは…捌くには数が多いわ!
「私を舐めるなよ。はあああっ!」
ガガガガガガガガッ!!!!!
ルカは全身をくまなく運動させ、襲い来るロープを全て剣でたたき落とした!
す、すごいわっ!!!
「マニピュレーターを全て弾きやがった!?
…もう1発くらいは当たると思ったんだが…。
とんでもねー技量を持ってやがるなオメー」
「フン…褒めても何も出ないぞ。
ところで、もうテストは終わりか?」
「いや…次でラストだ。
少し本気で相手したくなってきた。
両手をシールドにすることをオススメするぜ?」
そう言うと、ハルートは展開したロープを全て背中へ戻した。
そして僅かに膝を折った。
…今度は何をするつもり?
「…『雷光瞬撃』」
ドンッ!!
は、速…!?
一瞬で間合いを!!
「ルカ!左に避けろ!!」
「くっ!?」
ブォン!!
レイトの掛け声でルカは左側へ身体を投げた!
よ、良く今の反応できたわね…。
しかし、ハルートは間髪入れず、避けた先へ再び拳を振り下ろした!
「オラッ!!
そーやって逃げてばかりか!?」
「…チッ!」
ガキャン!
ルカは素早く左の鎧手をひっくり返して盾を展開した!
かろうじてハルートの拳を受け止めることに成功する…。
「『雷光連撃』!
オラオラオラオラオラ!!!」
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
な、なんて攻撃なの…!?
両手だけじゃなく、両脚も絡めて怒涛の連撃をルカに叩き込んでる!
ダメ…これ以上はムチャよ!!
「くっ、クソッ!この馬鹿力め!」
「ルカ!もっかい俺と代われ!
次は〝あっち〟でやるぞ!」
「りょ、了解…ッ!行動権を移譲する!」
ボン!
三度、蒼の爆発がガレージ内で発生する。
今度は髪が長くなった…『融解』だわっ!
「失せろっ!!」
ガキャアアン!!
「ぐっ!?なんだ今のパワーは…?」
や、やったわ!
左の盾を振って、体格差があるハルートを後ろへ弾き飛ばした!
すかさず右手首を回し両腕に盾を装備させて、ガツン!と、拳を合わせるようにたがいの盾をぶつけた。
そして、レイトの脚が地面から浮いて、ちょうどハルートの視線の高さに並ぶ…。
「よくもウチのルカをボコボコにしてくれたな。
…って、前にもこんな感じだったか?」
「へへ、そーいやそうだな。
エリザベスを除けば、あたいを真正面からKOしたのはオメーくらいなんだぜ?」
「あの時はちょっと反則的な仮面使ったからな。
本来ならこの状態が俺の…いや、俺たちの最強フォームなんだ」
「おもしれー…。
オメーらは複数の形態でそれぞれの役割をその都度変えてやがるのか。
どーやら外骨鎧とやり合ったって話は本当みてーだな。
どーせなら…このType L も打ち破ってみな!」
「上等!」
ドンッ!
蒼の魔力と雷の魔力を纏った2人は…ほぼ同時に前へ踏み込んだ。
ガァンッ!!
たがいの四肢をぶつけ合う、火花散る肉弾戦が再び幕を開ける。
「ああそうだ!
それが変形武器の正しい使い方だ!
もっとだ!打ち込んで来いマミヤッ!」
「ハア、ハア、ハア…ッ!!
アハッ…アハハハハハハハハハハッ!!!!」
(……レ、レイト…?)
……私はこの日、レイトが心の底から闘いを楽しんでいる『笑顔』を初めて目撃した。
汗水を流しながら爽やかに闘うその男と女は…見ているだけで惹き込まれてしまうような、危険で妖しい輝きを放っていた…。
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