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第108話:ジョナサンの怨み

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☆間宮 零人sides☆


俺をここまで運んでくれた牛魔獣ミノタウロスのミノちゃん(勝手に名付けた)から降りる
フレイが心配だったため、先に俺だけ先行して戻ってきたのだ

戻る道中、観客と何人かすれ違ったが、どうやらアリーナからはほとんどはけたようだな


「よっ…と。
遅れて悪かったなフレイ。
どこかケガ…ああっ!?」

「へ…なっ、なに!?」


フレイの身体を見ると、手足と腹にケガをしていた!
そんな…!


「お前こんな傷付いて…
ゴメン、もう少しでシトロンさんも来るから、暫く我慢してくれ」

「なによ、こんなのかすり傷よ。
あ、もしかして心配してくれたの?」

「そんなの当たり前だろ。
早く戻りたかったから、ミノちゃんにお願いして、アリーナまでの壁をぶち破ってもらったんだ」

「ふ、ふーん。そう…」


フレイはなぜか顔を赤らめて、少し嬉しそう
あれ?ホントに大したことないのかな…
恐るべし、ガルドっ子


「ん…?ジョナサンは?」

「あいつは『部屋』に行くって言ってたわ」

「なんだと!?」


クソ!

先回りされたか!
急がないと!


「看守長!魔物どもがそこらかしこに…
なあっ!?こ、これは!?」

「まずい!敵の増援が来たわ!」


くっ!こんな時に…!
アリーナの魔物門から警備たちがぞろぞろと湧いてきやがった!

……ん?

げっ、外骨鎧エグゾ・アーマーの連中まで後ろに居る!

とりあえず今はみんなが到着するまで持ちこたえるしかない!

シトロンさんから貰った剣を抜き、警備どもへ構える


「ブモモッ!」

「ああ!お前の力が頼りだ!
だけど、そんなんじゃないから!」

「……その魔物なんて言ってるの?」

「『あっしがあにさんと奥方を護ってあげまさァ』だって」

「お、奥方!?……奥方、奥方…うへへ」


ポーっと、なってしまったフレイはなぜかニヤニヤし始めた
…ちょっと気持ち悪い


「奴らをここから逃がすなァ!!」

「気を付けろ!
あの男は瞬時の奇襲を得意としているぞ!」

「いや!男はどうでもいい!
あのエルフが要注意だ!
さっき戦闘を見ていたが、人間をちぎっては投げていたぞ!」

「お前ら…
どう考えてもあの中では『牛魔獣ミノタウロス』がいちばん危険だろう!」


おうおう、盛大に評価してくれちゃって

…つか、フレイのこと言ってた内容ってホントなのか?
怖いんですけど


「ブモォォォ!!」


ミノちゃんが雄叫びをあげるやいなや、地を蹴り、突進を始めた!
さすがミノちゃん、分かってるな!
先手必勝こそ闘いの要だ


「う、うああああああ!!!!」


ドカカカカカッ!!!!

…まるでボーリングのピンだ
先頭で固まっていた警備たちは、右往左往に飛び散りあっけなく戦闘不能になった


「フン…ッ!!」

ガシィ!!

「ブモモ…!!」


それに抵抗できたのは後方に居た外骨鎧エグゾ・アーマーたちだけだ

数人がかりとはいえ、ミノちゃんの力を正面から受け止めてやがる
…話に聞いた通り、とんでもない馬力だな

ちょっと、ズルくない?


「6班ただ今戻り…
何だこれは!?貴様らがやったのか!」


別働隊が人族側の門から現れた!
チッ!また来やがったか


「レイト!
アイツらは私たちで相手をしましょう!」

「ああ!
だけど、俺はこれ以上転移テレポート使えないからな!
ガス欠になると気絶する!」

「了解よ!」


☆ジョナサン・プルーロsides☆


部下達にアリーナにいる賊の討伐を命じ、私は闘技者の人質どもを監禁している『秘密部屋』に閉じこもった


「クソ…ッ!
忌々しい人族め…!
貴方たちはいつも…」


怨みが口から出てしまった
いけません…
このような態度を表に出していては顧客が離れてしまう

落ち着こう…
少なくとも、この場所に居れば身の安全は保証される

しかし、あの黒髪…
部下たちも言っていたが、あれが噂の『蒼の傭兵』なのか?
もし噂が事実ならば、奴はこの国にとって祝福されるべき人物だろう

だが、今さら…ッ!!
…人族どもを許すことなど…!!


20年前、悪名高き盗賊ベンター団は私の娘を攫い、犯行声明と共に、亜人の国ヘルベルクの民に向けて身代金を要求した

もちろん、私はすぐに金を支払った
娘の命と金など、天秤にかけるまでもない

だが…金を渡したあと、盗賊から指定された場所に向かったその洞窟には…

服を剥がされ惨たらしく喉元を切られて…冷たくなった娘が横たわっていた

娘は…盗賊どもに犯され、殺されたのだ

私は以降、人族で構成されたあの盗賊も…
国が助けを求め、それを断った『理の国ゼクス』の者どもも…

全てを憎み、怨んだ

だから私は…私から全てを奪った人族へ復讐する道を選んだ

没落寸前だった我がプルーロ家は、ある人物からの援助のおかげで、新興貴族として裏稼業へ手を出すことができた

次は私が〝金〟の力で奴らを食い物にする番だ


「………零………人………」

「ム…?」


女のか細い声が耳に聴こえてきた
蒼い髪の人族…たしか、マミヤ・レイトの…
眠っているようだが、口元が少しずつ動き始めている

眠らせた人質どもは全員『秘密部屋』に設けた寝床へ縛り付けてある
さらにボトルに仕込んだ特注ポーションは効き目が凄まじい
簡単に目覚めることはまずないはずですが…

…ふむ、もしやこの女を使えば…で暴れているマミヤ・レイトを止められるやもしれません

それに……ヒヒ…ッ!
奴の見てる前でこの女を辱めるのも…
これまた一興ですね…!

女の拘束を解き、その身体を抱き寄せた
ほう…改めて見ると、この世の人間とは思えない精巧な美しさ…

くふふ、連れていく前に少し〝味見〟をしてみましょうか!


「ククク…ッ!
今からたっぷり可愛がって…」

ボオオオオオオオオオン!!!!

なに!?

爆発…まさか…!!
私の『秘密部屋』が…見つかった…?
バカな…なぜここが!?

爆発地点の〝天井〟に大きな穴が空けられ、そこから1人の男が侵入してきた


「おっしゃあ!
よし、囚われた奴ら全員いる…無事だ!
アシュリー!みんなに伝えてくれ!!」







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