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第50話:メンテナンス

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ハルートを連れ、再び王都内を歩き出した
亜人が沢山闊歩している中で、人族の俺は悪い意味で目立っている
道行く人のほとんどが陰口を叩いてきた


「人族め…我が物顔で歩いてやがる…」

「ほら、目を合わせちゃダメよ」

「あの人…髪を黒く染めてるわ。
カッコつけてるつもりなのかしらねぇ?」


……………………………

泣きたい

心無い言葉に内心落ち込んでいると、ザベっさんがフォローを入れてくれた


「レイト様。どうかお気になさらず。
人族が王都入りすると、必ずあのような反応になるのです」

「う、うん。ありがと…」

「ケッ、くだらねー。
いつまで昔のこと引きずってウダウダやってんのかね。『点火イグニ』」


不機嫌そうに歩きながら、ハルートは煙草に火をつけた

あれ?
そういえばあんまりコイツからは恨み節がこないような…?
罵倒はめっちゃされたけど


「ちなみにハルートは俺のこと何とも思わないのか?
いちおう、人族だけど…」

「ああ?
あたいから言わせれば、人族だろうが亜人だろうが、スジ通すもん通せなきゃ全員クソだね。
テメーの怨み事はテメーでしか晴らせねー。
他人人族に当たんのはお門違いってやつだ」


…………………………

「ハルート」

「なんだよ?」

「まだ出会って数時間でこんなこと言うのもアレだけど…
お前のこと好きになったわ」

「は、はあぁぁ!?」


ポロッと、ハルートは煙草を落としてしまった
彼女の褐色の頬にみるみる朱が差す


「お、お前っ、バカじゃねーの!?
ていうか…バカじゃねーの!!?」

「なんでリピートすんだよ…
仕方ないだろ、惚れちゃったモンは」

「ほ、惚れぇっ!?
テメーの世界の人族はそんなすぐ告白すんのかよ!?」


告白?あれ、もしかして勘違いしてるのか?


「いや…俺が惚れたってのはハルートのそのポリシーっつうか心意気っていうか…そういう意味なんだけど」

「ビッ…ビックリさせやがって…!
あたいは逆だ!
たった今、テメーはあたいのヘイトリスト殿堂入りになったからな!!」

「ひどい!!?」


なんてこと言うんだ!
せっかく素直な気持ち伝えたのに!


「レイト様。
手当たり次第に出会う女性を口説かれるのは、やめた方がよろしいかと。
軟派者と思われてしまいますよ。
そういうのは…不潔です」

「ちょっとぉ!?ザベっさんまで…」


彼女の無表情の瞳には、若干怒り…というか侮蔑的な色が混ざっていた

俺、女の子を口説くセリフそんなに言ってるのか…?
下手に喋らない方が良いのかな…


☆☆☆


近くの定食屋さんでご飯を食べたあと(入店時に舌打ちされた)、再びガレージ・マキナへ戻った

さっそく依頼を始めてくれたのだが、俺の方は後回しにされ、最初にザベっさんの武器のメンテをしている
通常状態から剣モードに変形させると、ハルートは「んん?」と眉をひそめた


「なんだぁ?えらく焦げてるじゃねーか。
テメーいったい何と闘ったんだ?」

「『炎獣イフリート』です」

「ほお、そうかイフリー…炎獣イフリートぉ!?
おまっ…、そいつ伝説の魔物じゃねーか!!」

「ハハ、いやーあの時は苦労したねザベっさん。
アンタのおかげでだいぶ助かったよ」

「はぁ!?オメーも闘ったのかよ!?」

「恐れ入ります。
しかしながら、実際の決め手となったのはレイト様と存じております。
貴方様の力無しでは勝利を得られなかったでしょう」

「買いかぶりすぎだってー。
てか、そもそもルカとモネが居なきゃ…」

「待てぇぇぇ!!!!
テメーらちゃんと説明しろ!
どんなシチュになったらそんなヤベー魔物と闘う状況になんだ!」


俺とザベっさんは当時の状況の説明と、ついでに旅の目的も一緒に伝えた
…ったく、いちいちうるせったらありゃしねぇ


「魔族だと…?
しかも『はぐれ』じゃねーモノホンの魔族…!」


ん?聞き慣れない単語が出てきた


「『はぐれ』って?」

「ご存知ありませんか?
時おり、『魔族の国アルケイン』から逃れてくる者が存在し、様々な国に潜伏していることがあるのです。
ひっそりと人気の無い所で暮らす者もいれば、悪意をもって人々に害をなす者も居る…
そういった魔族達を『はぐれ』と揶揄しているのです」

「へぇ~!」


ザベっさんが分かりやすく教えてくれた
さすがスーパーメイド


「そういう奴らはほとんどが街の衛兵か、どこぞの傭兵団に依頼して『制圧』するんだが、テメーらが会った魔族どもは違うみてーだな」


ハルートは煙草を咥えながらメンテナンスの続きを始めた
喋りながら作業するなんて器用なヤツだな


「そういえば『ガルドの牙』もたまに魔族を相手にするって、村長言ってたっけ」

「名前だけは聞いたことあるぜ。
たしかエルフで固められた傭兵団だろ?
オメーそんなとこ居てよく無事だったな」

「無事なもんかよ…
黒竜ブラック・ドラゴンと闘った翌日に、ガルドの野郎どもからリンチされたんだぞ?
まぁ、相棒と協力して全員ぶっ飛ばしたけど」

「…オメーそいつらに助けてもらったのか、襲われたのかどっちなんだ…?」


その後俺たちは駄べりながら、ハルートのメンテナンス作業を見学させてもらった
分解して、消耗パーツを交換して、可動部に油をさして…
惚れ惚れするようなその手腕に思わず見とれてしまった


「(カシャン)うし、これで終わりだ。
おら、ちょっと使ってみろエリザベス」

「ありがとうございます。
それでは……」

カシャン!

ザベっさんは格納形態のスタッフから、クロスボウへと変形させる
グリップの握り具合の確認、そして照準を覗いてエイム動作を繰り返した


「問題ありません」

「当然だ。次はキャリバー形態だ」

「かしこまりました」

カシャ、カシャン

…うーん、何度見てもこの変形に心が踊ってしまう
俺にもこんな武器創ってくれるのかな

ザベっさんは剣に変形させると、霊力エーテルを纏わせて空を斬る

ヒュンッ!ヒュンッ!

「こちらも問題ありません。
ありがとうこざいましたマキナ様。
こちら、お代です」


剣を元の格納形態に戻して、金がたんまり入った袋を作業台に載せた

…げぇ!メンテだけでこんなかかるのかよ!?
創ってもらっても維持できんのかな…


「おーよ、毎度あり。
さーて、次はオメーだなマミヤ」

「お、おう!」


ハルートは煙草を灰皿に押しつぶすと、ツナギの上着部分を腰に巻いた
……?何をする気だろう?


「あたいが創作オーダーメイドする時にゃー、必ず依頼人にやってもらうことがある」

「……お、おい?
なんで魔力マナを出してんだ?」


めちゃくちゃ嫌な予感がする


「あたいと本気で闘ってもらおうか!
ブチのめしてやるよ、マミヤぁ!!」

「なんでだァァ!?」




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