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第1話:蒼い光(前編)

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 その日は大学の授業を受けたあといつも通りの時間、いつも通りの道で帰宅していた。

 なんてことない、ありふれたただの1日。

 アパート近くのコンビニに寄り、チューハイとおつまみを買って部屋でゲームでもしながら晩酌する予定だ。
今日は週末だし遅くまで夜更かしできるぞ!

ピカッ!

  気分良くコンビニへ向かって行くと突然、チカッチカッと青白い光が目に飛び込んでくる。


「うおっ、眩し!?」


  なんだ?誰かライトの光を当ててきたのか?
え、やばい、不審者!?

 思わず警戒して後ずさると人の気配は無かった
目を細めて光の元を辿ると、それは道端から来ていた。

 腕で視界をガードしながら近づいて行くと、徐々に光は弱くなっていき、ようやく光の正体を両の眼で捉えることができた。


「おお、すっごく綺麗な石だな…」


 それはビー玉を少し大きくしたような蒼い石…いや、宝石?だった。
形は六角形でとても綺麗だ。
しゃがみこんでその石を指でツン、とつついてみる。

 あれ?
あんなに発光してた割に全然熱くない?
てっきりライトのオモチャかなんかと思ったんだけど…。


「なんだろう、コレ」


 手に持った瞬間、カッと石が再び輝き出した!


「わっ!なになに!?」


 先ほど光っていた時よりも強く輝いている。
石を投げようと振りかぶるが、なぜか身体にうまく力が入らずその場にへたりこんでしまった!

 はぁ?!な、なんで…。

 石は依然として蒼い光を輝き放つ。

 ヤバいヤバい!!


「…っ!だ、誰かぁぁ!」


 羞恥心を殺し声を張り上げて周囲に助けを求めるが、周りには誰も居ない。

 クソ…近道なんかしないで普通に大通りから帰っていれば…!

バタン

 ついに身体の自由が効かなくなり、地面へ倒れてしまった。


「やべぇ、ここで死ぬのか…俺?」


 ウソだろ… 。
こんな事ならPCの秘蔵フォルダにパスワード掛けとくべきだった。

 オンラインゲームでいつも俺と遊んでくれてた小学生のカケル君にもお別れ言いたかったな…。
ストリーマーになる夢、お兄さんは応援してるよ…

 あとバイト先でいつも俺に優しくしてくれる憧れの先輩にとっとと告白すれば良かった。
まあ、その先輩は人妻だったけど…。

 そんなくだらない後悔をしている間に強烈な眠気が襲いかかった。
そうか、死ぬってこんな感じなんだな…。
案外…悪くない……な。

 そして俺は目を閉じた。


 ☆☆☆


ヒュゥゥゥ…

 んん…なんか風が吹いている?
頬に心地よい風が撫でる…。
目を開けると澄み切った青空が視界いっぱいにとびこんだ。

 あれ、ここは…?

 起き上がり周囲を見回すと、大草原…緑の大海原が広がっていた。

……………………………………………………


「は?」


 え、いや待って。
たしか俺ってさっきまで大学から帰ってる途中だったよな?
それでコンビニに向かう途中で変な光を…。

 そうだ!!

 あの変な蒼い石を持ったらいきなり身体が言うこと聞かなくなったんだよ!


「あの石は!?」


 しかし、右手に持っていたはずの石は既に無くなっていた。

 マジかよ…。

 いやいや、石なんかの事よりもこの場所の方が問題だ!

 ここどこだよ!?

 明らかに日本で無いことは分かる。
例えるならゴルフ場が永遠と広がっているような…。
風が草の匂いを鼻に運んでくれるけど、全然嗅いだことのない香り。

 見知らぬ大地に居ることに頭を抱えていると『それ』はいきなり喋りかけてきた。


「少年。困っているのか?」

「わあっ!?なんだ、誰!?」


 突然、後ろから女性の声が聞こえてきて、思わず振り向きざまに尻もちをついてしまう。
しかし、声の主は見当たらず左右前後、周囲を見渡しても居ない。


「こっちだ。よく見ろ少年」


 また声が聞こえてきたが相変わらず姿が見えない。

 え、どこに居るんだ?
まさか透明人間とかじゃないよね?

 必死に身体を動かして探してもやはり見つからない。
すると、三度みたび、声が聞こえてくる。


「まったく、鈍臭いヤツめ。私はここだ!」


 ゴン!といきなりおでこに何かがぶつかって来た!


「いっでぇ!!何が…あ、ああぁ!!
あの時の蒼い石!」

「ふん、ようやく私を認識できたようだな」

「な!?
い、石が喋ってる…つか浮いてるんだけど…」


 目の前でふわふわと蒼い石が浮かんでおり、しかもそいつは流暢に日本語を喋ってる…。
さっきから非常識な事ばかりだ…。

 しかし、相手は人間ではないにしろ、ようやくこの最悪な状況を説明してくれる存在が現れたようだ。

 ここは穏便に、丁寧に…。


「えっと、お姉さん(?)は誰なんですか?」

「私は見ての通りただの宝石さ。
それ以上でもそれ以下でもなくな」

「は?はぁ…」


 石じゃなくて宝石なのか…。
どっちでも良いけど。


「じゃ、じゃあ、お名前を伺っても?」

「知らん」

「え?」

「知らんと言っている」

「……」


 参ったな、この人やりずれぇ…。
いや人じゃないけど。

 こほんと咳をひとつうち、次の質問に移る。


「それじゃあ…ここはどこなんですか?」

「さあな」

「おいぃぃ!!!
さっきからあんたマトモな回答ひとつもしてねぇじゃねえか!」

「そう吠えるな。
知らないものは知らないだけだ。
というか、いきなり口調が乱暴になったな君」


 やべ、いちばん知りたい情報が得られなくて思わずカッとなってしまった。


「あ、え、えっととんだ失礼を」

「かまわん。それとその変な口調もやめろ。
もっと自然体で話せ」

「あ、そ、そう?じゃあ…」


 良かった…。
そのまま怒って飛んで居なくなったとかになったら最悪だったぜ。


「少年。君には名があるのか?」

「あ、うん。俺は真宮 零人まみや れいとだよ。
零人でいいよ」

「零人か、良い名前だな。
私にも名前はなんだがな…」


 あるはず?


「それってどういうこと?」

「うむ。私にはな、記憶が無いんだ」


そうか、だからさっき知らないって…。


「記憶が無いって…いつから無いの?」

「この緑の大地で目覚めてからだ。
なぜか以前の記憶を一切思い出せん」


 なんてこった!
唯一元の場所へ帰れる手がかりが何も覚えていないとは…。
絶望してるなか、再び蒼の石が訊いてきた。


「ところで少年」

「なに?あ、せっかくなら名前で呼んでよ。
それに俺もう20歳だから少年じゃないよ」

「そうか、それは失礼したな。
それでは零人、君は先ほど私の事を『あの時の』蒼い石と呼んでいたが、もしや過去に君と私は会ったことがあるのか?」

「ああ、その事ね。実は…」


 俺はここに来るまでの経緯を説明した。


「日本か、なるほどな。
君は私のせいでこの場所へ迷い込んでしまった可能性が高いな。
すまないことをした」


 顔が分からないからイマイチ感情が分かりづらいが、声のトーンからして本当に申し訳なく思っていることを感じる。

意外と良識者なのかも?


「ああ…いや、俺もあんたに不用意に触れてしまったのが原因かもしれないし…。
あまり気にしないでくれ」

「ふふ、君は優しいな零人。
普通はこんな状況になったらもっと怒ったり取り乱してもおかしくないはずだ」

「………」


すみません、ぶっちゃけ叫びたいほど不安だし、泣きそうなんです。


 「零人。少し後ろに植物では無い物を見つけたのだが、君の物か?」

「え、なに…って、ああ!俺のバッグ!」

「やはり君の所有物だったか」


 急いで駆け寄り中身を確認する。
うん、間違いなく俺のだ。
あれ、そういえばここに来るまで時間はどれくらい経ってるんだ?

 左手首に付けた時計を確認してみる。
日付は変わらず現在時刻は午後10時を回っていた。
帰宅中はたしか夕方で、お腹の空き具合からその時間が正しいことが分かる。

 しかし、現在は快晴でお天道様が悠々と輝いている。
それが日本とこの国の時差のせいならまだ良い。

 けど薄々予想もしてるし、考えたくないけど可能性もあることを覚悟しなければ…。

 そこでふとあることに気づく。


「あ」

「ん?その板は何だ?」


 ポケットから現代技術の結晶、スマホを取り出す。
俺はなんでまずこれを確認しなかったんだろう。


「これはね、スマホと言って家族や友達と連絡したり、写真を撮ったり、分からないことをすぐに調べられる便利な物なんだ」

「ほう!それは素晴らしいアイテムだな!
ということは、誰かに救助を要請するのだな?」

「あ、うん。
意外とそういうの理解力あるんだねあんた」


 さて、結果は分かるけど一応見てみるか。

《圏外》

 ………まあ、そうだよね。
そもそもこんな大自然の中だしな…。


「どうしたのだ?
助けを呼ぶのではなかったのか?」


 何故かわくわくした様子で聞いてくる。


「うん、でもダメだったよ…。
その機能はここに特殊な電波が来てないと使えないんだ」

「そうなのか…。
それでは、私のことをそのスマホとやらで調べてみるのはどうだ?
記憶の手がかりが見つかるかもしれん」

「残念だけどそれも同じ理由で使うことができないんだ。
できることと言ったら、時刻の確認と写真を撮ることくらいかな」


 まあ仮にできたとしても喋る蒼い石なんて調べても分からんだろうけど。


「むう、意外と使い勝手は良くないのだな…。
ちなみに『シャシンをとる』とはどういう事だ?」


 それなら実際に使ってみせた方が早いか。
カメラアプリを起動し蒼い宝石のお姉さんにスマホを向ける。


「…??おい、零人。一体何を」

カシャッ

「おあっ!?何だ、何をしたのだ今!」

「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。
写真を撮っただけだって」


ものすごい勢いで近くの草の下に隠れてしまった。
臆病なハムスターみたいで少し可愛い。


「ほら、これ見て」


しゃがんでお姉さんに撮った画像を見せる。


「蒼い、石?もしかしてこれは私?」

「ああ、そうだよ。
…今まで自分の身体分からなかったの!?」

「私の身体が六角形であることは自覚できていたが、俯瞰的な視点ではさっぱり視えなかったからな。
そうか………これが、私…」


 ありゃ、画面の前から動かなくなった。

…………………

「えっと、お姉さん?
ずっと黙ってるけどどうしたの?
そんなにショックだった?」

「…いや、そうではない。礼を言うぞ零人」

「え?何かお礼言われるようなことした?」

「ああ、おかげで少し記憶を取り戻せた」


おお!マジか!


「良かったじゃん!
それで何を思い出せたの?」

「うむ。
私に家族が居ることを思い出してな。
そいつと会うことができれば、この場所や君を日本へ帰す手がかりが分かるかもしれない」

「マジか!!
どこにいるの?」

「さぁ…そこまでは思い出せなかったよ。
しかし、きっとどこかに必ず居るはずだ」


 石の家族か…。
どんな感じなんだろう?
食卓を小さな石たちが囲ってるのを想像したらシュールすぎて少し笑えてきた。


「零人?」


 顔を背けて笑いを堪えてたらお姉さんに訝しげに呼ばれた。
いかんいかん、彼女に失礼だ。


「なんでもない!
えっとそれで、名前やこの場所については変わらずか?」

「ああ、すまないな」

「いいよ。
そのうちまた思い出していくでしょ」

「うむ。しかし、名前か…」


 クルクルと石が回り始めた。
…あれは考え込んでる仕草なのか?


「どしたの?」

「よし!零人。
君が私に名前を付けてくれないか?」

「ええっ!?」


 俺が!?他人に名前付けるのって初めてだな。
ゲームならキャラクタークリエイトする時とかRPGでスタートする時に主人公の名前を決めるけど。


「えーいきなり言われてもな」

「なに、私が思い出すまでの呼び名だ。
そんなに深く考えないでくれ」

「んー、そう言われても石に名前つけるなんて初めてだから悩むよ」

「私はなんでも構わんぞ」

………………

「じゃあ『カムカム』は?」

「……由来はあるのか?」

「昔飼ってたペットのハムスターなん「却下だ」あ、はい」


 なんでも良いんじゃなかったのかよ!


「じゃあこれは?『滅鬼丸』」

「なんだその不穏な名前は!却下だ」


 えーこれもダメか。
好きな狩りゲーの武器なのに。

 その後いくつか俺的にイケてる名前を提案したのだが全て却下された。
意外とワガママな宝石だな。


「なぁ、他にもっとマシな名前はないのか?」


 どうしよう、半分呆れ気味になってきてる
あ、あの名前はどうかな。


「『ルカ』は?」

「ふむ、その名前は?」


 由来は?ってことだろう。


「俺の好きなゲームでいちばんお気に入りの女キャラなんだ」


 少し前に遊んでいたRPGで登場する女戦士だ。

 最初はパッとしない能力だけど、成長するに従って中ボスクラスならワンパンで撃破できる程のぶっ壊れキャラに変貌する。
もちろん、性能面だけではなく、キャラ自体の性格も好きだ。

 すると、彼女はまたクルクル回り始めて考え込む仕草をみせた。


「『げーむ』とやらはよく分からんが…
まぁ、良いだろう。その名前にしよう」

「やった!やっと決まった…よろしくルカ」

「ああ、こちらこそだ」


 手を差し出し握手を…いや出来ないからそっと彼女の身体に触れた。

 その時、ピカっとルカの身体が蒼く光りだした!
えっえっ、また意識失うとかじゃないよな?!


「ちょ、ちょっとルカ?どうしたんだよ」

「なんだ、この感覚は…?
不思議な力を感じる」

「大丈夫なの?」


 尚も輝き続けるルカさん。
恐る恐る訊いてみると、彼女は落ち着いた様子で答えた。


「ああ、問題ない。しかしこの力はいったい?
なぜか懐かしくも感じるんだ」

「力?」

「うまく説明できないが、私の身体を循環しているエネルギーが活性化しているのを感じるんだ」


 ふむ?よく分からないけど夜中にエナジードリンクでキメた時の感覚みたいなもんか?


「そうか、この力は…思い出したぞ」


 お、また記憶が戻ったみたいだ。


「どんな力?」

「ああ、見ていろ」


 なぜかルカは俺から数メートル距離をとった。
何をする気だろう?
俺が腕を組んだ瞬間、

ブン!

 独特な音が鳴り、ルカの姿が消えた!
驚いて自分の目を疑った瞬間、再びブン!と目の前に蒼い石が出現した!


「ばあ!」

「うおおっ!?」

「ふふふ、ビックリしたか?
先程の写真のお返しだ」


 また地面にしりもちをついてしまった。
ケラケラと笑い、頭上を楽しそうに飛び回るルカ姉さん。

 まさか瞬間移動したのか!?
んなアホな…。


「す、すげ。どうやったの?」

「まず、君の前に座標を作る。
そしてエネルギーを座標と私の身体へ接続させ、あとは引き寄せる。
それだけさ」


???

 何言ってるかさっぱり分からない。
俺がそんな顔をしてるのを見てルカはクスッと笑い、再度説明してくれた。


「分かりやすく言うと、君の顔の所へロープを掛けてグッと引っ張り私を飛ばす…そんなイメージだな。
その気になれば君を飛ばすこともできるぞ」

「ほえぇ…。
あ、もしかして俺がこんな所にいるのって…」

「ああ、十中八九この力のせいだろうな。
繰り返しになるが申し訳ない」

「だからそれはもういいって。
それより今の力を使って日本に帰れない?」

「残念だが、それは無理だ。
君のいた日本という場所を私は知らない。
知らない所に座標は作れない。
それにエネルギーの燃費も悪くてな。
この『転移テレポート』を使うと疲れてしまうんだ」

「そっか…」


 やはりそううまくいかないか。


「だが、そこまで悲観する事はないぞ。
君が私をその日本で見つけたというなら、ひとつくらいは座標を作っているはずだからな」

「なるほど!
記憶が戻ったときにその座標?が思い出せれば…!」

「ああ、あとはエネルギーの件さえなんとか解決できればきっと戻れるはずだ」


 良し、よし!ようやく希望が見えてきたぞ!
そうだ、諦めないで前を向かないと。


☆☆☆


「さて、これからどうするかな」


 ルカの記憶が少し戻ったのは良かったけど、それ以外は依然として状況は変わらない。
この辺りに他に人が居ないか探さないと。


「零人。
ここから北西3キロ地点に村のような拠点があったぞ」

「マジか!いつの間に調べたの?」

「君が眠っている間に周辺を偵察していたんだ」


 ナイスやルカ!とりあえず目的地はそこだな。


「ちなみに人は居た?」

「さあ、そこまでは見えなかったな」


 それでも建物があるってことは住民もきっと居るはずだ。
あ、でも仮に居たとしても言葉が通じなかったら…。

 いや、身振り手振り必死に伝えればなんとかなるはずだ!
あまりネガティブ思考になってはダメだ零人!


「それじゃ出発しようぜ!」


 ☆☆☆


 歩き出して数分後


「そういえばさ、今更なんだけどルカはどうして日本語喋れるの?」

「うん?私は日本語とやらは知らないし、別にそれを喋っているつもりはないぞ?」


 え、どういう事?めっちゃ喋ってるじゃん。
それに俺の言ってることだってちゃんと理解してるし。


「私はただ伝えたいことを君に伝えて、君が喋る言葉を理解しようとすれば自然と分かるのだ」

「ええと、自動翻訳みたいなもんなのかな…」

「そもそも君は私に口があるように見えるか?」


 そういう意味で訊いたんじゃないんだけどね。
なんとも本当に不思議な石だよなぁ。


☆☆☆


 目的地まで半分は歩いただろうか。
平原なのが幸いしてそこまで疲れてはいない。
いないが…。


「さすがに腹減ったなぁ…」

「そうか、人は食事をする生き物だったな」

「うん…あ、そうだ」


 たしかリュックの中にあれがあったはずだ。
ゴソゴソと中を漁ると目的のブツを発見した。


「零人、それは何だ?」

「これはただのおにぎりだよー」


 駅の購買で買ってたのを忘れてたぜ。
大きめのおにぎりだから少しは腹持ちするはずだ。
味は好物のツナマヨ。


「ほう、なんともシンプルな形だな。
まるで私みたいだ」

「いや、あんたは六角形でしょ」


 封を切り、バクっと1口頬張る。
うん、おいしい。


「……(じー)」


 ルカは興味津々なのかおにぎりにへばりつくように観察している。


「あの、ルカさん?
そんなに近づかれると食べずらいんだけど」

「なぁ、零人。
私にも少し分けて貰えないだろうか?
私も『おにぎり』を食べてみたい」

「ええ!?」


 いや、食べるって…どうやって?


「別にいいけど…
でもさっき口が無いって自分で言ってなかった?
いったいどう食うんだよ?」

「そんなものはやってみなければ分かるまい」

「は、はぁ?じゃあ、はい」


 少しちぎって手のひらに乗せてルカに近づける。
食べかけの部分も入っちゃったけど仕方ない。


「ありがとう。それでは」


 するとおにぎりがカタカタと動き出し…シュポン!っとルカに吸い込まれた!
ウソだろ!?


「むむ!おにぎりとはこんな味がするのか!
実に美味じゃないか!」

「マジかよ…」


 一瞬で米1粒残さず消えた。
まさか本当に食べるどころか味まで分かるとは
とことん非常識な石だ…。






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