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「あれから1週間ずっと南に向かってるけど、街もないしモンスターすら見かけないな」
俺は道具屋の親父に言われた通り『死の台地』に向かって歩いていた。
「なんだか周りに生えている木も少なくなってきている気がするな」
~~~
それからさらに1週間後
「完全に周りには何もなくなったな。ゴツゴツした地形が増えてきたから『死の台地』まであと少しかもしれない」
そんな時、1匹の小さな子ネズミが俺の前を通過していった。
「久しぶりに生物を見たな」
その言葉を発した瞬間、突然5メートルを超える白い猫が子ネズミを喰い殺して、こちらを見てきた。
えっ!なんでだ!!強化された忍び足を使っていれば魔物には気付かれないはずなのに、気付かれているのか!?
よく見てみると白い猫には両目がない。
「ニンゲンがこんなところまで何しに来た?」
白い猫は空気が震えるほどの低い声で話かけてきた。
「俺はこのあたりに20年前に街を襲ったSクラスのモンスターがいると聞いて、この『死の台地』にやってきた」
「20年前か。そういえばあの時、目を奪われ1匹取り逃した事があったな。今喰い殺したネズミがおそらく、そのSクラスだ」
えっ、ちょっと待って。
「たしか街を襲ったのは10メートルを超える魔物だったって聞いてますが」
「このネズミは7日ネズミといって7日もあればそのくらいの大きさになるし、その後大量繁殖する厄介な魔物だ」
「そうだったんだ」
「ところでお主からは汚れた血の臭いがしないのはなぜだ?」
血の臭い・・・魔物を倒した事がないからだろうか?
「俺には魔物を倒す戦闘能力は何もない。あるのは運ぶ能力だけだな」
「ハッハッハッ!!そんなやつは初めてじゃ!汚れた血の臭いを感じていたならお前を真っ先に八つ裂きにしておったわい!それよりさっきから気になっていたんだが、お主の手からは何か不思議な魔力を感じるぞ!」
「手?もしかして魔道具の指輪の事か?」
「魔道具とはなんだ?」
「魔道具とは魔法の力が込められた道具だ。俺が身につけている魔道具は《観察眼》の指輪で、アイテム鑑定できる指輪だ」
「魔法の力を込めた道具?何の事を言っているのかさっぱり理解できないが、観察眼というのは眼に関わる道具なんだろ?その指輪を少し渡してくれないか?」
「少しだけなら」
俺は恐る恐る指輪を渡した。
指輪を受け取った白い猫は震え始めた。
「見える!見えるぞ!!もしよろしければ我にこの魔道具とやらをくれぬか?」
「この魔道具を欲しがるのは自分だけだと思っていたが、欲しがるやつもいるんだな。欲しいのであればくれてやるよ」
《観察眼》の魔道具がなくなれば俺はまた運び屋しか出来なくなると思ったが、この時何故か素直にあげようと思ってしまった。
「ありがとう!お主には特別に風天の王に会わせてやろう。指輪は天空山に着くまで持っていてくれ。それでは我が背中に乗れ!」
俺は指輪を受け取り、背中に乗り白い猫の毛皮をしっかりと掴んだ。
俺は道具屋の親父に言われた通り『死の台地』に向かって歩いていた。
「なんだか周りに生えている木も少なくなってきている気がするな」
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それからさらに1週間後
「完全に周りには何もなくなったな。ゴツゴツした地形が増えてきたから『死の台地』まであと少しかもしれない」
そんな時、1匹の小さな子ネズミが俺の前を通過していった。
「久しぶりに生物を見たな」
その言葉を発した瞬間、突然5メートルを超える白い猫が子ネズミを喰い殺して、こちらを見てきた。
えっ!なんでだ!!強化された忍び足を使っていれば魔物には気付かれないはずなのに、気付かれているのか!?
よく見てみると白い猫には両目がない。
「ニンゲンがこんなところまで何しに来た?」
白い猫は空気が震えるほどの低い声で話かけてきた。
「俺はこのあたりに20年前に街を襲ったSクラスのモンスターがいると聞いて、この『死の台地』にやってきた」
「20年前か。そういえばあの時、目を奪われ1匹取り逃した事があったな。今喰い殺したネズミがおそらく、そのSクラスだ」
えっ、ちょっと待って。
「たしか街を襲ったのは10メートルを超える魔物だったって聞いてますが」
「このネズミは7日ネズミといって7日もあればそのくらいの大きさになるし、その後大量繁殖する厄介な魔物だ」
「そうだったんだ」
「ところでお主からは汚れた血の臭いがしないのはなぜだ?」
血の臭い・・・魔物を倒した事がないからだろうか?
「俺には魔物を倒す戦闘能力は何もない。あるのは運ぶ能力だけだな」
「ハッハッハッ!!そんなやつは初めてじゃ!汚れた血の臭いを感じていたならお前を真っ先に八つ裂きにしておったわい!それよりさっきから気になっていたんだが、お主の手からは何か不思議な魔力を感じるぞ!」
「手?もしかして魔道具の指輪の事か?」
「魔道具とはなんだ?」
「魔道具とは魔法の力が込められた道具だ。俺が身につけている魔道具は《観察眼》の指輪で、アイテム鑑定できる指輪だ」
「魔法の力を込めた道具?何の事を言っているのかさっぱり理解できないが、観察眼というのは眼に関わる道具なんだろ?その指輪を少し渡してくれないか?」
「少しだけなら」
俺は恐る恐る指輪を渡した。
指輪を受け取った白い猫は震え始めた。
「見える!見えるぞ!!もしよろしければ我にこの魔道具とやらをくれぬか?」
「この魔道具を欲しがるのは自分だけだと思っていたが、欲しがるやつもいるんだな。欲しいのであればくれてやるよ」
《観察眼》の魔道具がなくなれば俺はまた運び屋しか出来なくなると思ったが、この時何故か素直にあげようと思ってしまった。
「ありがとう!お主には特別に風天の王に会わせてやろう。指輪は天空山に着くまで持っていてくれ。それでは我が背中に乗れ!」
俺は指輪を受け取り、背中に乗り白い猫の毛皮をしっかりと掴んだ。
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