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9話

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王女誘拐騒動から1週間。俺は王都の前まで来ていた。

王都や街に入る際には通行料が取られるが、ギルドの依頼や『商人の証』があれば通行料を取られる事はない。

ゼウスが生きてた頃にはおつかい依頼でよく来ていたが、おつかい依頼はギルドからの依頼のため通行料を取られる事もなかった。
だが依頼を出してくれるゼウスが亡くなってからは王都には1度も来る事はなかった。

「通行料の支払いかぁ・・・まあ今の俺には強化された忍び足があるから、ここを通る事に気付かれないんだよなぁ」

こうして俺は王都の中に通行料を払う事なく入りこんで、顔なじみの道具屋に向かった。

「運び屋トリスじゃねーか。久しぶりだな!ゼウスさんが亡くなってから1度も来なかったから心配してたぜ!」

「お久しぶりです。あれからずっと薬草の採取をして生活をしていましたが、そろそろ今の生活に一度区切りをつけて、いろいろな景色を見る旅に出ようと思って、その旅に必要なモノを買いたくて立ち寄らせていただきました。あとこれを買い取りしてもらいたくて」

俺は『松の果実』を10個取り出して渡した。

「10万リンで買い取りだな。で、欲しいもんはなんだ」

「サバイバルに必要なナイフや食料とか10万リン分ください」

「おぅ!ちょっと待っててな!」

道具屋の親父は店の中からいろいろ見繕ってくれながら、また話かけてきた。

「旅に出るって具体的に行き先は決まっているのかい?」

「これから寒くなる時期なので、南の方にでも行こうかなって思ってます」

「南の方かぁ。いろいろな景色を見たいんだよな!それならオススメの場所があるぜ!お前さんの戦闘能力なら死ぬだろうっていう危険な場所なんだけどな!ハッハッハッ!」

「勝手に殺そうとしないで下さいよ!」

「まあそれは冗談だけどな!真面目な話をすれば、ここから南にずっと行くと20年前に街を襲おうとしたSクラスのモンスターがいる『死の台地』がある。そこからさらに南に行くとそのSクラスを捕食するS Sクラスがいる『天空山』があるとされているんだ。面白そうな話だろ!」

そう言って道具屋の親父は見繕ってきた物を渡してきた。

俺の両親とマリアの母親を殺したSクラスのモンスターを1度見ておいた方がいいかもしれないと思った俺は『死の台地』に向かう事にした。
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