上 下
50 / 56

50話

しおりを挟む
ボクは今、紅亀フクロウに連れられてレッドタートルのクランハウスの応接室に来ている。

ドキドキするな。紅亀ナルミは綺麗だけど最悪な性格な事でも知られている。

「もう少ししたらナルミ姉ちゃん来るけど、ナルミ姉ちゃんは表の顔と裏の顔あるから驚かないでね」

どういう事だろ・・・

ガチャ

応接室の扉が開かれるとそこには綺麗で気品のある女性の姿。

「はじめまして、紅亀ナルミです。弟のフクロウから話を聞きました。今後フクロウが設立する生産クランの幹部として来てもらう事は可能かしら?」

えっ、いきなり引き抜き?

「あっ、あっ、あのちょっと待ってください」

「ちっ、何でしょうか」

あっ、今舌打ちしたよね。

「ボ、ボクもアテナの骨の製作していて青の錬金術師の称号を狙っています。なのでその話はお受けする事は出来ません」

「ちっ、そうですか。わかりました」

また舌打ちしたよね。やっぱり噂通りの人なんだね。

「ちょっ、ちょっと待ってよ姉ちゃん。なんで勝手に話を進めるの。僕はそんな事望んでいないよ。ちゃんとハヤトくんに謝って」

「ハヤトさんごめんなさい」

えっ、さっきと打って変わって態度が変わった。

「ごめんねフク、こんなお姉ちゃんを許して」

「いつも勝手に話を進めるのがお姉ちゃんの悪いところだよ。ハヤトくんは僕の大事な友達なんだよ」

友達・・・ボッチのボクにとってはすごくいい響きだ。

「本当にごめんなさい。お詫びに何か出来る事はないでしょうか」

してもらいたい事はある。超耐熱ゴーレムのコアの採取だ。ただこの言葉をそのまま受け取ってもいいものだろうか。表の顔と裏の顔のギャップが凄すぎてちょっとついていけてないのが現状。もし超耐熱ゴーレムと戦っている時にキャラ変してボクが死ぬような事にでもなれば目も当てられなくなる。

「ちょっ、ちょっと待ってくださいね」

「ちっ、それでは話を変えますがハヤトさんは超耐熱ゴーレムのコアは手に入れる事は出来ましたか?」

また舌打ちしたよ。そして超耐熱ゴーレムのコアの話になった。

どうしよう。

勝手に話が進んでいきそうな気がする。この流れに身を任せるのは危ない気もする。

どうしよう。

「もし採取出来ていないならお手伝いいたしましょうか?明日であれば私も予定が空いています」

どうしよう。イヤな気配を感じる。

「あ、明日はフクロウくんは一緒ですか?」

「僕は明日からアテナの骨の製作に入るよ。今日のパラジウム採取で素材は全て揃った。どちらが早く作れるかハヤトくんと勝負したいからお姉ちゃんは邪魔するような事はしないでね。もしハヤトくんが死ぬような事があればお姉ちゃんの事恨むからね」

「そ、そんな事絶対ないから安心していいよ」

ちょっと動揺してるな。フクロウくんの一言がなかったら危なかったかも。

「お姉ちゃん、本当にわかってるの?ハヤトくんもドラゴンセンスに目覚めてる人なんだよ。お姉ちゃんが出しているイヤな気配を感じとってるんだよ。ハヤトくん、こんなお姉ちゃんで本当にごめんね」

えっ、えっ、ちょっと待って。たしかにイヤな気配は感じたけど、ドラゴンセンスって何?初めて聞いたんだけど。

「あ、あのドラゴンセンスって何ですか」

「ドラゴンセンスの前にファントムセンスって知ってる?」

「スターライトハニーを採取する時にファントムセンスがなければ採取出来ないって黒崎リュウイチさんに言われたので知っています」

「じゃあファントムセンスをコントロール出来て始めてゾーンを操る事が出来るっていうのは知ってるんだね。ドラゴンセンスはその先にある7感ともいわれる感性って思って僕が名前つけたんだ。7つの玉を集めると何でも願いが叶う有名漫画みたいにドラゴンセンスに目覚めた者は何でも願いが叶う的な感じ」

それでドラゴンセンスかぁ。

「ドラゴンセンスを完全覚醒してる人は大手クランリーダーの黒崎リュウイチさん、白石コジロウさん、僕のお姉ちゃん。あと亀梨マリナさんも完全覚醒してる。僕は目覚めているけど完全覚醒はしてない。アテナの骨を作れた時に完全覚醒出来そうだなって思ってる」

さすがは大手クランのリーダー。みんな常人離れしてると思ってたけど、みんな特別な感性を持ってたんだね。

っていうかボクもその感性に目覚めてるって事・・・全然そんな感じがないんだけど。

でも完全覚醒出来たのならボクもトップランカーと肩を並べる事でもあるんだよね。

「ハヤトくんもきっとアテナの骨を作れた時に完全覚醒出来る。だからお姉ちゃんは絶対に超耐熱ゴーレムのコアの採取を手伝わないといけないって事」

「わ、わかったわよ。そこまで言うならちゃんとやるわよ。だけどフクみたいに私に矢を渡せない時はどうなっても知らないからね」

「その時はハヤトくんの実力不足って事だよ。でも僕はそんな心配していないよ。ハヤトくん、超耐熱ゴーレムのコアの採取頑張ってね。僕はその間にアテナの骨を製作する。これだけは負けないよ」

ボクもアテナの骨の製作に関しては負けたくない。

もう紅亀ナルミからはイヤな感じはしない。この感じなら超耐熱ゴーレムのコアの採取は出来る。

よし、明日も頑張ろう。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生王女は現代知識で無双する

紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。 突然異世界に転生してしまった。 定番になった異世界転生のお話。 仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。 見た目は子供、頭脳は大人。 現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。 魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。 伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。 読んでくれる皆さまに心から感謝です。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

異世界で、すでに人妻だったオレ

mm
ファンタジー
トラックに轢かれ、異世界に吹っ飛んで来たオレ。だが転生でも転移でもないような? もう既に結婚して、息子もいるらしい。 そしてどうやらこの子を勇者に育て上げなければならないらしい。 え、ヤダ。 オレの大事な息子をそんな危ない目に合わせたくはない! 親バカな話にしようと思っています。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...