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哀しみリプレイ
③
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レイがくれた情報によって、蓮司達を手にかけた人物が判明した。
犯人は未成年者で精神科に通院歴のある少年だった。柳はすぐさま少年のもとを訪れ、刑事だと名乗って自首を勧めたが、返り討ちに遭って、少年に拘束されてしまった。
「おまえは何も出来ねえ。俺には立派な病名がついている。刑事さんなら当然知ってるよな。刑法第三十九条、心神喪失者は罰せられないって」
少年の言うとおりだった。しかも未成年者とくれば、慎重にならざるを得ないだろう。
「だからこそ、自首しろって言ってんだよ!」
「何言ってんだ? 好き勝手に人を殺せる最高の環境にいるのに、そんなことするわけねえだろうが」
話が全く通じない。どうやら心身喪失というのは嘘ではないらしい。
「俺を捕まえたければ、捕まえてみろ。まあ、あんたに出来るわけがねえけど。正義の味方気取りのお巡りさんだもんな」
少年は容赦なく柳を攻撃してきた。避けきれずに右腕に深い傷を負った。思っていた以上に血は流れ、痛みと苦しみで頭が朦朧としてきた。
「俺は、正義の味方なんかじゃねえ。なんで殺した?」
「はあ? 理由? そんなもんねえよ。敢えて言うなら、あのお巡りが俺に説教したってことか」
どういう状況で、なぜ蓮司が少年に目星をつけたのかはわからない。それでも、何か思うところがあったからこそ、声をかけたのだろう。
「そんな理由で、和人や蓮司、佳乃さんを手にかけたのかよ。絶対、絶対許さねえ!」
「刑事さんってあのお巡りの身内なわけ? チョーウケる!」
少年は笑った。ひどくおかしそうに、腹を抱えて笑い続けた。そんな姿を見せられれば、正気でなんていられなくなる。
「おまえを捕まえて、死刑台に送ってやるよ!」
「そうやって吠えて、吠えまくって、捕まえればいいさ。どうせ無罪放免になる」
柳は自分の無力さを痛感していた。今までしてきたことはなんだったのか。大切な家族を奪い取った人間が目の前にいるというのに、反省の欠片もなく、ましてや法によって裁かれることもない。
「ほら、逮捕しろよ、刑事さん。それともあんたが言うように、自首した方がいいか。そうすれば早く出られる。あんたをもっと苦しめてやれる」
少年は狂っている。更正することなんて出来やしない。
「だったら、俺が殺してやるよ……!」
少年は度々事件を起こしては、釈放されていた。父親が権力者だったこともあり、表沙汰になることはほとんどなく、犯行は徐々にエスカレートしていき、ついに柳の家族を手にかけるまでになっていた。
「だから、あんたには出来ねえって言ってんだろ。遠くから吠えてるだけで、向かってこねえしよ」
本当に殺してやろうと思った。だが柳が足を踏み出したとき、大昔の記憶が蘇り、動けなくなってしまった。
犯人は未成年者で精神科に通院歴のある少年だった。柳はすぐさま少年のもとを訪れ、刑事だと名乗って自首を勧めたが、返り討ちに遭って、少年に拘束されてしまった。
「おまえは何も出来ねえ。俺には立派な病名がついている。刑事さんなら当然知ってるよな。刑法第三十九条、心神喪失者は罰せられないって」
少年の言うとおりだった。しかも未成年者とくれば、慎重にならざるを得ないだろう。
「だからこそ、自首しろって言ってんだよ!」
「何言ってんだ? 好き勝手に人を殺せる最高の環境にいるのに、そんなことするわけねえだろうが」
話が全く通じない。どうやら心身喪失というのは嘘ではないらしい。
「俺を捕まえたければ、捕まえてみろ。まあ、あんたに出来るわけがねえけど。正義の味方気取りのお巡りさんだもんな」
少年は容赦なく柳を攻撃してきた。避けきれずに右腕に深い傷を負った。思っていた以上に血は流れ、痛みと苦しみで頭が朦朧としてきた。
「俺は、正義の味方なんかじゃねえ。なんで殺した?」
「はあ? 理由? そんなもんねえよ。敢えて言うなら、あのお巡りが俺に説教したってことか」
どういう状況で、なぜ蓮司が少年に目星をつけたのかはわからない。それでも、何か思うところがあったからこそ、声をかけたのだろう。
「そんな理由で、和人や蓮司、佳乃さんを手にかけたのかよ。絶対、絶対許さねえ!」
「刑事さんってあのお巡りの身内なわけ? チョーウケる!」
少年は笑った。ひどくおかしそうに、腹を抱えて笑い続けた。そんな姿を見せられれば、正気でなんていられなくなる。
「おまえを捕まえて、死刑台に送ってやるよ!」
「そうやって吠えて、吠えまくって、捕まえればいいさ。どうせ無罪放免になる」
柳は自分の無力さを痛感していた。今までしてきたことはなんだったのか。大切な家族を奪い取った人間が目の前にいるというのに、反省の欠片もなく、ましてや法によって裁かれることもない。
「ほら、逮捕しろよ、刑事さん。それともあんたが言うように、自首した方がいいか。そうすれば早く出られる。あんたをもっと苦しめてやれる」
少年は狂っている。更正することなんて出来やしない。
「だったら、俺が殺してやるよ……!」
少年は度々事件を起こしては、釈放されていた。父親が権力者だったこともあり、表沙汰になることはほとんどなく、犯行は徐々にエスカレートしていき、ついに柳の家族を手にかけるまでになっていた。
「だから、あんたには出来ねえって言ってんだろ。遠くから吠えてるだけで、向かってこねえしよ」
本当に殺してやろうと思った。だが柳が足を踏み出したとき、大昔の記憶が蘇り、動けなくなってしまった。
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