2 / 69
誘拐犯はオスイチ男
②
しおりを挟む
「離して、私はモノじゃないんだから!?」
深夜という時間帯もあってのことだろうか。マンションの玄関には誰もおらず、助けを求めることが出来なかった。
ヤンキー男に担がれたまま、麻百合はマンション前に停車してある黒塗りの高級車の後部座席に投げられた。高級なだけあってか、シートは柔らかで痛みは感じなかった。
「あんた、うるさい。まるで俺が誘拐犯みたいじゃねえか」
やれやれと言ったように、ヤンキー男は運転席に乗り込む。
「この仕打ちはどう見たって、誘拐でしょうが!?」
深夜に忍び込んで、着の身着のまま連れ出されて、完全に物扱いされて。
最初は恐怖ばかりだったが、開き直りというべきか、麻百合は強気へと変わっていた。
「俺はカリンに頼まれただけだ。だいたい、あんた、ギャンブルで使い込んで金ねえだろ。他に身内もねえし、本当に誘拐されたら誰が金払うんだ?」
「うるさい、うるさい!」
見知らぬ男に正論を突きつけられ、麻百合は苛立った。
「私の金をどう使おうが私の勝手でしょ。それであんたに迷惑かけた?」
麻百合の声が聞こえていないのか、ヤンキー男はエンジンをかけ、車を発進させる。
「好きなようにお金使って、全部なくなったら死ぬんだから、文句ないでしょう!」
言い切った途端、ヤンキー男がバックミラー越しに睨みを利かせる。強気だった麻百合を黙らせる程の鋭い目つきだった。
「俺の前でほざくのは勝手だけどな。カリンの前では絶対言うなよ」
ヤンキー男はカリンの恋人なのか。それに「死」という言葉に過剰に反応する。
「別に責めてるわけじゃねえ。俺だって、カリンと出会わなきゃ、あんたと同じだったし」
そして、鋭い目つきの奥にはやはり哀しみが宿っていた。
「そのカリンって人が、死んでって言ったら、あんた死ぬの?」
「俺は今カリンのために生きてる。あいつの願いは全て叶えてやりたい。先の事はわからねえよ」
今の言葉はヤンキー男の本音だろう。今までと違って重みがあった。
「あんたも、カリンに会えばわかるさ。あいつは地上に降りてきた天使。いつか天国に行っちまう」
気障な台詞だと思ったが、茶化すことは出来なかった。バックミラー越しに見たヤンキー男の表情が苦悩に満ちていたから。
「たとえ追いかけたとしても、カリンと違って、俺の行き先は地獄だからな」
深夜という時間帯もあってのことだろうか。マンションの玄関には誰もおらず、助けを求めることが出来なかった。
ヤンキー男に担がれたまま、麻百合はマンション前に停車してある黒塗りの高級車の後部座席に投げられた。高級なだけあってか、シートは柔らかで痛みは感じなかった。
「あんた、うるさい。まるで俺が誘拐犯みたいじゃねえか」
やれやれと言ったように、ヤンキー男は運転席に乗り込む。
「この仕打ちはどう見たって、誘拐でしょうが!?」
深夜に忍び込んで、着の身着のまま連れ出されて、完全に物扱いされて。
最初は恐怖ばかりだったが、開き直りというべきか、麻百合は強気へと変わっていた。
「俺はカリンに頼まれただけだ。だいたい、あんた、ギャンブルで使い込んで金ねえだろ。他に身内もねえし、本当に誘拐されたら誰が金払うんだ?」
「うるさい、うるさい!」
見知らぬ男に正論を突きつけられ、麻百合は苛立った。
「私の金をどう使おうが私の勝手でしょ。それであんたに迷惑かけた?」
麻百合の声が聞こえていないのか、ヤンキー男はエンジンをかけ、車を発進させる。
「好きなようにお金使って、全部なくなったら死ぬんだから、文句ないでしょう!」
言い切った途端、ヤンキー男がバックミラー越しに睨みを利かせる。強気だった麻百合を黙らせる程の鋭い目つきだった。
「俺の前でほざくのは勝手だけどな。カリンの前では絶対言うなよ」
ヤンキー男はカリンの恋人なのか。それに「死」という言葉に過剰に反応する。
「別に責めてるわけじゃねえ。俺だって、カリンと出会わなきゃ、あんたと同じだったし」
そして、鋭い目つきの奥にはやはり哀しみが宿っていた。
「そのカリンって人が、死んでって言ったら、あんた死ぬの?」
「俺は今カリンのために生きてる。あいつの願いは全て叶えてやりたい。先の事はわからねえよ」
今の言葉はヤンキー男の本音だろう。今までと違って重みがあった。
「あんたも、カリンに会えばわかるさ。あいつは地上に降りてきた天使。いつか天国に行っちまう」
気障な台詞だと思ったが、茶化すことは出来なかった。バックミラー越しに見たヤンキー男の表情が苦悩に満ちていたから。
「たとえ追いかけたとしても、カリンと違って、俺の行き先は地獄だからな」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる