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No More Bet
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「色々準備があるからさ、ナオが運転してくんない?」
「それはかまわねえけど、行き先は? さっきいってたホテルってどこだよ」
車内にマキ以外の人物は見当たらず、運転するのは桜井しかいない。桜井は運転席に乗り込み、シートとミラーを合わせた後、エンジンをかけた。すぐさまカーナビが立ち上がり、目的地までのコースを示した。
「ナビ通りに運転すればいいよ。レイ、今どこ?」
最後の言葉に反応するように、カーナビの画面が右半分に縮小され、左半分に黒縁の眼鏡をかけたレイの顔が写り込む。
『ホテルの地下駐車場だ。車は8A15に停めろ。草薙が手を回したようだから、これから先、出入り禁止になる。マキ、右目にコンタクトを入れて着替えろ』
「出遅れたせいで警察ごっこか。堅苦しいの、苦手なのに」
マキは不服そうにしながら、後部座席の下にある透明の衣装ケースを開けて服を取り出す。シャツを羽織りネクタイをだらしなく結んだ後、ジーンズから黒のスラックスへと履き替えていく。
『蓮見は何か言ってたか?』
「レイの予想通りだったよ。あの事件のことも知ってた」
「政治資金パーティーで死人が出たって、どういうことだよ」
我慢出来なくなって、桜井は二人の会話に割り込んだ。
『捜査一課に話は回っていなかったのか。八年前、ある議員の政治資金パーティーに暗殺者が集結した。彼らは参加者を皆殺しにし、自分が生きるために人を殺すという主張を正当化しようとした』
「そんな話、聞いてないぞ!」
『都心で凄惨なテロが起きたことは、秘密にしておきたいんだろ』
ここでもまた「Keep it quiet」ということかと、桜井は小さく溜息をついた。考えている以上に、ハナムラという組織は警察や公安と深い関わりがあるようだ。
「それを収めたのがおまえ達ってことかよ」
『仕方なくだ。俺もマキもシラサカも怪我をしたから、被害者でもある』
「あのときサカさんがバラさなきゃ、東京だけじゃなく日本は崩壊してたよ」
レイ達が負傷するくらいだ、かなりの強敵だったのだろう。
「八年前の再来ってことか」
『単なる模倣犯だ。詰めが甘すぎるからな』
そう言うと、レイは不敵に笑った。
「レイ、JTRの正体わかってんだろ。いい加減教えろよ」
正体を問い質そうとしたときに蓮見がやってきたため、有耶無耶になってしまっていた。レイは、四人目以降の被害者であるヤマトコウセイ、イソダジュンジ、サクラダマリの三人の中にJTRがいるようなことを言っていた。
『行けばわかることだが、特別に教えてやるよ。結論から言えば、JTRは表向き五人目の被害者であるイソダジュンジだ』
「けど、イソダは死んでる。勤務先の高層ビルの屋上で遺体が発見された。鑑識も身内も本人だと認めているんだぞ!」
何よりレイ自身が、イソダジュンジが死んだことを認めていたはずである。
『イソダジュンジの殺害現場は、死体発見場所である高層ビルの屋上。当然、事件当日に出入りした人間は調べてるよな?』
「ああ、全員シロだったよ」
イソダジュンジの勤務先である高層ビルには複数のテナントが入っており、防犯カメラの映像から事件当日に出入りした人間を全員調べたが、不審人物は見当たらなかった。
『覚えてるか、三人目の被害者のフクザワヨシオ宅で俺が話したこと』
レイは桜井を試すように聞いてきた。
「フクザワは自宅の寝室で自殺しようとしていたが、別の人間によって運び出され、別の場所で殺害された」
『その後は?』
「傷を負ったフクザワを運び出したのは、誰なのかはわからない。マンションの防犯カメラの映像にも──」
はっとした。そしてレイが言わんとしていることに気づいた。
「イソダの殺害現場の防犯カメラも、事前に細工されていたってことかよ!?」
『そうだ。フクザワの死の真相に気づかない限り、この事実にはたどり着けない』
背中が震えた。違法だと知りながらも、草薙がレイを頼った理由はこれだったのだ。
『防犯カメラの映像に細工を施し、尚且つ、イソダジュンジ本人に怪しまれず、彼に近づける人物は誰だ?』
イソダジュンジは周りから好かれていた。六人の被害者の中で一番若いということもあって、彼の死を悼む声も多かった。
「それはかまわねえけど、行き先は? さっきいってたホテルってどこだよ」
車内にマキ以外の人物は見当たらず、運転するのは桜井しかいない。桜井は運転席に乗り込み、シートとミラーを合わせた後、エンジンをかけた。すぐさまカーナビが立ち上がり、目的地までのコースを示した。
「ナビ通りに運転すればいいよ。レイ、今どこ?」
最後の言葉に反応するように、カーナビの画面が右半分に縮小され、左半分に黒縁の眼鏡をかけたレイの顔が写り込む。
『ホテルの地下駐車場だ。車は8A15に停めろ。草薙が手を回したようだから、これから先、出入り禁止になる。マキ、右目にコンタクトを入れて着替えろ』
「出遅れたせいで警察ごっこか。堅苦しいの、苦手なのに」
マキは不服そうにしながら、後部座席の下にある透明の衣装ケースを開けて服を取り出す。シャツを羽織りネクタイをだらしなく結んだ後、ジーンズから黒のスラックスへと履き替えていく。
『蓮見は何か言ってたか?』
「レイの予想通りだったよ。あの事件のことも知ってた」
「政治資金パーティーで死人が出たって、どういうことだよ」
我慢出来なくなって、桜井は二人の会話に割り込んだ。
『捜査一課に話は回っていなかったのか。八年前、ある議員の政治資金パーティーに暗殺者が集結した。彼らは参加者を皆殺しにし、自分が生きるために人を殺すという主張を正当化しようとした』
「そんな話、聞いてないぞ!」
『都心で凄惨なテロが起きたことは、秘密にしておきたいんだろ』
ここでもまた「Keep it quiet」ということかと、桜井は小さく溜息をついた。考えている以上に、ハナムラという組織は警察や公安と深い関わりがあるようだ。
「それを収めたのがおまえ達ってことかよ」
『仕方なくだ。俺もマキもシラサカも怪我をしたから、被害者でもある』
「あのときサカさんがバラさなきゃ、東京だけじゃなく日本は崩壊してたよ」
レイ達が負傷するくらいだ、かなりの強敵だったのだろう。
「八年前の再来ってことか」
『単なる模倣犯だ。詰めが甘すぎるからな』
そう言うと、レイは不敵に笑った。
「レイ、JTRの正体わかってんだろ。いい加減教えろよ」
正体を問い質そうとしたときに蓮見がやってきたため、有耶無耶になってしまっていた。レイは、四人目以降の被害者であるヤマトコウセイ、イソダジュンジ、サクラダマリの三人の中にJTRがいるようなことを言っていた。
『行けばわかることだが、特別に教えてやるよ。結論から言えば、JTRは表向き五人目の被害者であるイソダジュンジだ』
「けど、イソダは死んでる。勤務先の高層ビルの屋上で遺体が発見された。鑑識も身内も本人だと認めているんだぞ!」
何よりレイ自身が、イソダジュンジが死んだことを認めていたはずである。
『イソダジュンジの殺害現場は、死体発見場所である高層ビルの屋上。当然、事件当日に出入りした人間は調べてるよな?』
「ああ、全員シロだったよ」
イソダジュンジの勤務先である高層ビルには複数のテナントが入っており、防犯カメラの映像から事件当日に出入りした人間を全員調べたが、不審人物は見当たらなかった。
『覚えてるか、三人目の被害者のフクザワヨシオ宅で俺が話したこと』
レイは桜井を試すように聞いてきた。
「フクザワは自宅の寝室で自殺しようとしていたが、別の人間によって運び出され、別の場所で殺害された」
『その後は?』
「傷を負ったフクザワを運び出したのは、誰なのかはわからない。マンションの防犯カメラの映像にも──」
はっとした。そしてレイが言わんとしていることに気づいた。
「イソダの殺害現場の防犯カメラも、事前に細工されていたってことかよ!?」
『そうだ。フクザワの死の真相に気づかない限り、この事実にはたどり着けない』
背中が震えた。違法だと知りながらも、草薙がレイを頼った理由はこれだったのだ。
『防犯カメラの映像に細工を施し、尚且つ、イソダジュンジ本人に怪しまれず、彼に近づける人物は誰だ?』
イソダジュンジは周りから好かれていた。六人の被害者の中で一番若いということもあって、彼の死を悼む声も多かった。
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